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白銀の忌まれ血  作者: 影乃雫
第三章 騎士編
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Ep:96 王座

 王様が敵だと分かり戦ってから数週間が経った。今だに王様の居場所は分かっていないらしい。一部の人以外には、王様は長期の出張で外国に行っていると伝わっている。


「早く陛下が見つかる事を祈るしかないな…」


ダギル大尉は呟いた。


------------------------------------


「チェックメイト!また俺の勝ちっすね」


「またか…」


そう呟き、ヘルツはクロウヴに銀貨を投げて渡す。


「あざっす!(この人負けず嫌いだから助かるぜ~)」


クロウヴは飄々と笑いながら銀貨を掴み取る。


「それより、K(キング)がヘマしたって聞きましたけど、あれって本当すか?」


「本当だ。自ら自分の事を話すなど言語道断…主が気付いていなければやられていた…」


「マジすか…一対多だったとしても、相手も強くなってきてますね…」


「挙句子供は第三段階(フェーズスリー)だ…主の()()()()が無ければ間に合っていなかった」


「確か、子供の周りにもう一人増えたんすよね?赤い奴」


そう聞きながら、クロウヴは自分の黒い駒を動かす。馬の首から上の様な形をした駒を前に進める。


「あぁ、元々リッターで仲間だった奴だ。アードラーが死んだ今、あの子供の心配をして銀鷲に移ったらしい」


ヘルツは答え、クロウヴがついさっき動かした馬の駒を、最も量が多い小さな駒で取る。


「あ…!そうきたか…」


クロウヴはそう呟きながら、他の駒を動かす。


「それで、団長としての仕事はどうなんすか?K(キング)を守るっていう騎士団長の仕事は」


「何ら問題はない。私が()()()()()()だという事も、知られている様子は皆無。否…ハーツ=カルトが敵だという事は気付いているかも知れないが…」


ヘルツは、そのフードから出ている髪を触りながら言う。


「流石っすね…俺なんて、学校教師一人自分の下に着けるので精一杯っすよ」


J(ジャック)の事か?」


「そうです。そろそろ送り込んだ方が良いっすか?」


「そういう事は主に聞け。チェックだ」


「なっ…!?いつの間に…!」


驚きつつもクロウヴは自分の駒を動かす。


「何て、これでチェックっすね」


クロウヴは、たった一手でヘルツのチェックを無効化し、逆にヘルツの王に王手をかけた。


「ま、参った…」


そう言ってヘルツは再びクロウヴに銀貨を渡した。


「毎度、ありがとうございま~す」


クロウヴは、ヘルツを煽る様に言った。


------------------------------------


 とある屋敷の一室。トイフェルは椅子に座り、葡萄酒を飲みながら目の前に居る銀の長髪の男に向かって言う。


「わざわざ私が取り次いで君を王に仕立て上げたと言うのに、その座を棒に振るなんて…何を考えている…?」


トイフェルは、細い目の先に見える紅い瞳を男の紫色の眼に向ける。


「申し訳ございません…!次こそは――」


「次こそは、何て言葉は信用できない。そもそも、この状況で次があっても意味が無いだろう?」


「お、仰る通りです…」


銀の髪に紫の瞳の男ファイント=ケーニヒは、まるで蛇に睨まれた蛙の様に怖気付く。


「私は、君の様に人を見下し、驕り高ぶり、プライドの高い者が王にふさわしいと思ったのだが…どうやら私は間違っていた様だ」


「そんな…!もう一度…もう一度機会を下されば…!」


トイフェルはその言葉に少しの間黙る。


「分かった、もう一度機会を与えよう。その一度で必ず王座にしがみつけ。もしもその手を王座から離したのであれば、私は君を切り捨てる。良いね?」


「分かりました…」


ファイントはそう呟くと、トイフェルの居る部屋から出て行こうとする。


「そうそう、一つ言い忘れていた。暫くはこの屋敷を好きに使うと良い。少しは体を休ませたまえ」


「分かりました」


ファイントは、今度こそ部屋から出て行った。


「さてと…もうすぐ辿り着くかな…?ライト君…」


トイフェルは、虚空に向かって呟いた。

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