Ep:142 牢獄
「トイフェルが僕に会いたい…!?」
ドミヌスさんから新しい騎士団への誘いを受けた次の日、僕はブルートからその話を聞いて驚いた。
「そう言ってたらしい…奴が捕まってからお前が起きるまでの間に、何度もお前が起きたか確認してたって聞いた」
ブルートはそう言って少しの間黙り込む。
「どうする…?はっきり言って、あんな事を仕出かした奴とお前が会うのは気が引けるって言うか…危険って言うか――」
「僕、会ってみる」
「え…?は?でも危ないだろ…!?」
ブルートはそう言って僕がトイフェルに会うのを止めようとする。
「心配してくれるのはありがたいけど、もう決めたから。会って、ちゃんと話をして、反省させる」
僕が言うと、ブルートは俯き、少し黙った。
「分かった…そう伝えておく」
ブルートはそう言って医療室を出て行った。
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三日後、色々な手続きを済ませて、僕はトイフェルに会いに行く。向かうのは、黄金獅子騎士団が所有する、犯罪者を一時的に捕えておく牢獄。場所は黄金獅子騎士団本部の裏手にある建物の地下らしい。
「銀鷲騎士団のライト上等兵ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
黄金獅子の騎士に連れられて、大きな本部の建物の外周を回り、裏手の寂びれた塔の様な建物に入る。薄暗い螺旋階段を降りると、鉄格子のはめられた檻が幾つも並んでいた。
「こちらです」
騎士はそう言うと、通路を前へと進んで行き、一つの牢の前で止まる。そこには、足枷を繋がれ、小汚くなった貴族の服を身に纏ったトイフェルの姿があった。
「やぁ…待っていたよ」
そう言いつつも、トイフェルは視線を一切こちらに送ってこない。
「あの」
僕は騎士に言う。
「何でしょうか?」
「出してあげて下さい。牢屋に入ってる人を見るのは、昔の自分を客観的に見てるみたいで気分が悪い…」
「分かりました。出ろ、御厚意に感謝しろ」
そう言って騎士は牢の鍵を開け、トイフェルの足枷も外して外に出させる。そして、逃げられない様に手を後ろに回し、そこに手枷を付けた。騎士は僕達から一歩離れた。
「面会時間は十分間です」
騎士はそう言って手に持っていた砂時計をひっくり返し、時間を計る砂が落ち始めた。
「来てくれてよかった」
トイフェルはそう言いつつ、全く目を合わそうとしない。むしろ、視線だけは下を見ている。
「何の用…?」
「私が捕まる前、君が私の時間に追い付いた後に起った出来事を話そうと思ってね?」
「何があったの…?」
「君はあの後、魔王に体を乗っ取られた。しかも魔王は、今までより人間味を帯びてきていた」
「え…?」
僕は思わず声を漏らす。
「君が作った魔法、ショット。それを魔王は使い熟していた。正常な君が放っていた様にね」
とんでもない事を言いながらも、トイフェルはずっと下を見ている。
「君が魔王に乗っ取られた所為で、私は捕まった。もう一生牢の中だろう。君はこの苦しみをよく分かっている筈だ」
「それは…」
「君の所為で、私に自由は無い…!」
トイフェルは煽る様にそう言った。
「それは…それは違う。お前は悪い事をして捕まった。僕は、この世に産まれただけで捕まったんだ。僕とお前とでは訳が違う…!」
僕はトイフェルに言い放った。すると、突然トイフェルは若気、僕の方に視線を向けた。
「そう、君と私では捕まった訳が違う。だが私は捕まる訳にはいかない…!」
その瞬間、トイフェルの手枷が音を立てて外れた。




