作戦会議 ④
姉に謎のポーションを飲まされた。
まぁ、見た感じとは違い美味しかった。
絶対に何が入っているのかは聞かないけどね……。
「きららー、もっとちょうだい?」
そしてポーションのあるリビングには、いつのまにかフウちゃんがいて、そのポーションを1人でごくごく飲んでいる。
「それで終わりだ。チビ助はジュース感覚か」
作られたポーションの量は、大型ペットボトル1本分。普通に売ってる水が材料らしい。
これに何かを何かすると青い液体になるらしい。怖すぎるから絶対に聞きません。
そんな丸々1本分あったはずのポーションはなくなった。
「この爽快感はジュースにはない! 他にはまねできない味」
あたしたちがコップ1杯ずつ飲んだ。
いや、あたしは飲まされた。
その残りは全部フウちゃんが飲み干した。
「もっと作ってー」
身体に悪そうな色なんだが、あんなに飲んで大丈夫なんだろうか?
お腹痛くなったりしそうだし、止めれば良かったか? しかし、飲んでる姿も可愛くてさ。
「お前はまったく必要ないだろう……」
「いいじゃん。作ってよー」
あとポーションの効能も、飲んだ後で説明された。飲んだ後で! 事前に教えないところに悪意を感じる。
明日に向けてなので、効能は主に魔法に関するものだ。
一時的な魔力の上昇。魔力の回復力の上昇。などなど含まれているらしい。今のところ実感がないので、らしいとしか言えない。
副作用的なものも無いらしい。これも姉いわく。
効果が出るのに時間がかかるので、時間を逆算して飲まされたようだ。
「材料費が馬鹿にならないから駄目だ。それと、ミヤビちゃんたちにはコレもやろう」
雲母さんの使う、目に痛い色のカードたちがテーブルに置かれる。これはすごいアイテムだとは思う。
しかし、赤いやつとか絶対に使いたくない。バカみたいな爆発が起きる。
「いらないよ。そんな危険物」
「ミヤビちゃんは余計に持っておけよ。魔法無しで、明日どうするんだ?」
「そうだった……」
つまり多めにある緑のカードはあたし用。
道具に頼らなくてはいけないとは。
「後で試しておけよ。それを使用するくらいの力はあるだろうが、自分で魔法を使うのとは違うからな」
だね。いざとなってからじゃ遅いしね。
その時は、責任を取ってフウちゃんに付き合ってもらおう。
「私たちも試して構いませんか?」
「あぁ、そこにあるやつで全部だから残り枚数にだけ気をつけろ。魔力を与えたら火が付き、手を離したら爆発する。そう覚えておけ」
そんな爆弾がこんなにたくさん……。
ここでは間違っても試せないし、本当はこんな爆弾に触りたくもない。
「いいなー、それフウにもちょうだい」
「うっかり部屋の中で爆発しそうだからダメだ。チビ助には触らせるな。もし触ったら、くすぐろうと、撫で回そうと構わない」
「──にゃ!?」
フウちゃんはあたしに対して身構える。
さっきので少しは懲りているらしい。
今の反応からして触らないと思われる。
「じ、じゃあフウは部屋に帰るね? もうくすぐられたくないから」
いつの間にかいて、いつの間にか戻るのだろうと思っていたら、帰りはちゃんと言っていくんだ。
どうやらフウちゃんは見えない時があるらしいね。
「──待ちなさい」
原理は見えない壁と同じ。仕組みは不明だけどそれがフウちゃんの魔法だ。
その方法とか仕組みを喋らせようかとも思うけど、今はせっかくだし。
「みやび……なに? 何もしてないぞ!」
「身構えなくてよろしい。せっかくだから食べたいものを言っていきなさい」
「──おっ? どういう意味?」
「今日の晩ご飯のリクエストだよ。食べたいものがあるなら作るから言いなさい」
こうして、経緯はあれだけど部屋から出てきたのだ。今日はフウちゃんの食べたいものを作ろう。
「本当か! なんでもいいのか?」
「いいよ。ミヤビちゃんに不可能はない」
「それじゃあ、アレ食べたい! あの黄色い……たまごのやつ!」
卵料理は全体的に黄色いと思う。
流石に今のでは分からない。
「分からない。今のじゃわからないよ」
「えー、そうなのか?」
この後、みんなも巻き込んでの卵料理なぞなぞになってしまった。
その結果、判明したフウちゃんが食べたかった卵料理はオムライス。この家では出てこない料理だった。
♢
ハートかな? LOVEかな?
あえて好き。と書くべきか……。
いやいや、そんな直接的なのはダメだな。
ちょっと匂わすくらいのにしないとかな。
「直接、好きです。と書けよ」
「いや、そんな直接的なのは却下だよ。もう少しやんわりと……────!?」
──あたし今なんて言った?!
突然でうっかり返事してしまった。
「なぜここにいる! テーブルに座っていろと言ったではないか!」
現在、志乃ちゃんと亜李栖ちゃんはお風呂。
姉のくれたカードを一足先に試しにいった2人は、何をしたのかススだらけで戻ってきたからだ。
ユッキーは部屋だし、あたしは1人でオムライスを作成していたはずなのに。
「おー、オムライスできてる!」
フウちゃんもいる。
完成したら呼びにいくつもりだったのに。
「チビ助を呼んできたんだよ。そしたらケチャップ持って真剣な顔してるもんだから、何事かと思ったぞ。早く、好きです。と書けよ」
「書くかーーっ! 好きと違う。何回言えば分かるんだ! 黙って席に着いてろ!」
一瞬、そんなふうに思ってしまった……。
そして、またやってしまった。
もっと普通にしなくてはと思っているのに。雲母さんめーー!
「猫被ってないと怖い怖い」
大人しく座ってビール飲んでるもんだと。
前にばかり集中していて接近に気づかなかった。
これもリストバンドが関係ある。勘が鈍い。
「……にゃー?」
「ニャーじゃない! 手洗ってこい!」
「にゃーー!」
あぁ……フウちゃんにも怒鳴ってしまった……。
ごめんよ。オムライスは美味しいから許して。
もう普通にケチャップかけよう。
♢42.5♢
『はーい、みなさんこんにちはー。ゲート運営からアイリちゃんです。今日は〜、みんなに重要なお知らせがあります』
これまでのボスキャラとの戦闘以外では初の動画が公開された。
アプリを利用するプレイヤーたちは、揃ってこの動画を閲覧する。再生回数は瞬く間に伸び、情報はプレイヤーたちで共有される。
『明日7月30日。ゲート稼働から初となるイベントを行います! わー、パチパチ! 細かい詳細はリンクを確認してね?』
開催されるのは、ボスキャラ討伐を促進するためのイベント。プレイヤーたちなら誰もが欲するエッグを、運営が配るというイベント。
『……詳細は見てくれたかな? リンクを確認したみんなは知ってると思うけど、配られるエッグには限りがあります。数は300しか用意できませんでした……。新規さんを増やさないといけないのでこれが限界です。ごめんなさい〜』
先着300人に1つずつ配るのであれば、こんな真似はしない。なら、この誰もが欲するものをどう配るのか?
『そ・こ・で・イベントなのです〜。並んだ順ではイベントにならないし……つまらない。プレイヤーのみなさんで相談して決めても無理だと思うので、手に入れた人のものにしたいと思います!』
フィールドにばら撒かれるエッグを、手に入れたプレイヤーが好きにできる。
1人に1つという制限も、フィールドと同じくルールも存在しない。
『総取りもありなイベントです。奮って参加してくださいね〜。ではでは開始時刻にお待ちしてまーす』
7月30日。午前10時が開始時間。
場所は新宿を囲む6つの区。
プレイヤー誰しもにチャンスがある、ゲームが始まる。




