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噂の動物屋敷  作者: 鵠っち
日常~動物屋敷へ~
14/50

音子の訪問

 今話タイトルは「音子の訪問」です。復習回です。

 永井さんって、あのときの人です。


 時刻はおやつ時。しかし、そろそろ帰らないと、帰宅途中の悠と鉢合わせしてしまうかもしれない。

「夕日~! 呉葉~!」

 案の定、途中でばったり会ってしまった。時刻は既に夕方である。

「あら? 悠さん、久しぶりね」

「お姉さん、お久しぶりです。今日はどちらに行かれていたんですか?」

 悠も音子を呉葉と夕日の姉だと思い込まされている。

「……私が以前住んでいた家がこの近くにあるから、ついでに寄ってみたのよ。そういえば、この子達とどこかに行くそうね。気をつけてね。

 そうだ、お家に伺ってもよろしいかしら? 久しぶりにお母様にもお会いしたいわ」

「ええ、いいですよ」

 どこに行ったのかについては適当にはぐらかされたが、悠はそのことに気付いていない。

「お姉さま、お時間は大丈夫なのですか?」

「大丈夫よ、夕日ちゃん。そんなことよりも、あなたたちも挨拶なさい」

「あ、ごめんなさい、悠くん」

「ごめん悠くん。今日は学校でなにかあった?」

「う~ん、……なにもないよ」

 話をしている間に悠の家に着いた。田舎の町なので大きな家が多いが、永井家はそれほど大きくはない。

「お母さん! 納葵さんが来たよー! さあ、上がってください」

「あら、納葵ちゃん。久しぶりだねぇ」

 まったく予想していなかった音子の訪問に、若干引きつってしまったが、まあ、しょうがないだろう。

「ご無沙汰しています、永井さん。すぐそこで悠さんにお会いして、参らせていただくことになりました。突然の訪問で失礼します」

「いやいや、こっちこそ大したもてなしはできないから、あまり気にしないでおくれ。

 それより、夕食を一緒にどうだい? なんでか売っていたから買ったんだけど、ちょといとばかし早い気がしないでもないが秋刀魚のたたきだよ。音子ちゃん、好きだったろう?」

「ありがとうございます! 喜んで!」

「お姉さま、本当にお魚がお好きですよね」

「く、呉葉ちゃん!」

「悠くん、ついでだから誘ってくれた『お屋敷』について詳しく教えてくれないかな?」

 恥ずかしがっている音子の不穏な空気を敏感に感じ取って、慌てて話題を変える夕日。帰ったら呉葉はグチグチと言われるに違いない。

「お母さん、何か知らない? お姉さんも昔この辺りに住んでいたんですよね。何か知りませんか?」

 悠の母と音子は視線を合わせて少しためらっている。先に口を開いたのは音子だ。

「中で一晩明かそうとすると骨になって見つかる、というお屋敷ですよね。昔から噂だけはあって、実際に骨が見つかったっていうのも聞いたことはあるけど。……本当にあるのかしら?

 お母様は、私が生まれるよりも前からここにいらっしゃるから、……何かご存知ではありまんか?」

「私はその屋敷があるっていう近くで見つけたことがあるよ」

 ここで一旦話を気ってさり気なく音子と目配せした。続きが気になる、という表情を作っていたので続けることにする。

「その屋敷は私が生まれるよか何十年も前に取り壊されて、昔は『動物屋敷』なんて呼ばれて気味悪がられていたそうだ。

 私が見つけたっていう少年はね、その前の……前の週か。やってきて、私に聞いたのさ。『この辺で、夜になると動物の鳴き声がするお屋敷を知りませんか』ってね。『三日前に見た』なんて言うもんだからね、教えてやったのさ。怖いくらいに本気な目をしていたからね。

 私が言ったのはまず、泊まると骨になって見つかること。その屋敷は晩年、十四、五の娘が一人で暮らしていたらしいということ。その何年か前だったかに……」

「決まった日の決まった時間帯にしか姿を見せないとも聞いたことがありますね」

 音子は悠の母を遮って、睨むように見つめている。

「……私が知ってるのはこんなところかね」

「お母さん、なにを言いかけたの?」

「お母様? それは子どもに聞かせる話ではないと思いますが?」

 音子が言外に「黙ってろ」と言うので、それ以上言わないことにした。

「……そうだね。これはちときついかね。ってことで、今のは聞かなかったことにしてちょうだい」

「なにかあったとか?」

「悠さん、お母様が仰ったでしょう。聞かなかったことになさい」

 音子の口調が不自然に冷たかったので、これは本当に聞かせられない内容だと判断した悠は、それ以上聞くことができなくなってしまった」


「ご飯ができたよ。こっちにいらっしゃい」

 停滞していた重苦しい空気は、その一言で流されていった。

 久しぶりのにぎやかな食卓に、悠の母は楽しそうだ。

「……お姉さま、本当においしそうに食べますね」

「本当においしいんですもの!」

 音子のその幸せそうな笑顔に、悠の母は満足気である。

「はっはっはっ。そう言ってもらえると作り甲斐もあるってもんだ。さあさ音子ちゃん、たんとお食べ」

「はいっ! ありがとうございます!」

 子どもっぽい、と思ったのは一人だけではあるまい。実際、悠の母からはいくつになっても子ども扱いである。

 検索してみたところ、サンマ漁は7月の始め辺りから解禁されるようです。

 で、今話は6月終わりから7月の頭辺り。「ちょいとばかし早い気がする」というのは、ようするに出始めの時期ですね。


 そして、後書きや活動報告で気になるように仕向けたつもりになってる『永井さん』ですが、既出の登場人物でした。「プロローグ(3/3) 音木という家」の終わりのほうで出てきた『主婦』です。


 恒例にしたいけどなぜかできない、『こんな設定でした』。

・音子の好物は、魚や鳥など猫が好きなイメージのもの全般。焼き魚よりも生魚のほうが好きだったりします。そして、それを指摘されるのは恥ずかしい……。


 次話タイトル(予定)は「音子のこだわり」

 どんなこだわりでしょうか? 音子が悠の母のちょっとした一言に噛み付きます。2013.3.30 16:25

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