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 ささやかなパーティ

♢59♢


 聖剣の恐怖から逃れ、遅いお昼ごはんである、そうめんを食べさせたのはかなり前のことだ。あれも今はいい思い出……ではないな。


 亜李栖(ありす)ちゃんの、あの聖剣の鞘はヤバい……。

 あの鞘は水圧で剣を発射するという意味不明な物だった。水で斬れ味は増し、抜刀の一撃は遠くのものをも斬り捨てる。あたしは髪の毛を斬られた。


 それだけでも意味不明なのに、剣を発射した後も撃てるんだ。つまり銃的にも使える。自分の魔力を対価にバンバン撃てる。ビームみたいに水が出る。

 水鉄砲といってもいい気もするけど、水鉄砲は突き刺さらないから水鉄砲ではない。とても危ない代物だった。


『ごめんなさい。まだ、いまいち感覚が掴めなくて』


『あたしに刺さるところだったからね。練習する時は周りに気をつけようね。あと、そうめんできてるから食べよう。お腹空いたよね?』


『そうですね。今日は終わりにします』


 そのあと遅いお昼をみんなで食べて、すぐに取り掛かった。下ごしらえして、ちょっと休憩して、時間のかかる料理から作ってした。何の料理かというと──。



 ♢



「それではこれより、ユッキーがボスキャラに勝った記念のパーティを、ささやかながらとり行います! コップもった? みんないるね。では、乾杯!」


 ──そう、パーティ料理だ!


「「──乾杯!」」


 作りに作った料理の数々。全員の食べたいものを聞いて、全員の食べたいものを作った。疲れているけど作った! ユッキーのためだから!


 そしてお祝いといえばケーキ。だが、時間の都合上できてるスポンジに、生クリームとイチゴのせただけになってしまった。申し訳ないので今度は、時間がある時に1から作ります。


「流石はミヤビちゃん。よくもまあ短時間でこれだけ作ったな。見事見事。美味しいぞ」


 リクエストが一品ずつ。あとは足りないところは、ミヤビちゃんのレパートリーから作った。

 10品以上は作った。どれもこの上ない出来である。


 そんなあたしを姉は褒める。照れる……。

 料理を頑張ったかいがあったというものだ。


「褒めるな、褒めるな」


 しかし、謙遜するのが美徳。日本人だから。

 本当はもっと褒めてくれていいけどね。

 最強特権はいかせなかったが、褒められたから良しとしよう。もっとだ。もっと褒め称えて!


「じゃあやめよう」


「──やめないで! もっと褒めて!」


「他に構ってもらえ。私は忙しい。ユウキ、そっちの皿のとって」


 謙遜しただけじゃん、本当は違うんだよ!

 本当は褒めちぎってほしいんだよーー。

 あー、姉は料理に夢中になってしまった……。


「うま、うま、うま──」


 こうなったら近くの人に褒めてもらおう。


「フウちゃん。あたしを褒めてー」


 朝から見送りにも来ずに、ずっと寝ていたらしいフウちゃん。自堕落が極まっているこの子だが、お腹が空いたし、パーティな雰囲気だから部屋から出てきたようだ。


 フォーク片手に、あっちの皿、こっちの皿とパクついている。行儀悪いから叱りたいけど、今はいい。


「みやびは料理上手。一家に一台欲しい。これでおしとやかなら、嫁に出しても恥ずかしくない。意外といいやつ」


「うんうん、それで?」


「うま、うま……美味しいよ?」


「うん。わかってる。それで?」


 ──フウちゃん、もっとあるでしょ。

 いや、言葉のチョイスではなく、スゴい、カッコいい、できる女、可愛い、とかでいいんだよ。

 質より量だよ! あたしはそれを求めているんだよ!


「フウは玉子焼きで忙しいから、他に遊んでもらって」

 

「そんなこと言わないでーー」


 玉子焼きが美味しいのは知ってるから。

 それ作ったのあたしだから!

 あー、フウちゃんも料理に夢中になってしまった。

 ミヤビちゃんの料理が美味しすぎたのか……。


「気を取り直して他の人に……亜李栖ちゃん!」


 自分のリクエストした中華料理を食べている、亜李栖ちゃん。三品は中華にしたからね。中華は作るの全体的に楽なんだ。


(みやび)さん、どうされました?」


「その、料理はどうかなーと思ってね」


 学んだ。直接褒めろと言ってはいけないんだ。

 謙遜。美徳。おしとやか。が大事。


「ええっ、とっても美味しいですわ。全員のリクエストも聞いてくれてありがとうございます」


 美味しいと言ってもらって、こちらこそありがとうございます。いいぞ、この調子だ。


「中でもエビチリが美味しいですわ」


「それなら良かったです。亜李栖ちゃんは意外と辛いの好きだよね」


「……自覚はないですが、そうなんでしょうか?」


「うん。これまでも結構辛いの食べてるの見てるよ? 今日は無いけど麻婆豆腐食べてた時、激辛だったよ?」


 他にも多数の辛いの食べてる。

 そうめんも今日は辛いやつだったし。


「そう言われるとそんな感じがします。私は辛いのが好き……」


「うん? ずっと、そんな感じでしたよ?」


「刺激がいいのか。カッとくる熱さがいいのか。むむむっ……」


 あれーっ? なんか自分の世界に入ってしまったよ。この子は、そういうところはあるけど、何も今じゃなくてもいいんじゃない。


「亜李栖ちゃん?」


「すいません。ちょっと」


 これは話しかけるなということだね。

 自分の中で辛いのが好きというのが、はまっていないようだ。ここでしつこくして、聖剣で真っ二つにされてはかなわないので撤退しよう。


 褒めてくれるか望み薄だけど、志乃(しの)ちゃんのところに行こう。美味しいくらいは言ってくれると思う。


 えーと、志乃ちゃんは、何か飲み物を飲んでいるな。しかし……買ってきたやつに、あんなのあったかな?


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