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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第37話 新聞記事

 アンセルディー王国の最も繁栄している中心部。

 王城。


 白を基調としながらも、王家の威厳を損ねない重厚さがある一室。


 見るものが見れば、職人の巧みな計算によって、全てが一つの芸術になっていることに気づく。


 高い技術をもった職人に手掛けさせられる命令権の強さ、そして財力の凄さに、臣下は揃って王族に恐れ慄くだろう。


 窓を背にして置かれている書斎机で、第一王子アノブールは午後のアフタヌーンを楽しんでいるかのように呑気な表情で、手に持っていた今日の新聞を読んでいた。


「なかなかに面白い記事だ。新たな光……ね」


 机の両脇には、今にも崩れ落ちそうな程に積み上げられた認可待ちの書類が山積み状態になっているが、直ぐさまアノブールはやる気になれなかった。


 今か今かと、認可待ちの書類が降りてくるのを待っている臣下もいるが、アノブールがどうせ、目を通して書類を片付けても、机から山積みの書類が消え去るわけではないのだ。


 また新たに国王の従者たちが、俺が抱えているタスクを片付け終わる頃を見計らって、やってくる。


 サボればサボるほどに、楽をできるなら、今ある山積み書類を片付ける気になればいのは、当然の原理だろう。


 書斎机の椅子にゆったりと腰掛けて、新聞を読んでいたアノブールに、部屋の隅で書類仕事の補佐をやっていた従者が、呆れ返った表情を浮かべた。


「また何か、新しい悪巧みでも考えているのですか? 口元が歪んでますよ、直して下さい」


「ああ、すまん。すまん、フィリス」


 処理し終わった書類をこちらに持ってくるフィリスに、軽く手を振って応じる。


 ――――優秀で聡明と諸外国に知れ渡っている第一王子。


 俺の外面的な評価は、そんな感じだ。


 正直、俺にとって自分の評価なんてどうでも良い。ゴミよりも興味がない。


 ここ数年間、書類机が綺麗さっぱり広くなるのを見たことがないが、あと何年後に綺麗になるのか方が、俺にとっては重要だ。


 それでも、悪評のせいで従者に迷惑をかけるのは避けたいからな。外から他の臣下がやって来た時にはフィリスの要望に応えて、ちゃんとするか。


「この記事、面白いんだ。南西部の小さな村で、謎の大量魔物を発生事件が起きている。とても不可解だぞ」


「スタンピードでは、無いのですか?」


「いや、違うらしい。スタンピード兆候は起きずに、突然の魔物発生だったみたいだ。それだけは否定されているな。村人のインタビューがある」


 大量の魔物が侵攻してきたとなると、真っ先に疑われるのはスタンピードだ。


 だがスタンピードを率いる魔物は、自分の侵攻進路を決めるために、あらかじめ侵攻予定の場所に、斥候代わりのBランク以上の魔物を派遣する習性がある。


 なので、その兆候さえ見逃さなければ、大事には至らない。


 そしてスタンピード関連の情報は、周辺の地域にとっても重要だ。それがスタンピードの斥候ならば、周辺の街でも対策が必要になる。


 今回もスタンピードに似た情報だったから、大きな新聞に記事が載ったのだろう。


 記事では魔界スポットの発生が原因だと結論づけられている。


 面白げに、アノブールは薄らと笑った。


「この地方には、ダンジョンや魔界スポットも無かったはずだ。一体、なぜ突然の魔物発生なんて起こったのだろう……な」


 軍事まで取り仕切る王族として、国内を端から端まで把握しているアノブールだからこそ、気がつけた違和感。


 魔界スポットの正確な位置なんて、軍事機密事項の頂点とも言って良い代物であって、貴族や高位冒険者でも知らなかったりする。


「確かに、これはおかしいですね……」


 俺が手に持っていた新聞を見て、フィリスも頭を傾げながら呟いた。


「それも結構な数の魔物だよな。Bランク4体、Cランク8体以上、魔物を率いていたボスはランクを判定中か。なら、最低でもBランク以上はあるな」


 通常ならば、街から軍隊を派遣しなければ鎮圧が難しい数だ。


 高ランク冒険者ならば話は変わってくるだろうが、彼らだって戦う選択肢はある上に、そもそも本当の高ランク冒険者は、滅多に表舞台に現れてこない。


 輝かしい討伐数を上げたことで、若い女の冒険者が二つ名を名乗ったようだ。


 確かに、これ程までの戦果を上げれば、気難しい冒険者たちも認めざるえない……か。


「“暴風の守護者”か」


 新聞の小さな記事には、二つ名だけしか載っていない。


「いつか、俺の目の前に現れるかもな」


 大量の書類に囲まれていながらも、フィリスには読み終わった記事を眺めるアノブールが、随分とご機嫌のように見えた。


「アノブール様に謁見できるようになるまで、相当の成果を上げる必要があるとは御見ますが、若い彼女はそこまで成長するのでしょうか?」


「知らん。だが、いい臭いがする」


 あまりの酷い表現方法に、フィリスは顔を渋くしかめた。王太子にしては、ワイルド過ぎる言い方だ。


 それでも、フィリスの無言の抗議を軽くスルーして、アノブールは続けた。



「以前、俺が7つか8つの時に、Sランク冒険者“氷人使い”が記事に載ってただろう……? アレと、同じ感じがする」


「…………」


 無言で書類机の前に立っている従者に、面白そうに悪巧みするアノブールの声が、静かな部屋の中に響き渡った。


「フィリス、この冒険者の動向を調べろ。魔物発生事件に対しても、手駒を現地へ送れ。極秘に調べ直しをさせろ」


「承知いたしました。アノブール様」


 両手を胸の前で合わせて、簡易的な王国の敬礼でフィリスが応じる。


「国王に対抗するぞ」


「はっ」


 第一王子アノブール。

 諸外国には、聡明で優秀だと評価されている人物。


 だが、すでに国王の制御下を離れて権力を行使している。それが国王の密かな悩みの種となっているのを知っているのは、今はまだ極一部の人間だけだ。

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