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いよいよブレーデンと約束した時間となった。
ダリアはできるだけめかし込んで、勿論あのブローチも身につけた。そして手紙に書かれていた待ち合わせ場所へと向かう。
「いらっしゃいませ。お久しぶりです、お嬢様」
「お久しぶりです」
そこはジョシュア達が初めてデートをした、例のコーヒー店だった。相変わらず優しい表情の店主が、ダリアを迎える。
「本日も貸切にしておりますので、ごゆるりとお過ごし下さい」
「…はい」
まさかそんな事をしてくれているとは思わなかったダリアは、更に心を躍らせる。思わず笑みを浮かべながら二階へ向かった。
前回訪れた時と、装飾が変わっていた。相変わらず異国を感じさせる独特の雰囲気に、ダリアは目を輝かせる。
どうやら中央に置かれているテーブルが、自分たちの席の様だ。近づいてみると、卓上を彩る飾りの中央に、小さな箱がひとつ置かれていた。
ダリアの心臓が跳ねる。手に取ろうとした時だった。
「ダリア」
愛おしい声が聞こえて、ダリアは振り返る。
「ハノーヴァー卿…」
「まだそんな呼び方なのか」
「え?」
「名前でいい」
呆れた様子のブレーデンに、ダリアは恥ずかしげに言った。
「…ブレーデン」
「それでいい」
嬉しそうに微笑んだ後に、ブレーデンはダリアが手に取ろうとしていた小さな箱に目を移した。
「あの…これって」
思わず問うたダリアに、ブレーデンは静かに言った。
「ずっと後悔していた事がある」
「後悔…?」
ブレーデンはゆっくり歩を進める。
「いくら自覚していなかったとはいえ、何も考えずに君にアクセサリーを送ってしまった事だ」
ダリアは思わずブローチに触れた。横に並んだブレーデンはそれを見て、ふ、と笑う。
「あの時は本当に焦った。と同時に、とても悔やんだ。もうその時から私は、君に夢中になっていたんだろう」
ブレーデンが小さな箱を手に取り、封を開ける。そしてダリアに跪いた。
「ダリア、君を愛している。その証として、この指輪を贈らせてくれ」
その小さな箱の中には、指輪が入っていた。ダリアは呆れた様に笑いながら言う。
「仕切り直すって、こういう事ですか」
「ああ、そうだ」
「もう…本当に、面白い人ね」
ダリアはブレーデンに手を差し出す。
「私もあなたを愛しています。ぜひ受け取らせて」
ブレーデンはダリアの薬指に、指輪を嵌める。ダリアは指先に輝く指輪に、しばらく見入った。
「七宝焼きの小さな石がついてる」
「そうだ。それを探すのに手間取ってな」
「別に何でもいいのに」
「せっかくだから、君が気に入りそうなのをと思って」
「変な所でこだわるのね。ねえ、私も仕切り直していい?」
「何…」
ダリアは、ブレーデンが言い終わる前に抱きついた。ブレーデンは目を瞬く。
「いきなり抱きしめてきたの覚えてる?びっくりしたんだから」
「す、すまない…」
「いつも振り回されてばっかりだったけど、これからはそうはいかないから」
そう言ってダリアは背伸びをすると、チュッとブレーデンの頬にキスをした。
二人は目が合い、お互い吹き出す。そしてどちらからという事もなく、口付けあった。
数年後、ジョシュアとエマリエルの間に小さな王子が誕生した。その王子には既に頼れる側近がいて、近々生まれてくるそうだ。
Fin.
お読みいただきありがとうございました。
活動報告の方に後書きの様なものを書いておりますので、ぜひご覧ください。




