Ep:140 絶望
ハーツはエルに言う。
「私に付いて来い」
その言葉に、エルは驚く。
「何で私がそんな事…!」
「貴様が器になる適性があれば、あの子供を…ライトを捕える事はもうしない」
「え…?」
エルはその提案に言葉を詰まらせる。
「貴様が私に付いて来ると言うのなら、他の誰にも、指一本触れないと約束しよう」
エルは淡々と話すハーツの言葉を聞きながら黙り込む。
「(これは苦渋の判断だ…主の影が見えない以上、この場を凌ぐにはこれしかない…あの二人を相手にするのは分が悪すぎる…)」
そう考えながら、ハーツはエルの反応を見る。
「私が付いて行けば、ライトは…他の皆は助かるの…?」
「あぁそうだ」
エルは俯き、考え込む。
「分かった…付いて行く…」
「良い判断だ。私達には貴様の力が必要だ」
そう言うとハーツは上を見上げ、薄い光の模様に向かって跳んだ。エルもそれを追うようにして跳んだ。
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同時刻。アカネとアオイは、影の中に引きずり込まれたエルを探し回っていた。
「エル殿!どこですか!?」
アカネは声を上げながら辺りを見回す。
「姉貴…無駄だ…煩いだけだ…」
「でも…!」
アオイの言葉にアカネは口籠る。
「分かってはいるんだ…幾ら探してももうエル殿は居ないんだ…この辺りにはもう…!」
そう言ってアカネは膝から崩れ落ち、自分の影に拳を突き立てる。
「わっ!?」
驚くアカネの声が聞こえ、慌ててアオイが顔を上げると、アカネの手首までが影の中に入り込んでいた。咄嗟にアカネは飛び退き、手を引き抜く。アカネが動く寸前、その場にハーツとエルの姿が現れた。
「なっ…!?貴様…!」
「エル殿!?」
二人の発言の矛先は、それぞれ別の人物へ向けられていた。
「あの…私、付いて行く事にしたの…」
「え…?そんな…冗談ですよね…?」
エルの発言に驚いたアカネは、絶望したような表情でエルに聞くが、エルは首を横に振った。
「何を考えてるんだ…!お前…!」
アオイは怒り、エルを止めようと歩み寄るが、エルはその左目を紅く輝かせ、睨みつけた。その眼力にアオイの動きが止まる。
「ごめんね…ライトによろしくね…」
エルが言い終えると、ハーツはエルの肩に手を置き、二人共同時に消え去った。
「そんな…エル殿…」
絶望し、アカネは崩れ落ちる。相反して、アオイは壁に拳を叩きつけた。
「彼奴の眼は本気だった…本気で奴らについて行くと決めたらしい…」
「そんなの嘘だ!何か奴らに弱みを…!」
アカネはそう言ってアオイに詰め寄るが、アオイは首を振った。
「姉貴…煩いだけだ…」
アオイはアカネにそう言った。




