Ep:146 移籍
「団長に呼ばれた?俺が?」
ブルートはドミヌスに聞き返す。
「あぁ。俺から話を付けるつもりだったんだが、彼奴がお前と話をしたいらしい」
ブルートは俯き、少しの間考える。
「分かりました。話を付けます…!」
「分かった。日程は後で伝える」
「はい…!」
ブルートはそう言って頷いた。
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五日後、ドミヌスとブルートは二人で黄金獅子騎士団団長、レオンの元へ向かった。黄金獅子騎士団本部に入り、団長室へ二人は向かう。団長室の前に着くと、ドミヌスは扉を叩く。
「入るぞ」
そう言ってドミヌスは扉を開け、部屋の中に入って行く。それを追ってブルートも中へと入った。
「失礼します」
執務机を挟んで座るレオンは、黄金の鎧を上半身だけ脱いだ格好だった。
「話しは聞いている。白銀烏騎士団に移籍したいのだろう?」
「はい…!」
ブルートは真剣な表情でレオンを見据える。少しの間沈黙が続いた。すると突然レオンは溜め息を吐き言った。
「前に言っただろう、この騎士団は辞めさせないと。そもそも、騎士団の移籍は前代未聞だ。前回は特例で――」
「前に言った筈です、できるできないはやってみてから言って下さいと…!」
ブルートの反論に驚いたのか、レオンは表情こそ変えなかったが、口を閉じる。
「前代未聞だからやらない、やらせないでは何も変わりません!前に言って下さったでは無いですか!友の為に己を顧みない精神には感心したと!」
ブルートは捲し立て、ドミヌスはブルートを見守り、レオンは沈黙する。レオンが口を開いたのは少し経ってからだった。
「…前回俺がお前の移籍を認めなかったのは、良き団長で在り、好敵手と思っていた奴が死んだ所為だった…」
その言葉にブルートは少し驚く。
「アードラーが死んで、敵の力を思い知った。その所為で、国を守る為に自分の元から戦力を失いたくないと思ってしまった」
レオンはほんの少し悲しげな表情で言う。
「だが今回は違う。俺が移籍を認めないのは、只の意地だ」
「え…?」
「自分の感情だけで団長を辞め、この騎士団を失脚させた奴が何故今になって新たな騎士団を設立する…?俺はそれが気に食わなかった」
レオンはそう言ってドミヌスを睨む。ドミヌスはそれに気付いてはいるが、顔色一つ変えなかった。
「でもそれは――」
「分かっている。結局俺も兄貴と同じだ。自分の感情だけで団員の意思を無視している。俺も結局同じなんだ」
そう言ってレオンは立ち上がり、一度部屋を出た。暫くして戻って来たレオンの手には、一本の黄金の剣があった。
「兄貴…いや、兄上。兄上が置いて行った剣とブルート=フランメはくれてやる。せいぜいどっちともこき使ってやれ」
レオンは剣をドミヌスに投げ渡して言う。ドミヌスはそれを受け取ると、言った。
「ふっ…素直じゃ無いな、お前は。応援してるで良いんだよ」
「フンッ…!馬鹿言うな」
ドミヌスの言葉に、レオンはそう言って顔を背けた。
「今まで、有り難う御座いました!」
ブルートはそう言ってレオンに頭を下げた。




