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第10話 大地盾哉は招かれる。

 電車に乗ってガタゴトと揺られ、学校がある街に到着して先輩に指示されながら僕は先輩の家に向けて歩き出した。

 先輩の家は住宅街の外れにあるらしく、それを聞きながら先輩をおんぶして道を歩いていた。

 けれど、住宅街からある程度移動してからは白塗りの壁が見えるだけで家らしい家が見つからない。

 いったいどういうことなのだろうか?

「先輩、何処に先輩の家があるんですか? 何かずっと壁を歩いてる気がするんですけど……」

「あ、うん。そうだね……ああ、そういえばどうやって説明すれば良いんだ?」

 僕に背負われた先輩は先ほどから何かに気づいたようで、うんうんと唸りながら僕の話は上の空のようだった。

 うーん、いったいどうしたんだろうか?

 先輩の様子に首を傾げながら、先輩の足が痛まないようにゆっくりと歩くけれど……先輩もやっぱり女性なんだなと思ってしまう。

 背中に感じる二つの柔らかいふくらみとか、両手に伝わるぷにっとした太ももの感触とか……。

 しかも何時もかけている眼鏡を外してるから、鋭い目が露わとなっていて美人という言葉が似合う女性に見えた。

 そう思っていると、視線の先にようやく門らしき物が見えた。

「あ、先輩。何か門が見えましたよ……って、え、今まで見えていた壁ってもしかして塀だったんですか!?」

「え、あ……もう着いたんだね? えっと、門の入口にインターホンがあるから鳴らしてくれないか?」

「わかりました」

 隣の席の友人が言ってた中に、家が名家だと言ってたのを思い出したけれど本当だったのか……。

 そう思いながらインターホンを鳴らしてしばらくするとドタドタという足音が聞こえ、門の内側からひとりの少女が顔を出した。

 白色に近い金髪を左右に大きめのリボンで結ばれたツインテール、切れ長の目の奥に見える琥珀色の瞳、140センチぐらい程の小柄な身長、妖精のようにスラッとした体付き。

 まるで童話の世界から出てきたかのような少女だった。

 ただし服装は半袖の柄物Tシャツとショートパンツだから、現実の存在であると理解できた。

「……どちら様ですか?」

 そんな少女が目を鋭くして睨みつけながら用件を尋ねてきた。

 なんと言うか余計なことを言ったりしたら即座に蹴り飛ばす。そんな剣呑な雰囲気を醸し出す少女へと僕はどう話せば良いのかと少し悩みながら当たり障りの無いように話し掛ける事にした。

「えっと、神林さんの家で……良いんだよね?」

「はい、そうですが……って、えっ!?」

 僕の問い掛けに『何言ってるんだこいつ』という視線で見てきたけれど、ちらりと僕の後ろを見て先輩に気づいたようで驚いた声を上げた。

 さらに先輩の怪我に気づいたようで、さっきよりも鋭い目つきで僕を睨み付けてきた。

「もしかして、くずねえをこんな風にしたのってアンタなの!?」

 目の前の少女は僕が先輩をこんな傷だらけにした犯人と思ったようで、今にも飛びかかりそうな勢いだったけれど先輩のお陰で誤解は免れた。


 そして今、僕は先輩に招かれるまま家の中へとお邪魔していた。

 ……いや、これって家というよりも屋敷だよね?

 そう思いながら屋根はあるけれど吹き曝しの廊下を歩きつつ、広い庭をチラリと見ながら歩く。

「広いですね、先輩の家」

「ああ、そうだね……」

 僕の問い掛けに先ほどまた背負いなおした先輩は心あらずといったように返事を返す。

 うーん……、いったいどうしたんだろうか?

 さっき目の前を歩く少女が言った言葉でも気にしているのだろうか?

『あっ! まさか、この人がくずねえの恋人なわけぇっ!?』

 と少女は先輩に言ってた。多分、妹なのだろう。

 ちなみに僕はその子の問い掛けに対して、先輩後輩なだけだときっぱり断りを入れておいた。

 何がいけなかったのだろうか?

 そう思いつつしばらく歩くと妹さんは応接間であろう部屋の前で立ち止まり、中へと案内する。

 けれど中は居間だったようで畳張りの床の上には絨毯が敷かれており、革張りの数人掛けのソファーが置かれていて生活感があった。

「そこのソファーにくずねえを下ろしてくれる? えっと、名前は?」

「ああ、僕の名前は大地盾哉って言うんだ。よろしくね、えっと……」

「諸葉。くずねえの妹の諸葉よ。よろしくねシュンヤさん」

「あ、うん。よろしく、えっと……諸葉、ちゃん?」

 見た目から判断して、僕は彼女をちゃん付けで呼んだけれど……諸葉ちゃんは嫌そうに顔を顰めた。

 ちゃん付けが慣れていないのかな?

「えっと……イヤなら呼び捨てにさせてもらうけど、良い……かな?」

「……ちゃん付けで構わないわ」

 そう思いつつ、諸葉ちゃんを見ていたけれど悩んだ結果だろう。ちゃん付けは許可された。

 その言葉を聞いてから、僕は先輩をソファーに座らせると近くにあった座布団を使わせてもらい、その上へと座った。

 諸葉ちゃんも僕と同じように座布団に座ると、僕へと視線を向けた。

 なんと言うか値踏みされてるような気がするけど……何故だろう?

「さて、それじゃあどうしてくずねえがこうなったのか聞かせて貰おうじゃないの」

 首を傾げる僕へと諸葉ちゃんはそう言って、話すように促した。

 そんな彼女へと僕は先輩と水族館で遭遇した時から話し始めたのだった。

諸葉葛葉って名前だけど、母親は北欧系だったりします。


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