お昼ごはん ②
粗熱をとったタマネギ。肉。パン粉。牛乳。調味料を合わせてこねる。よく混ざるようにこねる。
「……独特な感触がありますね」
「初めての人の感想だね。よくこねてね」
ハンバーグ作りは、主にユッキーにやってもらっている。3人分だと人数はいらないし、2人で同じ作業をやってもしょうがない。
ユッキーは器用だし、あたしが違う作業をやっていても問題もない。口頭の指示で足りるしね。
「こっちは良しと。ユッキー、そろそろ形にして焼くよ」
にんじんとブロッコリーの付け合わせもこれでいい。これで彩も良くなるでしょう。
「ハンバーグ。あたしたち3人分だけだし大きくしよう!」
いない人たちのことなど知らん!
彼女たちが食べたいと言った時は、また作ればいい。いないやつが悪い。
「雅……その……」
「どったの?」
「姉さんにも食べさせたいなと思って……」
あたしはなんて酷い人間なんだろう。それに対してユッキーは、なんていい子なんだろう。こんな甲斐甲斐しいことを言うなんて感動した!
ユッキーにこんなに想われてるなんて、姉はいいなー。軽くムカつくわ。
「ユッキーの初料理だしいいんじゃない? じゃあ4つにして、1人2つずつやろう」
「丸めるだけですか?」
「うーんとね、見ててね」
タネを4等分して、形を整えて投げる。右から左に投げる! 投げる!
「雅……巫山戯てるんですか?」
「──違うよ?! こうして中の空気を抜くんだよ!」
今、ユッキーが本気だった……。
マイルドになったと思ってたけど、こえぇ──。
「空気ですか。これは貴女の技と同じですか」
「あぁ、そうかもね。このハンバーグのタネみたいに負荷を掛けて空気を抜くところとかね。こう、ぎゅーーっと空気を抜いて固めて、投げたり、押したりするね」
ハンバーグから急に魔法の話になった。ユッキーは意外とバトル好きだね。
「昨日、勝てなかったんですか?」
「勝てなかったよ。万全じゃなかったし、たとえ万全でも勝てたかは分からないけどね。ほら、今はお昼ごはんだよ。ハンバーグ焼くよ!」
「──そうでした」
「空気を抜いたら真ん中を少しへこませる。焼くと膨らむから、予めへこませるんだよ」
今度は事前に意味があることだと説明する。本気のユッキーは恐いからね。
「このくらいですか?」
「そんなもんかな。やりすぎると穴あくし。 ──それじゃ、焼いてみよう!」
片面ずつ焼いて、更にひっくり返して蓋をする。こうして蒸し焼きみたいにすると中まで火が通りやすいし、油もはねない。
「これで何分くらい焼くんでしょう?」
ユッキーが2つ焼いて、あたしも2つ焼いている。
何事も経験だし、姉の分は自分でやりたいと思って。
「焼き色見ながら両面焼いて、中まで火が通っているかを確認。肉汁とか気にしないならこうかな」
あたしの分のハンバーグに串を刺してみせる。こうして、中から肉汁が溢れてくるなら火が通っている。
「こう、ぶくぶく肉汁が溢れてくるなら火が通ってる。片面2分ずつ。そのあと蒸し焼きにして8分くらいかな? 串で確かめるのが大事だよ」
「竹串で刺す」
「竹串でハンバーグを刺すだよ? ミヤビちゃんを刺したらダメだよ?」
ハンバーグを見つめているのは焦げないようにだと思うけど、真剣なユッキーは正直に言ってこわいのです。その竹串で一撃必殺にされそうなくらい。
「ただいま──」
油のパチパチ音に紛れてそう聞こえた。
そして、フライパンと睨めっこしているあたしたちのところに、帰ってきた雲母さんがやってきた。
「帰ってくるの早くない。1日じゃないの?」
「長くなりそうだから帰ってきた」
昨日の一件で出掛けていた姉は、めんどくさくなって帰ってきたらしい。そんなんでいいんだ……。
「──お昼は?」
「食べてない。真っ直ぐ帰ってきたからな」
「それは丁度いい。もうできるよ」
姉は目の前のあたしではなく、フライパンと睨み合っているユッキーが気になるようだ。
「ユウキも作ってるのか……」
「そうだよ。ちなみにアレは雲母さんの分だよ」
「着替えてくる」
──逃げた! ミヤビちゃん監修だから間違いないというのに。まぁ、もうちょい掛かるし。できたら呼びにいこう。
「雅、もういいですよね」
「いいと思う。お皿にあげてソースを作るよ」
「ソースはどうするの?」
「このままのフライパンでやるんだよ。簡単だから大丈夫。同じくやってみて」
頷き、あたしの方のフライパンを見ているユッキー。これでユッキーは1人でもハンバーグを作れるようになっただろう。
ハンバーグを取り出したフライパンに、ケチャップとウスターソース。ちょっとだけ醤油。を加えて少し煮詰める。
「これでソースは完成。ソースも色々あるけど今日はこれでいこう。また、教えてあげるから」
これにてお昼ごはんは完成。
盛り付けもいい感じでした。
──残るは姉による実食です!
♢
お昼ごはんをフウちゃんにはユッキーが持っていき、あたしは姉を呼んできた。
すでにお昼ごはんは並べられていて、逃げるという選択肢はない! なので、姉は黙って席についた。
フウちゃんとは、その内できるなら近日中に、同じテーブルでごはんを食べらるようにしたい。
姿を見せない理由があれだったのでこれ以上、ダメな子にならないようにお節介したいと思う。
その話はまたにして今はハンバーグだ。
雲母さんを見つめるユッキーと、ハンバーグを見つめる雲母さん。
「雅に教えてられてですが私が作りました。食べてみてください……」
ユッキーは自信ないらしい。
「あぁ……」
そして雲母さんは不安らしい。
(ほら、早く食べなよ。感想をまってるよ? ……もちろん、わかってるよね?)
言える感想は1つだけ。たとえ美味しくなかったとしても、美味しいと言わなくてはいけない。初めては大事だから。
「いただきます……」
自分は箸をつけずに姉のことを見ているユッキー。
作った側としては気になるようだ。何と言われるのかとドキドキしている様子は、大変可愛いと思います。
「どう……でしょうか?」
「──おぉ、美味いじゃないか!」
焼くまで味見ということはできないのでしてない。というか、しなくてもわかるし。
それに、ハンバーグで失敗するって焦がすしかないと思う。
……まぁ、口にはすまい。どっちも笑ってるからさ。




