Ep:144 団名
トイフェルが牢獄を脱走してから早一週間。騎士団の中では新しかった銀鷲騎士団も無くなってしまった。ブルートは黄金獅子騎士団に戻り、僕と茜と葵は宿屋で生活していた。
「本当に大丈夫なんでしょうか…エル殿の事も、そのドミヌスと言う人の事も…」
「エルの事は何も言えない…でもドミヌスさんは必ず僕達の事を助けてくれるよ」
僕は茜に言う。
「何故言い切れる…?それにお前だって…」
葵は僕の顔を見て言う。葵の言いたい事は何となく分かった。直接言われた訳じゃ無いけど、驚いていたのは知ってる。僕の両の瞳は紅くなり、首の痣も、右側は大きくなり、左側にも伸びていた。
「三人で仲良く飯か?」
突然僕の後ろ、茜と葵の前から声を掛けられる。茜と葵は顔を上げ、僕は振り返ると、そこにはドミヌスさんが立って居た。
「ドミヌスさん!騎士団の話、どうなったんですか?」
「あぁ、今話を通してきた」
「話を通すって…誰にだ…?」
「元々の大臣達だ」
王様が敵だと分かり、戻ってこない今、この国は崩壊しかけていた。それを何とか抑えているのが、元から王宮に仕えていた大臣達だった。
「今の国民の不安は凄まじい…国王が失踪し、騎士団が二つも潰れた。ましてや女王さえも居ないとなると、大臣達の負担も凄い筈だ。新しい騎士団を作れば、国民の不安も少しは解消すると思うんだが…」
「ですが、それで解消するのはほんの僅かなのでは無いですか?」
「確かにそうだけど、新しい騎士団がトイフェルを倒す事を目的としていて、団長が元黄金獅子騎士団団長だって知れば、もっと落ち着くんじゃないかな?」
僕の言葉に、茜は「成程」と言って頷いた。流石にそれでも全ての懸念が解消される訳じゃ無い。銀鷲騎士団の他に、国王の近衛騎士団、碧竜騎士団までもが無くなった。団長は居なくなり、一部の団員も失踪した所為で、この国は戦力不足だと言う人もいる。
「そう言えば、もし新しい騎士団ができたとして、どんな名前にするのですか?」
茜はドミヌスさんに聞く。
「名前か…考えて無かったな…」
「色と動物…?」
僕は呟き考える。
「動物なら、烏はどうでしょう…!」
「カラス…?何故だ?」
「この国では烏は不吉な鳥とされていますが、東方では、神の使いや、松明を掲げ導いたと言う伝承があります。後者は、混沌とした今の国に光を掲げ、導くと言う意味を込めては如何でしょうか?」
「成程…それは良い…」
ドミヌスさんは顎に手を当てて言う。
「じゃあ色は黒?」
僕は言う。
「在り来たりだな…」
そう言ってドミヌスさんは僕の方を見る。
「色はライトの髪の色と同じ白銀色するか」
「え…!?」
「良いじゃないですか、ライト殿!」
「異議は無い…」
「なら決まりだな。騎士団の名は白銀烏騎士団だ」
「えぇ!?」
僕は思わず声を上げた。
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ライト達の居る宿屋の屋根の上、片耳に小さな水晶玉を当ててしゃがんでいる少年が居た。水晶玉からは、宿屋の中の、ライト達の声が聞こえてきていた。
「白銀烏騎士団ねぇ…どんなものになるのやら…」
そう言って少年は立ち上がり、耳に当てていた物と同じ大きさの水晶玉を更に二個取り出した。すると順に上へ投げ始め、まるで道化師の様に落ちて来た玉を取っては、もう一つの玉を投げたりを繰り返した。
「ほっ…!ほっ…!ホント、切り札には切り札も居るって事忘れないで欲しいよね…!――あ」
声と共に、少年が取り損ねた水晶玉が落ち、屋根とぶつかった衝撃で割れてしまった。少年は暫くそれを見つめると、突然それを踏みにじった。




