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噂の動物屋敷  作者: 鵠っち
納葵音子~エピローグ~
46/50

納葵音子

 今話タイトルは最終話「納葵音子」です。

「あした早く起きたら、悠くんのお母さんから料理を教えてもらえることになったわ」

 部屋に戻った呉葉は、嬉しそうに言った。

 ちなみに部屋割りだが、悠が一人、呉葉と夕日は自分の部屋、未来也と美樹で、大人たちは積もる話があると同じ部屋になった。

「はい。分かりました」

 そんなことを悠の母が伝えに来たのが、午前0時を回ろうかという頃。まだ誰も寝ておらず、呉葉と夕日の部屋で雑談中であった。

 完全なる大人の都合だが、誰も不都合ではない。というより、各々が安心して眠れる部屋割りである。

「まあ、そんなわけで、あたしらはもう寝るから。あんたらも早く寝なよ」

 そんなところで、とりあえずは解散になるのだった。

 呉葉と夕日。

「今日は少し緊張したけど、楽しかったわね、夕日ちゃん」

「そうだね、呉葉ちゃん」

「おやすみ」

「ん、おやすみ」

 未来也と美樹。

(ねえ、未来也様?)

(なに? 美樹)

(今日は楽しい一日でしたね)

(うん。でも、まさか、納葵音子が呉葉と夕日の母親だったとはね)

(ええ。それは私もびっくりしました。十四歳、と仰っていましたか。私達も、その……)

(いや、まだ早いし、約束、覚えてるだろ?)

(もちろん。忘れるはずがないじゃないですか)

 誰にも聞かれていない、二人っきりの秘密の会話である。

 大人たちの部屋では。

「祈裡さん」

「なんですか、音子ちゃん?」

「永井さんの説明にもありましたが、あのあとお会いできなかったのは、別の病院に移ったからなんです。ずっと、お会いしたいと思ってました」

 祈裡の表情を窺いながら、話を続ける音子。

「私の父は、治らない病気でした。当時幼かった私は、ただ頭の病気としか知らされていなくて、それが、いったいどのような病気だったのかは分からないのですが、とにかく、治すことができない病気だと、教えられていました」

 ここでいったん言葉を切る音子。今度は、祈裡、一樹、遙の表情を一通り眺めてから、話を続けた。

「私が十歳のときでした。私は両親に連れられ『動物屋敷』に泊まりました。翌朝目覚めてみると、両親はいませんでした。消えてしまったのを知っていましたが、というよりも、目撃してしまっていましたが、私は帰ってくることを疑いませんでした。夜になって、朝になって、次の日も、またその次の日も。

 那子、という少女に出会ったのは……少女といっても、外見の年齢では当時の私よりもお姉さんでしたが、その最初の夜でした。私によく似た女の子で、一時的に、名子に身体を預けることで、消滅を免れたんです」

 今まで誰にも、呉葉や夕日にも話していなかった話。祈裡に聞いてもらいたい。ただそれだけで、唐突に話始めたのだ。

「一週間経った日に、何の気なしに外に出てみると、二人分の白骨遺体がありました。それが両親だと直感した私は、とにかく、急いで逃げることにしたんです。あれじゃあ、殺人犯みたいだから。

 数日後のニュースで、両親の遺体が『音木(・・)』邸ではないところ《・・・・・・・・》で見つかったと聞いてとても驚きました。『音木』邸が現れるのは週一回。正午から十二時間のみ。そんなことを知らなかった私は、ある日たまたま見つけた音木邸で、那子に教えてもらったんです。内側にいる限りずっとそこにあるけど、時間外に一旦外に出ると、一週間入れなくなると。

 両親を失った私は途方に暮れていましたが、幸い今の半分くらいの収入があったんですよ。それでなんとか学校に……子供たちにと……生きてこられたんです」

 最期には目に涙を溜めて語る音子を抱きしめる祈裡。一樹も、遙も、なんと声を掛けるべきか分からなかった。

 最後の部分はずっと音子の語りでしたね。これはこれで中途半端に思う方もいるでしょうが、この物語はこれにて完結です。長らく(およそ二年)の連載、お付き合いいただき真にありがとうございます。

 それでは、またの機会に。



 なお、本日午後7時には、簡易な設定集的なものを投稿する予定なので、よろしければそちらにも目を通していただけると、解決する疑問がいくつかあると思います。本編中には語らなかった微妙な設定が混じっていますが、全てお読みいただいた方には意味が分かると思います。

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