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20代最後のゲイのエッセイ  作者: 赤井獺京


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105円のチョコリングことチョコレートドーナツ。カラースプレー付き

 その穴は見るものを虜にさせる甘い香りを放つ。

 その穴は思わず覗き込みたくなる、程度のいい大きさをしている。

 その穴の周りは茶より黒い液体が固まっている。

 その穴の周りは美味で、穴の開いた意味も分かってくる。


ドーナツに穴があるのはきっと、作っているときっと、我慢できずに食べてしまう。そんな理由からだと思う。


焦げたような茶色い体で円を描く。その真ん中に穴がある。

片面にはカカオ豆を砕いて作られたドロドロの液体が満遍なくどっぷりつけられて、その上にカラフルな人口着色料たっぷりの砂糖がまぶされる。

 不意に食べたそれは僕の舌を幸福にして依存させた。

一度食べただけで。

 チョコリング(カラー)98円 税込み105円。


 なんでもないスーパーに併設しているパン屋さん。中では白い作業着をきたおばさんたちが働いている。休憩時間に何か食べようと不意に出会った。

 この値段であるのに表面のチョコレートは厚くコーティングされてドーナツ自体も美味しい。さらに大人になってもワクワクするカラースプレーを満遍なくまぶしている。


 これはぜひ帰ってからも食べたい。仕事が終わって買って帰ろうとそのパン屋によると、なんと売り切れていた。しかもそのパンだけが、綺麗に無くなっている。商品名の横には、月火限定、と赤字の枠に覆われていた。今日は火曜日、次に食べられるのは来週になる。よだれを抑え込んで一週間を待った。その間に一度だけそのパン屋で別のチョコパンを買ってみた。たしかに美味しい、だけどあの感動は超えられない。

体はあの穴を求めていた。


次の月曜日、仕事は10時半からでパン屋は10時からだった。仕事前に確実に手に入れようとオープンと同時に向かった。だけどお店につくとパンが無い。これから陳列されていくところだったのだ。

 職場はパン屋からすぐだ。20分も待てばでてくるだろう、その考えは悲しくも当たらなかった。


窓の向こうではまさに、チョコリングが製造されている真っ最中だった。ドーナツをチョコレートの沼に付けて上げる。その上にカラースプレーをパラパラと盛大にかける。ふくよかなおばさんは真剣に僕のチョコリングを作っていた。だけど仕事の前には間に合わなかった。

 休憩時間はその日は14時から、そわそわしながら働いた。途中でサボって買いに行ってしまおうかと思った。なんとかその欲を耐えて、すぐにパン屋に向かう。


あった。待ちわびたカラフルな衣装をまとったチョコリングが。


 しかもカラフルなチョコリングだけやけに減っていた。それだけ残りは6個しかなかった。そのうちの4つを買って残りの2つは自分以外のチョコリング信者に残しておいた。


 そうして念願のチョコリングことチョコレートドーナツに再び出会えた。


 105円のチョコリング。

あれは僕以外にも毎週、幸福をもたらしていることだろう


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