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 7月28日

♢36♢


 今朝の朝練はなしだし学校も休み。

 夏休みなんだから休みが当たり前だと思わなくもないけど、休み。


 土日の休みを利用して買い物に行く予定だったけど、ユッキーは昨日帰ってきて気分が悪いと部屋に入っていったままだ。今日は買い物に出掛けるかどうかもあやしい……。

 それにユッキーは昨日から、ご飯も食べてないし心配。 ──しかし、昨日決めたから。色んなものを作ると!


「なので、朝から気合入れて朝食を作ります」


 現在午前5時過ぎ。まだ誰も起きてません。

 眠れなくて気づいたら朝だった。寝てないから回復してない。でも、眠れないんだからしょうがない。


「昨日はパスタだったから〜、今日は和食でいこうかな〜」


 何作ろっかなー。和食かつ朝食。

 玉子焼きは食べたい。味噌汁も欲しい。

 豚肉は昨夜使ったし、肉肉になってしまうのも良くないので魚。


「シャケはない。この家定番のチンするやつもない」


 焼き魚はできないな。魚はあるけどこれは煮魚用……別にいいか? 時間あるし煮魚にしよう。

 野菜も使いたいな。サラダでもいいけど和じゃないし、こっちも煮物がいいね。


 ついでに常備菜も作っとくか。

 緑が足りないので、きゅうりの和え物と、ピーマンの──


「なんだミヤビちゃん。もう起きてんのか?」


 隣のオフィスのドアが開き雲母(きらら)さんが出てきた。姉こそ、もう起きてんのか。


「おはようございます。私は起きているのではなく寝ていないのです」


「昨日、あれだけ暴れたんだから寝ろよ……」


「今日は休みだし別にいいでしょ? 眠たくなったら寝るよ」


 実に夏休みらしい時間の使い方だよね。

 好きな時に寝て、好きな時に起きられるとか! 最高だと思う!


「これが若さってやつか……」


「そして夏休みというやつだよ」


 姉はユッキーの部屋の方を見ている。

 心配なんだろう。わかる。その気持ちとてもわかる。


「ユウキはあれから一度も部屋から出てきてないのか?」


 ユッキーの分の昨夜のパスタはそのままになっている。目につくところにあるし、書き置きもした。気づかないということもないと思う。


「みたいだね。あたしたちが部屋に戻った後も出てこなかったみたい」


「そうか……。あいつも昨日は無理をしたし寝てるならいい。ミヤビちゃんもちゃんと休めよ」


 姉は冷蔵庫から飲み物を取り出し、自分のオフィスに戻っていってしまう。

 そのまま行かせるわけにはいかないので、呼び止める。


「朝ごはん食べないの? 何か手伝ってくれてもいいよ」


「できたら呼んでくれ」


「──何も手伝わない?!」


「シェフに全てお任せします」


 バタンと本当にドアを閉めやがった。

 普通は何かしら手伝うところじゃないの?

 姉には女子力とか無いんだろうか……。


「……最初から誰もいなかった。そう思って調理しよう」


 そして1人で調理した。

 朝食プラス常備菜も沢山作ってやった!


 やっぱり自分の分だけ作るより楽しい。

 食べてくれる人がいるというのは大事なんだね。

 今度、お弁当も作ってみようかな。



 ♢



「おはよう」「おはようございます」


 6時過ぎになり志乃(しの)ちゃんと亜李栖(ありす)ちゃんが起きてきた。2人とも、とても可愛いパジャマを着ている。2人ともね。


「おはよー、もう朝ごはんできるよ」


「──何だこれ、作りすぎじゃないか?!」


(みやび)さん。何時から起きてるんですか?」


 テーブルに並びに並んだ品々を見て、2人は予想通りの反応をする。見たまえ1時間の成果を。


「どう? 頑張ってみました!」


「朝から何やってんだよ……」


「ミヤビちゃんスゴいと褒めろよ!」


 褒められたかったわけではないけどさ。

 志乃ちゃんは少しあたしを褒めてもいいと思う。


「スゴいですね。よくもまあこんなに……」


「亜李栖ちゃん。今のは褒めてるの?」


「褒めてます。そして半分呆れてます。どうするんですか、こんなに」


「だいたい常備菜だから残っていいんだよ。本当はすぐタッパーに入れようと思ったんだけど、この家タッパー無いんだ」


 普段いかにして生活しているのかが分かる。

 チンするやつ生活してるからーー!


「作っちゃったのに?」


「作っちゃったのに。だから今日買いに行くよ」


「雅、それなんだけどな。1回家帰るわ」


 ……志乃ちゃんは、そんなことを言ってはいた。でも、買い物に出掛けるんじゃないの?


「ユウキもだけど、お前もちゃんと休めよ。どうせ寝てないんだろ?」


「明日にしましょう。魔法の鍛錬も休みですし、今日は休みにしましょう」


「うーー、楽しみにしてたのに……」


 昨日は散々になってしまったから気分転換したかったのに。確かにユッキーは心配だけど……。


「明日の朝には戻ってくるからさ」


「分かったよ。駄々をこねても仕方ないしね。朝ごはんは食べていきなよ? せっかく作ったんだから」


「それはもちろんいただきます」


 連泊はマズイのかもしれない。

 2人とも帰る家があるし、家族だっているんだから。


 あたしも、もうここに住もうかな。

 ダメかな? この家の子になりたいな……なんてね!


「何やればいい?」


「いいよ。ご飯と味噌汁よそうだけだし。顔洗ってきなよ」


「雲母さんは?」


「あー、じゃあ呼んできて。あたしはユッキーを呼びにいくから」


 昨日は声を掛けなかった。

 具合悪そうだったし、あたしと同じく魔法の使いすぎだし、辛そうだったから……。

 でも、作ったご飯は食べてほしい。


 起きているのかは分からない。

 ユッキーは気配が薄い。意図してそうしてるんだろうけど、何かプロみたい。殺し屋とかそんな感じ。


「ユッキー。起きてる?」


 ……反応無し。


「朝ごはん作ったんだけど、お腹空かない?」


 …………反応無し。


「今日は朝練も休みだって。あっ、夜もやんないらしいから1日休みだね!」


 ………………反応無し。

 きっと寝てるんだ。無視されているわけじゃない。わけじゃないよね?


「──ユウキ、朝飯だ! 出てこい!」


「──ちょっと!」


 雲母さんがドアをドンドンやって呼びかける。いや、これはちょっと……。


「いつもの冷凍食品とは違うんだ。作った人がいるんだ。出てこないならドアぶち抜くぞ」


「そんなことで壊すなよ!」


「いいんだよ。私の家だ」


 それはそうだけど──。

 この姉は本当にやる。


「やめなよ、こんなんで破壊するものじゃないよ?!」


「雅、大丈夫です」


 姉の脅しに驚いたのかユッキーが部屋から出てきた。昨日と同じ格好だし、なんていうか。


「ごめんなさい。でも、もう大丈夫です」


 ……なんだろう。何か……。


「姉さん、雅、お願いがあります」


「なに! なんだって言ってくれて──」


「──お前、どうしたんだ?」


 嬉しさが先行してしまったけど、雲母さんが言うことも気になる。

 何か、違う……昨日の冷たさとも違うし。


「私はもう一度、あのボスキャラの、あの男の前に行かなくてはならない。どうしても確かめたいことがある」


 ユッキーは決意を秘めた真剣な表情だった。


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