第一章「崩壊した楽園」
流矢が目を覚ました時、世界は静かだった。
だがそれは平穏ではなく、すべてが終わった後の静けさだった。
視界に広がっていたのは、崩れた建物と、動かなくなった人々の姿、そしてモンスターの残骸だった。
ついさっきまで確かにあったはずの「日常」は、そこにはもう存在していなかった。
「彩菜……?」
呼びかけても、返事はない。
もう一度叫んでも、ただ空虚な音だけが返ってくる。
流矢は理解できないまま立ち尽くした。
世界そのものが壊れてしまったような感覚だけが残っている。
その頃、外部では事態の対応が進んでいた。
聖庁の代表・白峰聖は、この異常事態を他の楽園へは伏せるよう命令を下す。
一方、ブレイブギルドの代表・東雲隼人は、その判断に強く反発していた。
しかしそれらの決定は、まだ流矢には届かない。
彼にとって重要なのはただ一つ、彩菜の行方だけだった。
やがて流矢は豪堂大牙に救助され、病院へと運ばれる。
そこには同じように崩壊から逃れた人々が集まり、誰もが恐怖と混乱の中にいた。
大牙の話によれば、楽園があった場所には巨大な「大穴」が開き、そこへ多くの人々が巻き込まれたという。
彩菜もその中にいた可能性が高い。
さらに大穴の内部には、高ランクのモンスターが多数存在しているという情報も語られる。
それは人類がまだ直面したことのない領域だった。
病院の外では、生き残った者たちが現実を受け入れきれずに泣き崩れていた。
わずか一つの崩壊で、多くの命と日常が消え去っていた。
その事実はやがて数字として明らかになる。
かつて五十万人いた人口のうち、十万人以上が失われていた。
流矢はベッドの上で、その現実を静かに受け止めるしかなかった。
そして翌日。
ブレイブギルドによる大穴調査の中で、彩菜のものと思われるリボンが発見される。
その瞬間、流矢の中で何かが決まる。
失ったかもしれない存在を取り戻すため、
そしてこの崩壊の真実を知るために。
流矢はブレイブギルドと共に、大穴へと向かうことを選んだ。
崩壊した世界の中心へ。




