Ep:90 国王
何の問題も無く、騎士団合同活動報告会は終わった。終始よく分からない内容だったけど、何となくは理解した気がする。王様は、報告会が終わるなり、直ぐに大会議室を出て行った。
「おい、陛下を追うぞ」
周りに聞こえないくらいの大きさで、少し焦った様にダギル大尉は言う。そして、せわしなく片付けをする他の騎士団員や団長を他所に、僕達は王様を追いかけて大会議室を出た。
「陛下!」
ダギル大尉が、廊下に出て直ぐに左右を見て言う。
「ん?何の用だ?」
王様は、赤い絨毯の上で振り返る。ダギル大尉は、僕の背中を押す。
「無礼を承知で言います…!王様は、どっちですか…!?」
僕は少し先に居る王様にそう聞いた。王様は、その紫色の瞳を確実にこちらに向けている。
「味方だ」
王様は、ほんの少し間を置いてそう言った。味方と聞いて少し安堵したのも束の間、アオイが、僕の後ろから跳び出した。そして、一瞬で王様に間合いを詰める。
「斬る…!」
アオイが振ったカタナを、王様は自分の腰にあった剣で防ぐ。
「貴様!国家反逆罪だ!」
王様の隣に居た、二人の護衛がアオイに向けて剣を抜く。すると、王様が左手を護衛を遮る様に出した。
「止めろ。これは我の問題だ。そなたらは手を出すな」
王様は振り向き、護衛の二人に言ってからアオイに視線を戻す。
「銀鷲騎士団上等兵イッシキ=アオイよ。何故分かった?」
その言葉に、僕含め、アオイ以外の四人が驚く。王様は、鍔迫り合い状態の剣を無理矢理押し、アオイは飛び退く。
「此奴はどちらかと聞いた…何がは分からない筈だ。それなのに、何故味方だと答えた…?」
「うむ、良い判断力だ。だが、そなたらは今ここで死ぬ」
そう言うと、王様は左手に魔力を込めた。すると、その掌に黒と紫の入り混じった様な色の魔力の塊が発生した。それは、次第に大きくなり、最終的には、人の顔程まで大きくなった。
「死ね」
王様はそう呟き、その塊を放つ。真っ直ぐアオイに飛んで行った弾は、それを防ごうとしたダギル大尉の剣に当たり、弾け飛んだ。
「陛下ともあろう御方の魔力…案外大した事は――」
「その台詞は、己が剣を見てから言うと良い」
そう言われ、全員の視線がダギル大尉の剣へと集中する。視界の奥で、王様は指を鳴らした。その瞬間、ダギル大尉の剣は錆び、崩れ落ちて行く。
「なっ!?俺の魔鋼の剣が!?」
「我の魔力が、何だと?」
ダギル大尉は、刃が無くなり、柄だけになった剣を見つめて唇を噛む。
「どうやって我の事を知ったかは知らないが、こうなった以上、子供だけ回収して他は口封じとするか…」
「暁刀流、暁光の閃!」
アカネが、後ろから跳び出し、アオイ同様一瞬で王様との間合いを詰める。
「イッシキ=アオイと似たような技か、既に見切った」
王様はそう言ってアカネの剣撃を受ける。
「陽光の断!」
アカネはそう叫ぶと、跳んだままの状態で王様の腹を蹴る。そして、一回転する様にカタナで薙いだ。
「ぐぅ…ッ!」
王様は咄嗟に剣を立て、その攻撃を往なす。
「面倒だ…我を守れ!」
王様はアカネを弾き、左手を振り払う様にして叫ぶ。それを合図に、待機していた護衛二人が襲って来た。
「剣は無くてもな、小隊長の力を舐めるんじゃない!」
ダギル大尉はそう言うと、護衛の一人の腹に拳を叩きこむ。籠手はしているものの、その一撃で護衛の鎧が凹んだ。
「こいつらは俺に任せろ!今は陛下を追え!」
その言葉に視線を戻すと、王様はマントを翻し、踵を返して下がっていた。
「第一段階!」
僕は痣を足に移動させ、床を窪ませながら王様に向かって跳んだ。




