【オーダー入ります】
深夜、コンビニに現れたCは珍しくジャージ姿で…
深夜。
真っ白でだだっ広い部屋の、真っ赤な絨毯の上。
ソファに寝そべって仕事をしていたCは欠伸を漏らした。
仕事中、時間を忘れる事等あり得ないが、改めて自分がその姿勢で居続けた時間を計算して項垂れた。
「うわ、昼飯食ってから動いてへんとか。」
それだけならまだ良い。
埃が積もっていそうだと払いながら身体を起こした。
納期も迫っているし、標的の勤め先である企業を監視し続け、次の潜入が省エネで済みかつついでに引き出せるだけ情報を貰って来ようと、監視カメラの動きや警備の穴、パスワードを含め情報収集を続けているが思った様にはいかない。
必要な情報は既に集まっているので業務に支障は無いが、それだけではこの界隈で食ってはいけない。
と、頑張って面白くも無い会社の風景に目を凝らし続ける生活を5日も過ごしている。
Cは指折り数えて急に眼の奥に痛みと首の重さを覚えた。
Aと被るのが嫌で武闘派からインテリに転職してから患った現代病のテニス肘も地味に痺れる。
「そろそろ外出るか。」
何時間前だったか、無性に解放されたくなり上半身は裸だ。
ビンテージのGパンを脱ぎ捨てれば着替えは簡単だった。
Bは入店の音楽に顔を上げ、目を丸くした。
「あれ?Cさんがジャージなんて珍しいですね」
「ジャージでも男前やろ?」
「はい。とてもお似合いです。」
「天使も今日もキュートやで。」
居酒屋のバイトの帰り、小腹を満たす為に控室でサンドイッチを頬張っていたバンドマン佐藤は舌打ちを隠さず、シフトよりも早めに来て朝食を摂りつつ大学生中村に借りたゲームに勤しむ伝説のフリーター高橋に睨まれた。
決して高橋に喧嘩を売った訳ではないと佐藤が慌てふためき謝る扉の向こう、BとCは楽しげに会話を続ける。
「最近運動不足やから軽くランニングして来たんやけどな。久々に走ったら疲れたわ。クタクタや。」
「そうなんですね。でもCさん、全然疲れてるように見えませんよ。汗も掻いてないし、軽過ぎじゃないです?」
「天使の顔見たら疲れなんてもう吹っ飛んでったで。」
「疲れてなくても喉が渇いたから来たんじゃないんですか?」
「ああ、そうそう。忘れとった。」
「もう。暑くなくても水分摂らずに運動すると身体に悪いから気を付けて下さいね。」
「せやな。天使が心配で夜も眠れやんくならん様に、先選んで来るわ。」
「夜は寝ないですけどね。」
「何それ意味深。」
「別にやらしい意味じゃないです。ほら、さっさと選んで下さい。」
「えー?今日暇そうやでええやん、もう少し話そうや。」
「だから、飲みながらでも良いでしょう?」
「あ、そう言う事。」
裏で佐藤のサンドイッチが無残に噛み砕かれ、胃酸地獄へと落とされた。
少し前に佐藤の弁明を聞く為にイヤホンを外したきりの高橋の耳にも二人の会話は聞こえている。
「ちなみに、どれぐらい走ってきたんですか?」
Bは、スポーツドリンクを嚥下するCの生白い首から何となく目を逸らした。
「んー?家出たんがちょうど0時ぐらいやから、今何時?」
「え、今3時前ですよ!?もしかして0時から今までずっと走ってたんですか!?」
「まあ、ここに来るまで信号以外止まった覚えないでそういう事になるなあ。そんな時間経ってたんか。ほうか。意外とええ運動になったな。」
Cは自分でも驚く程喉が渇いていた様で、その容姿に見合わぬ男らしさで500mlを飲み干した。
それをBはキラキラした目で見上げていた。
「Cさん凄い!今度、僕と一緒に走りませんか!?」
「え、田中君程若くないでおっさんついてけるかどうかめっちゃ不安やわ。」
「CさんがおっさんならAが棺桶に入ってる筈なので大丈夫です!今日もAはソファに踏ん反り返って酒をかっ喰らってました!」
「ああ、そう。俺がおっさんなるの待たずにさっさと燃やされればええのになあ。」
「あ、その気持ちよくわかります。」
「ほなまた今度、一緒に走ろな。」
「はい!」
後日。
裏にいた同僚によってCに密かに付けられた仇名は「体力お化け」。
それが耳に届いた時、既にCと一緒に走っていたBは深く二度頷いた。
蕎麦を注文したのにカツ丼のメガ盛が来たよ by B




