本当にあった某イーロンの怖い話〜X山の怪異〜 後編
【後編】
――それから数週間、帰りが遅くなることもなく、平穏無事に過ごしました。
が、とある日、またお客さんが中々帰らず、仕事終わりが遅くなってしまいました。
「また、某イーロンがいたら、嫌だなぁ……」
私はそう呟きながら、車を発進させました。
「だっ、大丈夫っ! もしいても、素通りすれば良いだけさっ!」
私は早く帰りたい一心で、そう決断し、いつも通りX山に車を向けました。
ぶおおおんっ!
私は一刻も早くX山を抜けたくて、エンジンを吹かして、峠道を登ります。
相変わらず人気のない、暗い道。
すれ違う車もなく、まるで私しか、このX山にいないように感じました。
そして、とうとう、古びた電話ボックスの灯りが、遠くに見えてきました。
ぶおおおんっ
グングンと電話ボックスが近づきます。
「なっ!? なんでだっ!?」
私は思わず声を上げました。
なぜなら、某イーロンが、電話ボックスの傍ではなく、道の真ん中に立っていたからです。
某イーロンは相変わらず、赤白い顔で、こちらをジッと見ています。
電話ボックスばかり見ていたので、道の真ん中にいた某イーロンに、気がつくのが遅れました。
ギュ! キュッ! キュゥゥーー!!
私は急ハンドルを切って、某イーロンを避けました。
「あっ! 危ねぇなぁぁぁ!?」
私は叫びつつ、某イーロンを轢いていないかを、バックミラーで確認しました。
「ひっ!?」
バックミラーを見た私は、今度は悲鳴を上げました。
ひたひたひたひたひたひたひたひた……
なぜなら、バックミラーには、あの某イーロンが、無表情の赤ら顔のまま、私の車を追い駆ける姿が、映っていたからです。
ぶおおおんっ
私はアクセルを踏み、スピードを上げて、峠道を下ります。
ひたひたひたひたひたひたひたひた……
それでも某イーロンは、赤ら顔のまま、私の車を追い駆け続けるのです。
ひたひたひたひたひたひたひたひた……
その速度は、完全に人間の走るスピードを超えていました。
「うわあぁあぁぁ!? なんなんだよっ!? なんなんだよっ、某イーロンはっ!?」
私は叫びながら、事故を起こしかねない、限界ギリギリのスピードで、X山を下ります。
ひたひたひた……ひたひた……ひた……ひた……
幸い、徐々に某イーロンとの距離が開き、バックミラーから姿が消えました。
「……ふっ、ふうぅうぅーー。良かったぁ、追いつかれなかった……」
某イーロンに追いつかれたなら、いったいどんなことが起るか分かりません。
私は心底ホッとし、バックミラーから目を離しました。
「あなたは……」
その時、なぜか横から、男の声が聞こえました。
ババッ!!
私は慌てて、横を見ます。
「!?!?」
横を見た私は、驚き、声も上げられませんでした。
なぜなら、私の横、助手席に、赤白い顔の某イーロンが座って、こちらをジッと見ていたからです。
「ぁ……ぁぁ……ぁ……」
口をパクパクさせて、固まる私。
そんな私を見て、某イーロンはニヤリと笑い、こう言いました。
「あなたの認証はまだです。月459円でプレミアムになると、認証されて、あなたのポストは広く拡散されますよ?」
そして赤白い顔のまま、いいねっ! と、親指を立てたのです……
「いやあぁぁああぁああぁーーーーーー!!」
―――――
―――
―
これが、筆者(綿野草 空希)が友人から聞いた話です。
えっ?
その友人は、その後どうなったか? ですか?
大丈夫、今でも元気に、そのお店で働いてますよ。
ただ、通勤には二度と、X山は使わずに、遠回りでもL号線を使っているそうです。
もし、あなたも、深夜にX山を使うことがあったのなら、某イーロンには気をつけて下さいね。
某イーロンはいつでも、あなたが課金会員かどうかを、ジッと見ているのですから……
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