到達者 ②
♢58♢
今日のお昼というか、もう夕方と言っていい時間になってしまった。外はまだまだ明るいし、夏らしく暑いけどね。
裏東京から強制退去され、帰路についたあたしたち。めんどうなので帰り道に買い物して帰ってきた。ジャリジャリ感を我慢しても買い出ししてから帰ってきたんだ。
もう今日は疲れたから、帰ってから買い物に出歩くのも嫌だったからね。姉はどうしてもお肉を食べたいと言うし。しかし、おかげで一番高いステーキ肉を入手できた。姉は気前がいい。
「今日のお昼は予告通りにそうめんです! お肉は出ません!」
「えー、肉が食べたい」
「これは晩ご飯のやつです。お腹減ったままだと可哀想だし、あたしもお腹減ったから、そうめんは茹でます。そしてこのステーキは夜に焼きます。ユッキーが勝った記念で、晩ご飯は豪華になるので、期待して今はそうめんで我慢してください」
「分かった。それなら、そうめんで我慢しよう」
「では、あたしは調理に取り掛かります」
あたしが一番最初にシャワーを浴びた。みんながシャワーから出てくるまでに、そうめんを用意したいから。
どうせ姉は手伝わないし、ジャリジャリの人たちに手伝いを頼めないので、1人で手早くかつ美味しく作ります!
「夜が肉だからさっぱりとしたやつにしよう。何がいいかなー」
素の麺では手抜きっぽいし、何かいいものは……キムチかな? これならさっぱりと食べられる。
そうめんにキムチで、冷麺ふうにしようかな。つゆは白だしで、具にはサラダチキンもいいかも。
「ところでミヤビちゃん。これからどうするんだ?」
「──そうめんを茹でると言ったでしょ!」
「違う。ゲームの話だ」
なんだそっちか……。
聞いてくるということは、姉はあたしが満足したと思っているのかな?
「ユッキーが続けるなら続けるよ。ついでに世界も守らないとだしね。とりあえず新フィールドが追加されるのが決定しているし、現れるボスキャラは倒していこうと思う。それが強いやつの役目だと思う! ミヤビちゃんが現在最強だから!」
「どうも、いいように進んでいる気がするな……」
「言わんとすることは分からなくもないけど、それすらねじ伏せていくんだよ。でなければ、世界など守れません!」
雲母さんの心配も分かる。
確かに、いいように進んでいる気がする。
誰のかも不明だし、気のせいかもしれないけど。心のどこかで、そんな気がするんだ。
「そうか。なら、ミヤビちゃんが自惚れないように、日々しごかなくては駄目か。間違っても最強などと言えないようにしないとか」
「何故、せっかくの自信をへし折ろうとするの? ミヤビちゃん最強じゃダメなの?」
「駄目だな。それはレベルの話であってステータスの話だ。中身がそれに見合ってないんだ。調子に乗らないようにさせないとな」
自惚れたり、調子に乗ったりしないよ……たぶん。
いくらミヤビちゃん最強なんだとしても……たぶん。あー、たぶんが多いからどっちもするんだ。
志乃ちゃんが特にだけど、みんなの方が、あたしよりあたしのことを分かっているらしい。
「進むのも大事だが、立ち止まって自分に何が出来るのかを確認するのも大事だ。明日はその辺を確認する。今日の実戦はキミたち全員に、それぞれもたらしたものがありそうだからな」
「じゃあ、今日だけはミヤビちゃん最強でいい?」
「そうだな。今日だけはミヤビちゃん最強でいいぞ。その代わり、明日から最強は名乗れなくなるけどな」
あと10時間ちょっとはあたしが最強!
そんでもって明日からは名実共に最強となるべく、姉に教えを乞おう。
「よし! なら今日は最強のあたしの言う事を聞いてね。とりあえず人数分のお皿出して。麺が入るやつね」
残り時間は限られているが最強特権を大いに使わなくては勿体ない。
姉には、調理の手伝いから片付けまでやらせよう。志乃ちゃんと亜李栖ちゃんには最強と褒め称えてもらおう。ユッキーにはフウちゃんにしていたように、ナデナデしてもらおう。
「…………」
まさに最強! 最強特権だね。
今だけは王様と言っていいと思う……。
「──おい、手伝えと言っているんだ! どこにいく! ねぇ、お皿くらい並べてよーー」
──バタン
自分のオフィスに逃げやがった……。
やつは何も手伝う気がない。
最強の言う事を聞く気もだ。
舐められている。全然、最強だと思われてない。
♢
「うっ、今日も本当にそうめんだ……」
シャワーから志乃ちゃんと、ユッキーが帰ってきた。そうめんを見た志乃ちゃんの表情は暗い。
というか、亜李栖ちゃんは?
あと、どうして2人で一緒に戻ってきたの?
まさか……一緒に入ったなんてことはないよね?
「亜李栖は?」
「一緒じゃないの? というか、ユッキーと一緒にシャワーを浴びてきたんじゃないよね?」
「よく分かったな。2人なら1回でいけそうだったからな。ジャンケンして亜李栖が負けて、外で待ってるもんだと思ったら、いなかったんだんだけど。あいつはどこに行ったんだ?」
気づかなかった……。
シャワーには1人ずつ入るとばかり思っていた。
みんなのご飯を用意しなくてはと思いすぎていた! 2人ずつ入って、最強特権で至れり尽くせりにすれば良かった……。
「もしかすると上でしょうか?」
「あー、手に入ったエッグを使いに行ったのか。しょうがない奴だな。しかし、どっちにしたんだろうな」
「様子を見に行きましょう」
これでは最強特権が無いも同然。
残り時間も限られているのに。
なんとか、あたしが最強だと思わせなくては。
このレベル9のミヤビちゃんが最強だと。




