悪足掻き ②
掌に収まるくらいの黒い石が弾ける。それから生み出された、真っ黒な衝撃波が周囲に撒き散らされる。
急に現れた口が、ボスキャラが蓄えた力の全てを爆発に変換しやがった。
「こんな爆破如き! 押さえ込んでやる!」
この攻撃もフィールドの加護とらやでは防げない。
黒い魔法を使う、その際たる者の黒ブタマンには、やつ自身に縛りがあったのだろう。
やつも加護の影響下にあった。だから、殺されてもプレイヤーたちは死ななかった。ゲームオーバーでフィールド外に放り出されるだけだった。
けど、猪子たち黒い魔法を渡されたやつらは、その縛りがなかった。実際、あたし燃やされたし。
語られてないだけで、やつらの被害者も沢山いたはずだ。
そしてユッキーに倒され、死んだ黒ブタマン。
もう、そこに生きていた時の縛りはない。つまり、この爆発は巻き込まれたら死ぬ。何としても防ぎ切らなくては。
「これは、雅さんが黒いのを広がらないようにしているのでしょうか?」
「広がろうする爆発を、触れずに風と空気でサイコロ状に囲っています。しかし……止まっていない。徐々に雅が押されていますね」
いや、押さえ込まなくては!
爆発の規模が分からないし、フィールドには沢山プレイヤーがいる。あっちも巻き込まれたら死ぬからね!
こんなゲームで死人など出してたまるか!
何より、あたしが守ると決めた。この世界。
──なんとしても守らなくては! だがら、こんなところでつまずいていてはダメだ!
「ぐぬぬぬぬ──」
しかし、爆発が強力過ぎる。
これは押さえ込めないかもしれない……。
「──雅! お前、手が……」
広がろうとする衝撃を空気を固めて、力で押さえつけているけど、反動が身体に跳ね返ってきている。上手い解決法もないし、力を抜いたら終わりだ。
そんなことをしているもんだから、反動で指先から裂けてきてちょう痛い。血が止まらない。しかも、まだ全然終わりではないんだなぁ。
「気にするな。それより、みんなは盾から出ないでね。防ぎ切るつもりだけど、万が一があるかもしれないから!」
「雅さん。万が一とは?」
「決まってんじゃん。あたしたちも爆発するよ、これごとね。この距離ではまず助からないと思う。無理だった時は、みんな一緒に死んでね?」
亜李栖ちゃんを怖がらせるつもりもなかったんだけど、何も知らずに死ぬのは嫌だろうから。
「なら、私たちは運命共同体ですね。自分の命を雅には任せておけません」
「……えっ、ユッキー……?」
雅、頑張ってください! って言うところじゃないの? 優しい言葉をあたしは欲しているよ?
「そうだな。雅には任せられないな」
志乃ちゃんまで……。
雅、お前ってヤツは……──頑張れ! って言うところじゃないの……。
「ですわね。雅さんにはお任せできません!」
あ、亜李栖ちゃんも?!
亜李栖ちゃんだけは、頑張ってと言ってくれると思ってたのに。みんなしてヒドイや。あたし泣きそう。
「私たちをどうして頼らないのですか? 1人で無理なら仲間を頼りなさい」
「ユッキー。でも、みんな限界でしょ。あたしは余力があるし、最後何もしてないし……」
「──バカ。死ぬというならあがきます。こんな程度で死ぬつももないですがね。雅が抑えているこれに攻撃を加え力を削ぎます。雅が抑えらる時間は多くはない。やりますよ」
ユッキー。あたしが悪かったよ。
志乃ちゃんも亜李栖ちゃんも、同じ気持ちだったんだね。
いざとなると駄目だ。どこまで頼ったらいいのか。どこから頼っていいのか、まだ分かんない。
でも、今はいいんだよね?
「みんなぁ……。ミヤビちゃんを助けて! ヘルプミー!」
「まったく……」「最初から頼ってください!」
「2人ともキツイでしょうが、魔法を帯びた攻撃でお願いします。そして可能な限り攻撃したら、盾に戻ってください。茜を使います」
「ごめんよー。助けてーー」
♢
「あら、情けないこと。雅らしくない。いえ、弱さを見せるというところが大事なのかしらね。その辺どうなの?」
「ミヤビちゃんは頼ったじゃないか。あの子にしたら成長だよ。それに、あれは弱さではない。決してな」
「ふーん。貴女も大変ねぇ、私は子守なんて進んでやらないわ」
「いい歳して何を……」
「──歳の話はやめて! 雲母。殺すわよ? ……こほん。まあ、貴女が来たのなら私は帰るわ。爆発に巻き込まれて死ぬとか嫌だし」
「どうぞご自由に。アンタこそ、優姫に手を出したら殺すからな。消えるならさっさと消えろ!」
「貴女も昔から元気な子よねぇ。それじゃあまたね。あの子をよろしくねー」
♢
志乃ちゃんの籠手によるロケットパンチ。
亜李栖ちゃんの聖剣による鈍器攻撃。
ユッキーの分身の術による4人同時攻撃。
それぞれが黒い爆破へと注がれる。
これにより爆発の威力は確実に弱くなっている。
「雅。まだいけますか?」
「──もうちょっといける!」
本当はもう無理だけど、もうちょっと頑張る!
ユッキーにいいとこを見せるチャンス!
「……シノ。今のは本当でしょうか?」
「──嘘だ! もう退避だ。亜李栖、雅を引っ張ってこい!」
痩せ我慢がバレた……。
あたしをユッキーが信じてないし、志乃ちゃんは心を読めるらしい。そして亜李栖ちゃんによって、志乃ちゃんの盾の後ろへと運ばれていく。
「もう! この状況でなんで嘘を言うんですか?!」
「ごめんなさい」
「命がかかってんだろうが! カッコつけんな!」
「痛い! ……ごめんなさい」
デコピンされた。
そのあと2人からため息が聞こえる。
「ふふっ……雅、痩せ我慢してもかっこよくは見えませんよ?」
「じゃあやめる。ところで、ユッキーは何で笑ってるのさ?」
「さあ、どうしてでしょう? 雅、手を離しなさい」
再び抜かれる。朱色の刀。
だけど、今度は火柱は上がらない。
熱くもない。あったかい感じ。
「百火繚乱──」
刀から熱が放出される直前、今まさに弾けようとする黒い塊が地面ごと上昇していく。下から吹き上がる水柱によって。
これ凄いパワーだ。上に向けて、花火よりずっと高くまで水柱が吹き上がる。
「これは……」
「亜李栖ちゃん?」
聖剣かと思ったら、こんなこと出来んならやってよと思ったら、違った。
何故だか雲母さんが現れた。出番がなかったからかな?
「よくやった。しかし、痩せ我慢はユウキも同じだな。無理しすぎだ。ミヤビちゃんは手を離していいぞ? あの高くなら地上への被害もあるまい」
「姉さん……」
「「「雲母さん?!」」」
「ほら、呆けてないで全員衝撃に備えろ。爆破するぞ?」
なんて言ってるうちに空中で大爆発が起きた。




