表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君の残像を乗せて  作者: 谷中シノン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/95

第5章【第7話:陽炎のパレード】

第7話:陽炎のパレード


 

 昼下がりのパークは、平日にもかかわらず多くの家族連れや観光客で賑わっていた。


  

 カラフルなフロートが音楽に合わせてゆっくり進む「ドリーム・パレード」。

 

 沿道には子どもたちが集まり、キャラクターたちに手を振っている。


 

 ナオは巡回中、休憩時間が被ってパレードを見に出てきていたしおりと会い、一緒に観客の隅に紛れてその光景を眺めていた。

 

 「仕事時間中にパレード見るのって、新鮮ですね」

 

 しおりが眩しそうに目を細める。


 その時だった。



 「誰か……いる……?」


 しおりが見る方向に目を向ける。


 「おるな……」

 

 パレードの最後尾、金色の馬車の上に立つマスコット。その隣、誰もいないはずの空間に、人影が見えた。

 

 薄い日差しの中、その輪郭は陽炎のように揺らめいている。


 ナオが瞬きをした次の瞬間には、影はもうそこに居なかった。

 

 「……しおりにも見えたんか?」

 

 「一瞬だけ……」

 

 「助けなあかんな」


 パレードが通り過ぎたあと、背後から柔らかな歌声が聞こえた。

 

 振り返ると、そこには麦わら帽子をかぶった若い女性が立っていた。

 

 観客ではない。衣装はパレードの衣装に似ているが、少し異なる。それにかなり色褪せていた。



 彼女はナオと目が合うと、穏やかな笑みを浮かべ、沿道の子どもたちに向かって小さく手を振っていた。

 

 その手は、日差しの中で透けて見えた。


 温かい記憶が流れてくる。

 ──大勢の人から拍手や喝采を浴びている彼女の姿。



 「なるほどな。忘れられへんかったんか」


 ──きっと、彼女もかつてこのパレードで踊っていたのだろう。

 

 ナオはそう思った。



 何かを伝えるように、彼女は口を動かした。



 「まだパレードは終わってへん。ここにおる場合と違うんちゃうか?」


 彼女の影が少し首をかしげる。

 「いいの?」と問いかけているように思えた。



 「俺なぁ、前まで責任者やった黒瀬の別人格みたいなもんやねん。だから、俺が黒瀬に変わって許したる。行ってきい」

 

 次の瞬間、彼女の影はすぐに消えた。


 少し先に進んでいたパレードのフロートを見ると、そこで彼女の影は、まるで踊るかのように揺れていた。



 「一番綺麗やで」



 その言葉が届いたのか、次の瞬間、彼女は陽炎のように空気へ溶けていった。



 

 「ナオさん?」

 

 しおりの声で我に返る。

 

 「……また、一人助けれましたか」


 

 「……助けられたのは、こっちかもしれへんなぁ」

 

 小さくつぶやいたナオの横で、パレードの音楽はまだ軽やかに響き続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ