第605話 すっごくヘビー!? 魅惑の深海パーティ……もとい、宮中晩餐会!
「貴女に対して否定的な輩も居ますが、私は応援しておりますぞ、スターレイム卿。
女手一つで身を起こし、子供らを魔術学校に入学させ、今日まで育てられている……さぞ苦労されたコトでしょうなあ」
「あはは……。
そう言っていただけますと……はい、どうぞ」
「おお、ありがたい。
このボケカは家宝にいたしますぞ」
晩餐会の最中、ナタリア様に味方してくれた有力貴族のオジサマやオバサマ達に囲まれて……まるでサッカー選手のようにボケカ(冒険者カード)にサインを求められた私は苦笑いしつつも、内心ちょっと嬉々としながら応じていた。
いやあ、この10年近く魔女じゃなく、冒険者のディケーとして頑張ってきた甲斐があるっていうかあ……見てる人はちゃんと見てくれてるのねえ、って。
「なんでも、御息女の一人は次世代の聖女候補と目されているとか……来年、成人の15歳を迎えられるそうですな」
「どうでしょう、ぜひ今度、我が息子と見合いでも……」
「いえ、ぜひともうちの息子と!」
うお、ここで私からライアに飛び火か!
そう言えば、何年か前にキンドラー魔術学校で授業参観があった時……ライアとユティがとても小学生とは思えない、かなりマジな感じのマジフトの試合をやってたから……あれで一気に二人の噂が広まっちゃったみたいで……(マリー様のハルバード家、大商家のデルタ家がそれぞれパトロンになるのを申し出てくれたおかげで、二人に手を出したり言い寄る人は今のところ出て来ていないのが幸いだわ……)。
よし、ここは母親として……
「え、えーと……。
娘本人はまだそういうのには興味がないようでしてえ……魔術学校で同室のエリザ・ハルバード様からも、卒業後はハルバード家付きの魔術師にならないかと誘われてもいるようなので……あはは」
「なんと……ハルバード家から……」
「正式な公爵家付きの魔術師として迎え入れたいとの申し出となると、これはいよいよ本物かもしれませんな……」
「や、やはり、御息女は聖女様なのでは……?」
「いやいや、うちの子はそんなんじゃないですよー」
あっぶなー!
事前にマリー様から
『もし、他の貴族達からライアさんとのお見合いや婚約の話を持ち掛けられた際は、我が家の家名を出されても構いませんので。
うふふ、だって私達、もう家族みたいなものですからね♪』
って、許可をいただいててよかったー。
うぅ、ママ……優しい……好き……。
「で、では、もう一人の御息女との見合いはどうですかな!?」
「ええと……ユティの方も卒業後はデルタ家付きの冒険者にならないかと誘われているようでして……。
デルタ家の後継ぎのイータお嬢様から、卒業後は護衛として一緒に居てほしいと誘われているそうで……誠に申し訳ありませんが……」
「うぬ、今度はデルタ家か……」
「我らが貴族連合にこそ所属しておらぬが、有力な冒険者にパトロンとして資金を提供するコトで莫大な富を築いた一族……さすが、手が早い……」
ふー、こっちも危ない危ない……。
もうユティの方はイータお嬢様とラブラブ状態みたいだし、今さら男と見合いなんてする気もないでしょうからね……ここは母親として、キッパリとお断りしておかねば!
ーーーしかして、私が二人のお見合いを両方断り、まずは安堵していると、
「……ではスターレイム卿、貴女ご自身はいかがか?」
「……えっ、私ですか?」
「左様。
聞けば御息女らは養子で、スターレイム卿ご自身は未だ独身とのコトだそうだが……」
「ええ、まあ、はい……そうですが……」
オイオイオイオイオイオイっ!
ここに来て、私自身に見合い話ですかっ!?
ま、まあ、確かにソロアちゃんやキャルさんともう何年も一緒に同棲はしてるけど……た、確かに、籍は入れてなかったから、世間的に見れば私ってば独身のシンママなワケでえ……。
「ハルバード公爵夫人と並ぶ魔術の使い手だけあって魔物や有害召喚獣と戦い続けているというのに、スターレイム卿は若々しさを未だに保っておられる。
十や二十の年の差など、こちらは一切気にしませんので……」
「いや、この際だ!
息子と言わず、ここはひとつ私と……数年前に家内と死に別れましてな……」
「そ、それはご愁傷さまです……」
ま、マズいなあ……。
こーゆー話が出てくると、十中八九……
「(うっ、見てる……ムッチャ見てる!)」
向こうのテーブルから、マリー様とのお酒の飲み比べで酩酊し、そのまま二人で休憩室に行くフリをして宮廷内を探索予定のナタリア様が、
『もし見合いの話を受けたりしたら、アンタを殺して私も死ぬから』
って目で、こっち見てる……ッ!
んもー、これから邪教団の有無を調べようかって人が、邪気撒き散らしてどーすんですか、ってハナシですよ!
「(ディケー、分かってるとは思うけど……もし見合いを受けたりしたら……)」
「(受けませんからッ!!!)」
マリー様とグラスを傾けつつ、念話で念を押してくるナタリア様に、こちらも思わず慌てて否定をしておく。
ナタリア様は醉うと話通じないからねえ……いやはや(一応、飽くまでも酔ったフリをする予定だから、お酒はそんなに飲んでないとは思うけども……)。
「ええと……た、大変ありがたいお話ではありますが……。
今の私はヴィーナ家付きの冒険者であると同時に、公女殿下の騎士でもありますので……今しばらくは殿下から『傍に居てほしいと』とお願いされており、私の一存ではお受けいたしかねるお話でして……」
「うーむ、それは残念……」
「公女殿下の名を出されては、我々としてもこれ以上は食い下がれませんな……」
アブネー!
サンキュー、殿下!!
「(いいのよ、お姉様。
その代わり、いつまでも私のディケーお姉様でいてね♪)」
「(あっ、ハイ……)」
ーーーこっちはこっちで、すっごくヘビーだわ!




