夕輝と音子
今話タイトルは「夕輝と音子」です。
遙が話し終わったところで、しばらく沈黙が続いた。その中で、音子が口を開いた。
「貴方達は、那子かその写真を見たかしら?」
「その部屋には入らないようにしていたので、誰も見ていません」
音子の問いに夕日が答えた。
「あら、そうなの。そのうち呉葉さんに持たせるから、学校で見てちょうだい。私は那子とそっくりだったのよ。だからかしらね? 私は生き残ったわ。それから、毎週『音木』の家に行くようになった。たまに誰か来ると、その人は明け方になると突然、まるで煙のように消えていった。そうして、次の週には、家の前に骨が転がっているのよ。初めは驚いたわ。でも、泣いたりはしなかった。知らない人、一切の会話はなかったから。三年くらい経った。夏休みだったわ。また誰かが来たの。つい出来心でその人の様子を見に行ったわ。なにやら、転がっている骨を観察しはじめたの。そこで私は、これもほんのいたずらのつもりで、猫の鳴き真似をしたのよ。その人は目を眇めてこっちを見たわ。暗いんですもの当たり前ね。那子が話しかけると『納葵音子かい?』って言うのよ。それから、その辺に散らばっている骨を見て、足りないとか、変なところについてるとか、言い出したの。彼は、夏休みで友人との賭けに負けて、噂を調べに来たって言ったわ。なんとなく、那子がお財布を抜いてみると、近くの医大の学生証が入っていて驚いたわ。だって、そのときはちょうど試験期間中で、遊ぶ暇なんてないはずですからね。もう少し詳しく聞いてみると、薬大に入るために休学してるって。だから適当に時間を作れたのね。しばらく話をしていると、那子はだんだん彼のことが好きになった。一目ぼれっていうのかしら? 彼が帰るときになって、寂しくなった。その頃には、私も彼のことが好きになっていたわ。でも、引き止めることはできない。だって、そうしたら彼も死んでしまうでしょ? でも那子は言ったの。『泊まって行って』って。でも彼は、『今日はもう帰るけど、一週間後にまた来る』って約束してくれた。一週間うきうきしすぎて、簡単なミスを連発してしまって大変だったのよ。二週間後になってしまったけど、彼は約束どおりに来てくれたわ。そうして、一夜だけ、本当に一夜だけ、私達は結ばれたの。次の朝には、今までの人たちみたいに消えてしまったわ。さっきの話だと、彼を見つけたのは永井さんだったわけね。呉葉と夕日の名前は、彼の『呉夕輝』って名前から付けたものよ」
音子は思い出しながら語った。そして、この話は呉葉と夕日も驚いていた。今回、初めて聞いたことがあったからだ。
「要は、呉葉ちゃんと夕日くんは、この子が十四か十五のときに生まれた子だよ」
「それと永井さん、夕輝は少年ではなく青年だったと、何度言えば分かってもらえるんですか」
「そんなのどっちでもいいじゃないか。私からすると、どっちにしても子供だよ。納葵ちゃんもね」
音子の頭をぽ優しくんぽんと叩きながら、遙が言った。
ほぼ音子の台詞でしたね。いやぁ、長かった。
ぶっちゃけプロローグを見返せば同じ内容があります。三話分が凝縮されてしまったという……。まあ、音子の口から語らせたかったというわけで。
次話(予定)タイトルは「幼馴染」です。
幼馴染とくれば、……はい、未来也と美樹しかいませんね。あ、遙と祈裡もそうなのかな? まあ、未来也と美樹です。




