打ち合わせ
数日後のこと。
王城内にいた膿を全て出すことに成功した。
そのことは、特定班から考察厨へ知らされることとなった。
「お手柄だったなぁ。
名も知らぬ英雄さん」
知らせに来た特定班は、そう言って茶化した。
一方、スネークはというと、
「わー、英雄さんだー、抱いてー」
棒読みで言ってくる。
「よせやい、照れるぜ」
と、考察厨もノリノリである。
ポーション作成のための作業部屋である。
そこに、家主であるリンと考察厨、特定班、スネーク、配信者が集まっていた。
リンはともかく、他四人はこっそりと家の中に入ってきたのである。
ちなみに守護騎士のタクトは、部屋の外で見張りをしている。
そして、リンがポーションをせっせと作っていると思っている。
そう、この集まりは内緒なのである。
アーサーやアリス、リコ、エストには伝えていない。
この四人は、膿出しのほうに協力していてバタバタしているからだ。
ちなみに、薔薇ジャムさんことリリス嬢には声をかけた。
しかし、聖女活動のために来れなかった。
茶番を見届けて、リンが会話に入る。
「それじゃ、本題に入ろうか」
本題というのは、今起きているゴタゴタ。
その情報の共有と確認である。
そして、魔族もしくは無能組織へカチコミをかけるための打ち合わせであった。
「まぁ、とりあえず、姉ちゃんが見た最悪の未来は回避されたはずだ。
なにせ、その未来にたどり着くためには、城の中にいた内通者の存在が不可欠だったみたいだし」
リンは考察厨を見た。
考察厨が補足説明をする。
「これは話を聞いた上での俺の妄想も入るが、リコが最初に見た未来。
こいつとリコが殺し合いを演じたのは、膿の存在に気づいて炙り出すためだったと考えられる。
リコいわく、殺し方に疑問が残ってたからな。
さてそのあと、リコが俺に未来のことを話したあと、もう一度未来をみたら今度は俺が、めっちゃ悪いことをして族長さんに殺される未来に変わっていた。
ここで、俺はさらに仕掛けを試みた。
自分が裏切って殺される未来。
それを知って、俺はこう考えた。
上手くやればスキルを使って未来を見に来たリコへ、何が起きたか伝えられるんじゃないかってな。
それは成功した。
リコは未来の俺から、何が起きたのか教えてもらった」
考察厨がエストによって殺されるという未来は変わらなかった。
しかし、何故そうなったか答えを教えて貰えたのだ。
その答えというのが、
「まぁ、早い話が本来ならリンがやるはずだった役割が俺になってただけらしい」
考察厨以外が首を傾げる。
「最初、リコだけで頑張ってた頃の未来ではどうしてもこの国は滅んでたらしい。
この話はリンは知ってるよな?」
「まぁ、うん」
ざっくりとだけ聞いている。
その未来では、自分がアーサーたちと共に処刑されていたのだという。
「どうも、それは魔族側がお前のメンタル落として操ってたっぽいんだ。
未来の俺はあえて、魔族側に行くことで本来の計画を聞かされた。
そのために、敵の懐に入り込むために結構ガチで頭を使ったみたいだけどな」
その結果が、王都を壊滅させる未来なのだから、考察厨は敵に回してはいけない存在なのはたしかである。
「本来の計画だと、リンを精神汚染させて自分たちの方へ引き込み、スキル持ちなんていない方が良いって洗脳して協力させるつもりだったらしい。
それが出来ないなら、せめてリンを自分たちの方へ引っ張り込むか、自滅させるように仕向けた。
でも、それが出来なくなった。
勘づいた王子様の指示を受けて、聖女Aが洗脳魔法を解いたからだ。
そして、次に目をつけたのが俺だった。
でもこれは、俺が目をつけさせたんだ。
スネークや特定班を使ってな。
俺は、リンの近くにいる唯一の無能だ。
向こうにとっちゃ、この上なく都合がいい存在だろ。
なにせ、一部の無能はスキル持ちたちに対してコンプレックスを抱えてる。
表に出すか否かの違いこそあるがな。
相手にとって誤算だったのは、まさかコンプレックスを持たない無能がいるなんて考えていなかったことだ。
だから、まいた餌に食らいついてくれたわけだ。
で、結果的に膿出しに成功した。
ここまではいいか?」
全員が頷く。
「ここからが重要だ。
いつだったか、リンが魔族へカチコミかける極秘企画が王子様たちにバレたことをスレで報告したことがあったろ?」
「あー、うん、あった」
リンが肯定する。
【極秘企画バレちゃった】というスレでの話だ。
「あの時の掲示板で、コテハン勢が書き込んでただろ。
覚えてるか??」
「あ、なんかの木馬がどうとかってやつ?」
「それそれ」
「それが??」
「端的に言うと、厄介な存在が魔族側か無能組織、その両方に味方してる。
なにせ、未来の俺がリコへ俺にだけわかるように伝言を持たせてくれたんだ。
これは確定だ」
「厄介な存在??
時々、見え隠れする魔王とか邪神のことか??」
「いや、違う。
そういうこっちの世界の存在じゃない。
もっとイレギュラーな存在だ」
「その存在って??」
「転移者と呼ばれる存在だ」




