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「フェリシア!やっときてくれたのか!サラもおかえり」
聖女一行を迎えてくれたのは神官長であった。
「王太子殿下も此度はおいでくださり、誠に感謝いたします」
「うむ、民のために心身共に尽くしてくれる教会にはこちらこそ感謝している」
「ありがたきお言葉」
「それに聖女の祈りとやらも拝見してみたかったからな」
「それはそれは!でしたら早々に行いましょう、フェリシア頼んだぞ」
「………かしこまりました」
もちろん、今回の教会訪問にきてるのはフェリシアではなく、エミリアだ。教会への祈りの仕方は知っているが、聖女がどう祈っているのか全く分からなかったエミリアは内心とても焦っていた。
「………神官長、一つ聞いてもよいか?聖女の祈りは普段の祈りの仕方とは違うのか?」
「いえいえ、祈りの仕方はほとんど変わらないのです。ただ、聖女が祈るときは自分の魔力を込めて祈るようにしております」
「神官長さま、実は聖女さまなのですが……」
「む?」
言っていいのかわからず、サラはちらっとエミリアを見た。
エミリアは頷くと、
「……私、魔法が使えなくなってしまったのです」
「それは………誠なのか??」
「………」
「そうか、ひとまずお祈りをみてからにしよう。女神様のお導きがあるやもしれん」
少し重い空気の中歩くと、女神の像が奉らえている祈りの間に着いた。
躊躇してしまったエミリアの背中を神官長は優しく押してくれた。
「大丈夫、やってみなさい」
「…はい」
女神像の前に両膝をつき、両指を絡めると、エミリアは祈るように魔力を込めた。
「………………!!」
すると、目の前が光り輝き始めた。次第に大きくなり、目を開けていることができずぎゅっと瞑った。身をつつまれる感覚がしたと思ったら、声が聞こえてきた。
「んーー?また違う魂になってる??ちょっとー!いつまで目を瞑ってるつもり??」
エミリアが目を開けると何もない空間が広がっていた。
「こ、ここは??」
「ここ?んーーそっちで言ったら女神の世界ってやつ?」
「……あなた様はもしや!」
「フェルテシナ、この世界の女神です」
にこっ!と笑ったのはフォルス王国を作ったと言われてる女神フェルテシナその人だった。
「わ、私魔法が………」
「使えるからここに来れたんだよ?」
「あ………」
「しっかりと魔法が使えたのに浮かない顔してるね?」
「…………」
俯いているエミリアをフェルテシナは見つめた。
「…魔法、使いたくなったんでしょ?」
「っ!!」
「ふふ、驚いてるね!これでも女神だからなんとなーくで分かるんだ!」
「私は………」
「もしかしてあれ?まだ聖女は王家と婚姻を結ぶとかいうのが残ってる?」
エミリアは俯いていた顔をバッとあげた。自分と同じ金色の瞳と目があった。
「なぜそれを!」
「んー、ちょっと昔話をしようかな!私がフォルス王国人として生きてた頃の話!」
「……女神様がフォルス王国人??」
「えへへー、この世界なにもないでしょ?ちょっと飽きちゃって」
「飽きちゃって………そのようなこと可能なのですか??」
「遊びに行くような感覚かな?あんまりやっちゃいけないことみたいなんだけど」
「…………」
「ありゃ?かたまっちゃった?」
「………お話きいてもよろしいですか?」
「もっちろーーん!あれは何百年前の話だったかな……」