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噂の動物屋敷  作者: 鵠っち
日常~動物屋敷へ~
16/50

遅刻

 今話タイトルは「遅刻」です。


 今話から本編ラストです。

 夏休み。八月のある日。

「みんな、ごめんなさい。朝寝してしまって」

「……寝坊したのは僕だ。すまない」

 二人が遅れたことによって時刻は……それでもまだ朝の八時半だ。呉葉と夕日は四、五時間で悠が諦めるのを祈るばかりである。

「もう二時間も歩き回ってるのに、どこにも見当たらないじゃない。悠くん、本当にあるの? そのお屋敷」

 美樹は若干……、いや大分疲れてきている。真夏の日差しの下、ほぼ休憩なしで歩き回っているのだ。誰だって疲れる。

「悠、たしか家近いんだったよな」

 未来也は、休憩にしないか? という意味合いで言ったのだが……、

「未来也、俺の家に来てもみんなで遊べるものなんてないよ。トランプすらないからな、ウチには」

 悠には伝わらなかったようだ。未来也の後ろでは夕日と美樹が苦笑していて、前では呉葉が失笑している。……先頭の悠は何も気付いていない。

「悠、ちょっと振り返ってみろ。美樹と夕日なんかとっくにばててるんだが」

 そこで、ようやく呉葉が声を上げて笑い出した。……暑さでやられてしまったのだろうか、と悠は的外れなことを思った。

「あ、ああ、すまない。こんなに時間がかかるとは思わなくて。見込みが甘かったよ。

 ええと、二時間ということはそろそろお昼だね。俺の家についたら、お母さんになにか頼んでみるよ」

「それはいいわね! 悠くんのお母様のお料理は大好きよ!」

「ふぅん。悠くんのお母様は、料理がお上手なの?」

 美樹は「なんとなく覚えがある味だ」と思うのだが、このときはまだ誰にも分からないことだ。

「うん。姉様の料理よりおいしいかも」

「ユ・ウ・ヒ?」

 呉葉の声が冷たい。

「お姉さんっていうと、呉葉ちゃんはお料理が上手なの?」

「違うよ。音子さんっていうお姉さんがいるんだよ」

「ユ・ウ・く・ん?」

 夕日のときと同じく、呉葉の声が冷たい。

「あれ? 言っちゃマズかった?」

 悠がものすごく焦っている。

「二人とも、ちょっとこっちにいらっしゃい」

 呉葉の声がさらに冷たくなっている。二人は美樹たちから見えないように、電柱の陰に連れて行かれた。が、その電柱が遠い。そのことに「田舎だなぁ~」と思った未来也と美樹である。

「とりあえずは夕日から。分かってるわよね」

「はい」

「よろしい。

 それから悠くん。先に言わなかったあたしたちが悪いんだけど、お姉様のことは秘密にしておいて?」

「うん、分かったよ。でも、理由を聞いてもいいのかな?」

「ごめんなさい。お姉様のことだから、あたしたちの独断で決めるわけにはいかないの。いきなり詰め寄ったりして悪かったわ」

「そういうことなら仕方ないか。分かったよ。もう聞かない」

「ごめんね悠くん。僕が余計なことを言ったばかりに」

「それから、お母様に聞いてもだめよ。あの方もなにか知っているかもしれないけど……」

 呉葉たちが戻ってきたところで、未来也が尋ねた。

「ネコっていう名前、どこかで聞いたことがあるようで考えていたんだが、もしかして呉葉たちのお姉さんって、声優の『納葵音子』なのか?」

「未来也くんって、随分マニアックだったのね……。

 分かっちゃったならしょうがないか。その通りよ。お姉様は動物の声でお馴染みの『納葵音子』よ。よく分かったわね」

「マニアック、か……。まあ、そうかもな。ネコという名前で苗字が納葵ならほかにいないだろう。

 お姉さんが高校生くらいのときの記事を見たことがあるよ。二人ともよく似てるな」

「似ていて当たり前よ。きょうだいなんだから。

 それから、美樹ちゃんと未来也くんにもお願いしたいことがあるのだけど、いいかしら?」

「内緒にして欲しいってことだろ? 心配しなくても、よその家の事情をぺらぺら喋るようなことはしないよ」

 未来也の、この「言わなくても分かってくれる」感じが、呉葉は結構好ましく思っているが、夕日的には「見透かされている」と思っている。

「そういうことなら、私も両親とキミちゃんくらいしか話し相手がいないから、心配しなくてもいいわ」

「ありがとう、二人とも。……あ、あとサインが欲しいとか言っても無理だからね」

「大丈夫。僕も美樹も芸能人のサインに興味はないからな」

「ええ。私にはキミちゃんがいればそれでいいわ」

 どんなところでもラブラブな未来也と美樹である。

 いつでもどこでも……というわけではないですが、未来也美樹の二人はあまり変わりませんね。


 ええと、「お姉様のことは秘密に」の説明。

 深い意味はありません。ただ、騙しておくのが辛いので、できれば他人に言いたくないということです。


 あとは、「マニアックなのね」の説明。

 納葵音子は有名ではありますが、『なきねこ』と読める人は極端に少ない、という設定です。

 未来也がちゃんと読めるのには理由があります。「お姉さんが高校生くらいのときの記事をみたことがある」ですが、その記事がでたのは……?

 というフリで分かるでしょうか?

 まだ登場していない人が関係しています。


 半月以上あいてしまって、すいません。タイトルが決まらなかっただけです。

 次話タイトルもまだ決まっていないので、タイトルが思いつき次第、投稿したいと思います。2013.4.20 17:20

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