Ep:141 前進
目が覚めると、僕は本部の医療室に居た。
「う…うぅ…」
全身が痛む…僕はゆっくりベッドから体を起こす。
「いてて…」
ベッドから降りて、水を飲む。すると、医療室に誰かが入って来た。入り口を見ると、入って来たのはブルートだった。
「ブルート…!どうなったの…!?」
僕はブルートに近付き、僕が気絶した後の事を聞く。すると、ブルートは一瞬僕の方を見て、直ぐに俯いた。
「ライト…起きたのか…」
「ねぇ…!どうなって――うぅ…」
僕は無理に声を出した所為で体を痛める。
「おい、無理するな…!取り敢えず寝ろ…!」
ブルートはそう言って僕の手を掴み、ベッドに向かって引っ張る。僕はベッドに腰を下ろし、ブルートを見上げた。
「良いか…今からとんでもない事を話すぞ…」
僕は真剣な表情のブルートに頷く。すると、ブルートは僕が見ていなかった事、僕が気絶した後の事を話しだした。
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「そんな…」
僕はそれしか言う事が出来なかった。ブルートが教えてくれたのは、大まかに、ダギル大尉が殺された事、レーラール先生がJだった事、エルが連れて行かれた事の三つだった。後は、トイフェルが捕まった事を教えてくれた。
「俺だって自分の口から言うのは辛い…」
「ねぇ!茜と葵は!?何でエルを!ダギル大尉を助けられなかったの!?ねぇ!」
僕はブルートに掴みかかる。ブルートは黙って何も言わない。暫く僕はブルートに向かって怒鳴り続けた。すると突然、ブルートが僕の腕を掴んで引き剥がし、今度は僕の胸倉を掴む。
「アイツらにだってどうしようも無かったんだよ!」
突然怒鳴り返されて僕は冷静さを取り戻す。
「ごめん…自分の事しか頭に無かった…他人を考える余裕が無くて…」
僕はそう呟き、肩の力を抜く。ブルートは僕の胸倉から手を離し、僕は尻餅を突くようにベッドに座った。
「国王も不在、団長も決まらないで銀鷲騎士団は無くなるってよ…」
「え…?そんな…!?じゃあ僕達どうすれば…!?」
「俺に聞くなよそんな事…!こっちだって一杯一杯なんだよ!」
僕はその言葉に俯く。何もかも失って、僕とブルートは途方に暮れていた。その時、もう一人医療室に入って来た。
「大丈夫か?」
そう言って垂れ幕の陰から姿を現したのは、ドミヌスさんだった。
「ドミヌスさん…」
僕は呟く。
「話は聞いたぞ。銀鷲が無くなるんだってな…」
僕とブルートは俯いて頷きもしない。
「アンタは良いよな、昔関わりがあっただけで今は関係ないなんて…俺は黄金獅子の騎士だけどよ、銀鷲に沢山世話になったんだよ…」
ブルートは俯いたままドミヌスさんに言う。
「そうだな…俺には関係ない」
その言葉に何かが切れたのか、ブルートはドミヌスさんの胸倉を掴んだ。ドミヌスさんは動じず、何も言わない。
「くっ…!」
ブルートは歯を食いしばり、ドミヌスさんを離す。
「俺に銀鷲騎士団は関係ない。でも馬鹿にしている訳じゃ無い。お前ら、後ろばっかり見て前に歩けるか?」
「え…?」
僕は顔を上げ、思わず声に出す。
「俺はもう一度、騎士団長の座に就く事にした。だがそれは銀鷲じゃない」
「どういう事だ…?」
「銀鷲が無くなるのは惜しいが、俺には荷が重すぎる…だから俺は新しい騎士団を作る」
「え…!?」
「何だと…!?」
僕とブルートは驚き、同時に声を上げる。
「団員には少数精鋭を希望する。お前らに声を掛けるつもりだったんだが、その様子なら断られそうだ」
「え…!?そんな…!僕入ります!」
僕は慌てて立ち上がる。その所為で太ももが痛くなった。
「お前は?」
ドミヌスさんはブルートに聞く。
「俺も…入る…いや、入らせて下さい…!」
「分かった、だが言っておく。俺に人を指揮する資格は無い。自分の命は自分で守れ…!」
僕とブルートは同時に頷いた。
ようやく第四章を終えられる目処が立ちました。
お待たせして、大変申し訳御座いませんでした。




