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新時代の最強英雄 ~支配されていた監禁令嬢、伝説の魔法〈秘奥義〉で無双する~  作者: 雪柳 澄
1章 監禁魔法からの脱走。

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第36話 名乗りを上げよう!

 レクセイナたちは魔物の残党を倒していた。


 大半の魔物は群団を率いていたボスが討伐されたことで、自然と村から引いていった。


 その一方で、本来からあまりボスの指揮系統に従っていなかった個体などは、まだ所々に残っている。


 それでも留まっているだけなので、残っているからと言っても魔物の士気は低い。軽く攻撃すれば村から撤退していく。


 なので、深追いはしないように注意しつつ、追い払っていく。


「レクセイナ、最後の魔法凄かったな。村の中心からもハッキリ見えたぞ」


「ふふふっ。必殺技の魔法を使ったんだよっ」


 オルデンとレクセイナも会話しながら、追い払うのに参加する。


 戦闘時のアドレナリンが残っていることもあって、どちらも普段よりテンション高めだ。


 非戦闘民を守るという役目は確かに重要だった。だが防衛線で直接魔物を食い止めていた者たちと比べると、オルデンはやや不完全燃焼気味だった。


「よっ、と!」


 空中でホバリングしていた黒い鳥の魔物に、水魔法をぶつけて撃ち落とす。周囲に飛んでいた同種の魔物は、それを見て早々に飛び去っていった。


「まあ、あの魔法を見て、俺はレクセイナに防衛線の方を任せて正解だと思えたぜ。大体、俺が得意なの魔法は、火属性魔法さ」


 その言葉に、レクセイナもニコニコとした表情を浮かべる。戦闘の緊迫も解けて、完全に仲間を弄るモードだ。


「派手な火属性魔法だと、村を守るどころか、逆に火事で村を壊滅させてしまいますね!」


「ああ、間違いないぜ? 派手に、ボーンだ。 ボーーン!」


 オルデンが格好つけて、おちゃらかすように、手で火属性魔法によって、吹っ飛ぶ様子を派手に表現する。


 レクセイナもオルデンの強さは、何度か一緒にした冒険者活動で知っている。オルデンも、その気になれば高威力の魔法を放てるのだろう。


「では、オルデンの次の冒険に期待ですね」


「ああ。今度の見せ場は俺が頂く」


 今度冒険に行く日時を決めておく。


 不完全燃焼のオルデンが、見つけた魔物に片っ端から攻撃を仕掛けていくのを見て、戦意の低い魔物たちが追い立てられるように逃げていく。


 非戦闘民でも村を安心して移動できる状態になると、村の中心に避難していた村人たちが歓声を上げながら、続々と防衛線にやってきた。


「うぉーっ……。すげえ、何この死体の量!」


「冒険者の皆さん、ありがとう御座いました」


 普段はお目にかかれない多種多様な魔物の死体に、一気に防衛線だった場所が賑やかになる。


「こらっ、セト。死体に触らないの! 危ないんだからね」


 イベントに遭遇したかのような気軽さで、幼い子供たちがはしゃぎ、それを大人たちが慌てて止めている。


 それでも、制止を振り切った無邪気な子供たちが、レクセイナとオルデンの元にやってきた。


「お姉ちゃんと、お兄ちゃんたちも、この魔物をやっつけたの……?」


 5才か6才ぐらいの子供だろう。

 レクセイナの腰あたりの身長しかない子供たちが複数人集まってきて、キラキラと表情を輝かせる。


「ああ、そうだ。まあ俺が知っているのは、そこの若い姉ちゃんの活躍なんだけどね」


 向こう側から歩いてやって来ている男性の声が、子供たちの質問に答える。


 バンダナを巻いた冒険者だった。


 冒険者の中で指揮官の役割を果たしていた人物だ。レクセイナが魔物のボスがいる場所に駆けつけるまで、直接ボスの魔物と戦っていた。


 レクセイナが駆けつけた後、戦線から離脱していったようだが、なんとか無事だったようだ。


 脇腹の部分と左腕が、包帯でグルグル巻き状態だが、顔色も悪くない。


「そこのお姉ちゃんの活躍は、凄かったんだぞー! たくさん魔法を撃って、魔物をたくさん倒してくれたお陰で、俺たちが勝ったんだぞ?」


「「「うおーーー!」」」


 バンダナの冒険者に視線を向けていた子供たちが、レクセイナの方を勢いよく振り返ると、より一層輝いた瞳をする。


「特に風の魔法は、最高に切れ味が良くて、魔物を粉々にして見せたんだぜ」


 バンダナの冒険者が、子供達の好奇心を煽るように、重そうな身体で歩きながら続けてくる。


 どんどんと輝く瞳で見つめてくる子供たちに、子供慣れしていないレクセイナは曖昧に微笑むだけにとどめた。


 子供たちが親に呼ばれて、レクセイナたちに一度挨拶をした後、駆け足で元気よく去っていく。


 もう周囲に魔物は居ないとは言え、まだ毒を持った魔物の死体だったりも転がっているし、子供たちには危ないということになったのだろう。


 子供たちの面倒を見るためにか、非戦闘民の大人たちの数も減っている。


 バンダナ冒険者に、レクセイナは改めて声をかけた。


「あのっ……。その怪我、大丈夫ですか?」

「大丈夫です。ありがとう御座います」


 そう言うと、バンダナ冒険者はレクセイナに頭を下げた。


「えっ。あっ……」


 突然、目の前で頭を下げられて、レクセイナはオロオロとした表情をする。


 冒険者としては、バンダナの彼の方がずっと経験も積んでいる先輩だ。それに、レクセイナたちが駆けつけるまでに、指揮を執っていたのだ。


 頭なんて私に下げて、大丈夫なんだろうか……?


 レクセイナの心配をよそに、バンダナの冒険者は頭を下げたままだ。


「本当にありがとう御座いました。正直、あなたが来てくれなければ、私たちは厳しかった。


「レクセイナ、そういう時の感謝はありがたく頂いとくべきだぜ?」


 隣にいたオルデンが、レクセイナの狼狽した様子に、にんやりとした表情でアドバイスを挟んでくる。


「そうですよ、オルデンの言う通りです。レクセイナさん。随分と派手な魔法を最後に撃っていたのは、あなたでしょう」


 気がつけばベルがやって来ていた。ベルが戻ってきたということは、村人たちを守る役目も完全に終わったと言うことでなんだと思う。


 気がつけば、私の周囲に一緒に戦った仲間たちが集まっていた。


 バンダナの冒険者に、無精ひげの中年冒険者。


 多種多様な魔法でボスの足止めと、木属性魔法の無効化を解除してくれていた人たち。普段は戦うことが仕事ではないのに、村を守ろうと武器を取って立ち上がった村の青年たち。


 そして、背後を気にすることなく、存分に戦えるように、非戦闘民の村人たちを守ってくれていたオルデンとベル。



 私たちを除いて、総合力で一番強いバンダナを巻いた冒険者の彼が、全員を代表して声を張り上げた。


「みんな! 戦闘の勝利おめでとう!! ウンザリするような魔物の数に、命の危機もだいぶ感じたが、それでもみんなで勝つことが出来た!」


 大きく息を吸って、彼は言葉を続ける。


「今回、MVPは間違いなく彼女の彼女のお陰だ! 異議があるものはいないか?!」


 バンダナの冒険者が反対者を探すように、周囲の仲間を見渡す。


「あの最後の魔法が決め手だろ。レクセイナ嬢ちゃんで間違いないぜ~?」


 無精ひげの中年冒険者が、ボソッと小声で漏らしたの僅かに聞こえ、直ぐ隣にいるオルデンが満足げな表情をした。


 全員が異議がないとばかりに、周囲から反論は聞こえてこない。


 一拍置いて、バンダナの冒険者が声を張り上げた。


「では、冒険者の風習に従い、今回名乗りを上げるのはレクセイナとする!」


「えっと……?」


 よく分からない状況に、どのように反応したら良いのか分からない私に、隣のオルデンが手を引いて仲間たちの中心に行くように促した。


「魔物が百体以上発生したさいの戦いで、一番の功労者は二つ名を上げる権利があるんだぜ? 知らなかっただろ?」


「二つ名……」


 口の中で、私はその言葉を反芻する。本に出てくる冒険者が、民衆の前で名乗りを上げていたシーンを思い出した。


「さあ、行ってこい。レクセイナ」


「……うんっ!」


 オルデンに背中を押されて、私は駆け足でみんなの中心に進む。


 中心に立つと、みんなの表情がずっと見やすかった。一緒に戦った仲間たちが、戦友たちが、視線が合うと期待が篭もった熱い視線で返してくれる。


 自分が冒険者であることを実感できて、心から抑圧されていた熱い感情が解放され、全身に新たな力が漲ってくる感覚が広がる。


 冒険者が二つ名を上げるやり方は知っている。


 幼い頃から、何度も何度も、本の羊皮紙が擦り切れそうになるくらい、冒険者の物語は読んできた。


 武器の剣を抜いて、天高く掲げた。


「夜の暗闇を切り刻み、今度も永久の繁栄に貢献しよう! この“暴風の守護者”が、今日ここに誕生するっ! 冒険者の新たな導きの光に、私が加わる!」


 決まりの伝統文を混ぜて、名乗りを上げる。

 周囲から今日一番の歓声が上がった。


 山と空の境界線が、朝日で黄金に輝く。


 まるで新たな伝説の始まりに、天も歓喜しているかのようだった。そして、伝説を目撃した彼らたちを、強く照らして輝かせていた――――。

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