お昼ごはん
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朝食のあと、することないし1日中寝ていることにした。
何故かというと、姉による鍛錬が休みなだけで個人的にやる分にはいいよね? と雲母さんに言ったところ……。
『駄目だ。今日は休みだと言ったら休みだ。寝てないんなら、大人しく寝ろ!』
『──やだ。全然眠たくない!』
『小学生みたいなこと言ってんな! 余計なことした場合、困るのは自分だからな。ユウキの役に立ちたいんだろ? ミヤビちゃんの魔力量じゃ回復にも時間が掛かるんだ。アホみたいな量があるからな! ……それとも、いざという時にガス欠で、ユウキにカッコ悪いところ見せるのか?』
『ぐぬぬぬぬっ──』
それは困る。ユッキーに頼られるあたしでいたい。
むしろそうなりたい。なので、姉に言われた通り休むことにした。
……とはいえ、お昼近くになったところで目が覚めてしまった。なんとか二度寝しようと努力していたんだけど無理。寝よう寝ようと思うほど眠れない。
それに志乃ちゃんも亜李栖ちゃんも一旦帰ってしまったし、起きたところで誰も遊んでくれない。
「スマホでゲームでもやるか。そうしたら眠たくなるかも……いや、テレビか? テレビを観にいこう」
あたしたちの泊まっている姉の、ただあるだけの部屋にはテレビがない。あとユッキーの部屋にもないらしい。この家はリビングに超デカイやつがあるだけなのかも。
そこから推察するに2人はテレビをあまり観ない人みたいだ。勿体ない。
「今の時間だと何やってるかなー」
リモコンでテレビ欄を出せるのはスゲェと思う。
これのおかげで、番組がずっと先までのってる雑誌を読まなくなった。あれの方がたくさんのってるけど、1週間先まで分かればあたしは十分です。
「……あんまり面白そうなのやってないな。土曜日ってこんなんだっけ? 夜はドラマを観るとして」
「雅、もう起きたんですか?」
「ユッキー! そうだよユッキーがいたね。遊ぼう!」
「それは構いませんが、この家には遊ぶような物は何も無いですよ」
そっかー、ユッキーはそんなタイプじゃないし。姉はもっとそんなタイプじゃない。
せっかくデカいテレビがあってもゲーム機もないんじゃ……買おうか? もういっそのこと。
「ユッキー。あのお金はどこかな?」
「親切な人が寄付してくれたというやつですか?」
「──そうそう」
ユッキーにはそう言ってある。間違っても許嫁とか強盗とか知られてはいけないからさ。
「私が預かったままでしたね」
ユッキーが昨日持っていたバックから封筒に入った札束が出てきた。よし、これで資金はある。
本体とソフト。人数分のコントローラ。でいくらだろう? まぁ、封筒の中身が無くなることはあるまい。
ソフトは何がいいかな? レースのあれかな?
なんにしても、みんなで遊べるやつがいいよね。
「これを何に使うんですか?」
「暇だからゲーム機を買おうと思って」
「そんなことに使っていいんですか……」
「いいんだよ。強……──げふん、げふん……何でもない!」
ユッキーには言えない! これでは、この計画は実行できない。
「ゲーム機ですか。フウから借りてきましょうか」
「フウちゃんはゲームやるの?」
「やります。というか、それしかやってるのを見たことがないです。フウの部屋には、ここと同じ大きさのテレビがありますよ」
それはまた……。
フウちゃんが出てこない理由はそれだね。
「いや、もうゲームはいいや……。また暇な時に借りるよ」
「そうですか。そういえば、お昼はなりましたね。どうしましょうか?」
テレビの中の時計が12時になったのにユッキーが気づいたらしい。
お昼ごはんは、朝の残りと常備菜でいいかなと思ってたんだけど、ユッキーにフウちゃんもいるとなると手抜きはできないね。シェフとしては。
「お昼もあたしが作る。ユッキー、何食べたい?」
あっ──、この質問はユッキーを困らせてしまう。
あたしのバカーー! うっかりしてた。
「ハンバーグが食べたいです」
…………えっ?
今、聞き間違えじゃなければハンバーグって言ったよね。好きなものを聞いた時は困らせてしまったのに。
ユッキーはそういうのも覚えてないのかと思ってたのに……。
「無理なら別に構わない──」
「──ミヤビちゃんに無理などない! ひき肉あるし、必要なものはあるから大丈夫だよ! リクエストに驚いただけだから」
「……自分でも驚いています。でも気づいたら、そう口にしていました」
なんだっていい。
食べたいものを言ってくれたならそれで。
「よし、作ろう。ユッキーも手伝ってね?」
「私はやったことないですが……」
「難しくはないから大丈夫。手を洗って台所に集合!」
3人分だしそんなに時間は掛らない。1時間もあれば完成する。
お昼食べたら買い出しに行こうかな。タッパーも欲しいし、夕飯もユッキーに決めさせよう。
♢
「包丁はこう」
まずはタマネギを刻むんだけど、ユッキーは包丁の持ち方がおかしい。
あたしは自由にやればいいとは言わない。ちゃんと教えます。
「こうですか?」
「──違う! なんか違う」
それは暗殺者的な持ち方だと思うな……。
包丁を凶器に使うなら正解かもしれないけど。
「ちょっとごめんね。こうだよ」
背後にまわり手を添えて持ち方を教えてあげる。
この行為に深い意味は無い。
「そして縦と横に切り込みを入れて……こう」
「すごいですね」
「──そう? このくらい普通だよー」
タマネギ刻んですごいと言われるとは!
このまま全部あたしが──、じゃダメなんだよ。ユッキーにやらせないと。
「ユッキーもやってみて」
「切断しないように、皮一枚残すように……」
うーん、気のせいかすごい物騒に聞こえる。
教えた通りに実践してるだけなのにね。
「問題ないと思うけど、手を切らないようにね」
最初はタマネギを炒めて粗熱をとって。
肉とパン粉。塩コショウと牛乳。と合わせて混ぜる。
「ユッキーが刻んでる間に調味料と、調理器具と、お皿と用意して」
「雅、終わりました」
「──はやっ! 目を離したら終わってた」
手品なんだろうか?
それとも高速で微塵切りにされたのか。
実はあの包丁に秘密が……別にどれでもいいや。
「じゃあ次は炒めるから、フライパンに油ひいて」
「炒めるんですか?」
「炒めるとタマネギは甘くなるんです。これもユッキーやってみて」
ユッキーの作業を監督しながら、あたしは付け合わせをその間に用意しよう。
にんじんとブロッコリーかな。にんじんはグラッセにして、ブロッコリーは茹でてソテーだな。
「にんじんはレンジでチンするだけ〜」
「レンジで温めるの?」
「そうだよ。これで柔らかくなるし、砂糖とバターを入れてもう1回チンするだけで、出来上がりなのです」
ブロッコリーは茹でてからオリーブ油で炒める。
──おっ、ユッキーの方がいい感じ。
「ユッキーもういいよ。火止めて」
「次はどうするの?」
「少し置かないとだから、調味料を計ってもらおうかな」
目分量は一人前になってから。
ちゃんと計らないとダメ!
しかし、ユッキーは器用だね。飲み込みが早いや。前はやっていたのかな?
これも何かのキッカケになるといいな。そして、ハンバーグが食べたいか……なんだか男の子みたい。




