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「偽物の天才魔術師」はやがて最強に至る 〜第二の人生で天才に囲まれた俺は、天才の一芸に勝つために千芸を修めて生き残る〜  作者: 空楓 鈴/単細胞
第10章 魔大陸紀行〜黒き騎士の誕生〜

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第235話 密林を越えて⑭

 結構期間が空いたので、⑫から見直すと話の流れを思い出しやすいかと思います。

 


『死ね! フィセントマぁぁぁぁぁレぇぇぇぇぇッ!!!』


『ふんっ、行儀の悪い坊やだねぇっ!!!』


 アルクの咆哮と共に唸った漆黒の大剣と、女戦士長の振り抜いた蛮刀の衝突により発生した衝撃波が地を抉り、そして森を震わせる。

 たかが斬り合いで発生するには些か出鱈目なその破壊規模に敵味方問わず驚愕する中、当の二人は知らぬ顔で文字通りに火花を散らす鍔迫り合いを繰り広げる。


『部外者が一体何の用さ、まさかアタイに抱かれに来たのかい?』


『抱かれるのはお前だ! ただし首だけなッ!』


『言うじゃないかい! 気に入っ……たッッッ!!!』


『っ……!?!??』


 アルクの威勢がツボにハマった戦士長は歯を剥き出して獣のような笑みを見せると、受け止めていたアルクの大剣をぐんぐんと押し返し始め、やがてアルクが膝をついて蛮刀を受け止めるような体勢に逆転した。


 比類なき刻印魔術の才能を持つアルクによる身体強化魔術は、ディンをしてルーデルにも届きうる怪力を発揮するとされていた。


「まずいッ!」


 そんなアルクに正面から力で押している戦士長を前に、だれよりも速くセコウが助太刀に入ろうと動く。


『させんよ』


ーー土槍アースランサーーー


「ッ!?」


 しかし、セコウの進行上の地面に出現した魔法陣から飛び出した無数の岩の槍がその進行を阻む。


『やれやれまったく……いつからミーミルはジャランダラの駒になったんだい?』


 直後、術者である戦士長の後ろに控えていた老婆がカラカラ笑いながら、岩槍を前に一瞬の硬直を見せたセコウ目掛けて追撃の岩礫を放つ。


『駒? 決め付けは辞めていただきたいな、ご婦人ッ!』


 余裕を持って礫を剣で打ち落とすセコウであったが、老婆の正確無比な狙いと熟練を思わせる魔術の発動速度を前にその頰には冷や汗が伝う。

 無理にでもアルクの戦闘に介入して代表戦士と老婆の魔術を同時に捌きながら戦うか、あるいは老婆とその護衛を先に全員で叩くか。セコウはその二択を迫られた。


 しかし、老婆とその護衛も半端な戦力ではないことから、後者はアルク1人にしばらく代表戦士の攻撃を凌がせることになり不安要素が多い。

 ディンの「犠牲を出さない」という目標に沿うなら、乱戦に持ち込む前者の策を取ることが比較的マシなのかもしれないと、セコウの中で思考が堂々巡りになりかけるたその時——


『セコウさんとスイレンさんはアルク君の所へ! こちらは私とタイラーさんで倒しますッ!!!』


 足を止めていたセコウの脇をアセリアの操る漆黒の骸骨人形が駆け抜け、前に出た老婆の護衛と斬り結ぶ。


「アセリア!?」


『無茶なのです!!!』


『いいえ! 目的の一つは戦士長の殺害です、ならばそちらを最優先で戦力を分けるべきです!』


「し、しかし君では——』


『出来ないことを請け負ったりしません! だから早く!』


『……大丈夫なんだな?』


『もう、今までの私じゃありませんので』


『アセリアすごくカッコ良いのです!』


『ッ……頼んだぞッ!』


 アセリアの揺るがぬ様子を前に、少しの迷いを見せながらセコウは意を決してスイレンと共にアルクの元へと走り出す。


『行かせると思うかい』


『っ! 「反魔の呪詛アンチマジック」!!!』


 当然、老婆はそれを見過ごすはずもなく、その行手を阻もうと2人の進行状の空間に魔法陣を展開するが、アセリアの魔術が更にそれを発動ごと阻止してみせる。


『!……どうやら、ただの小娘じゃないみたいだ——ねぇ!』


 詠唱破棄による呪詛上級魔術という、魔術師の中でも上澄みと言える芸当を披露した少女を前に、その弛んだ頰を吊り上げてさらなる魔術を放とうとする老婆。


『アセリア殿! 自分が守ります!』


 そんな老婆からただならぬ攻撃の気配を察知したタイラーは、すぐさまアセリアを庇うように前に立ち、案の定老婆からは凄まじい威力の「岩砲弾」が放たれる。


(この威力はまずい……!)


 通った大地を抉るほどの岩塊、タイラーはその破壊力から直感的に死を悟るが……


『不要です!』


 豪速で迫った「死」そのものは、タイラーではなく、さらに彼の前に被さった重騎士人形によって受け止められた。


『あなたは骸骨人形スケルトンと一緒に護衛の戦士達を!』


『おお……り、了解でありま、す……!』


 凄まじい衝撃波と轟音の後、一直線に抉れた大地の終端に堂々と立っている重騎士人形を前に、タイラーは圧倒されながら老婆の護衛達へと標的を切り替えて駆け出した。


 彼の名誉のために言うならば、老婆の魔術を正面から受け止められるアセリアの人形が異常なのであって、ましてやそんなモノを非戦闘員の少女が操れるなど、誰が想像できようか。


『いやだねぇ、最近の若いのはそんな人形おもちゃ頼りの防御なのかい』


『主語が大きいですよ。私は勝つために何でも使うというだけです』


 斬り結ぶ戦士達の輪の中、一瞬の静寂を経て二人の魔術師は再びぶつかり合うのだった。


ーーー

【アルク視点】

 

『なんだいなんだい! その筋肉は飾りかい!?』


『ッ……!』


 僕は戦闘経験こそ殆どないが、スピードとパワーには自信があった。

 それだけに、以前ならこうして僕よりも小さい体格でありながら僕を力で押し返すフィセントマーレの女戦士に狼狽していただろう。


『待っててアルク! 今助けるのです!』


 情けないことに一撃も入れられないどころか、相手に押し切られまいと耐えているうちに、スイレンとセコウ(?)がこちらへと駆けつけたことで、女戦士は一度俺から距離を取った。


『いいよ、3人纏めて相手してあげるさ』


 改めて構えを取る女戦士長を前に、2人が僕を庇うようにして前に出る。


 援軍が来たというのにも関わらず、僕の中での危機感は高まるばかりだ。

 それというのも、先ほどスイレンが発した一言にある。

 

 「助ける」、「助ける」だってさ……


 その何気ない言葉に、やっぱり僕はどれだけ頑張っても、スイレンから見れば助けられる、守られるべき対象なんだなと再認識する。

 昔からずっと変わらずに、僕はアル坊のままなんだろう。


『ならばお言葉に甘えて……はぁッ!!!』


 最初に動いたのはセコウ、目にも止まらぬ……と言うほどでは無いが、無駄を削ぎ落としたお手本のような足捌きで女戦士長と距離を詰めてその一太刀を浴びせる。


『ふん! 男のくせに軟い剣じゃない——ッ!?』


 そんな一撃を余裕綽々と受け止めた女戦士長であったが、直後にその表情が険しくなった。


『体がッ、重い……アンタ何をしたんだいッ!!』


『ちょっとした呪詛を、かけさせてもらった』


 どうやら亜人ディンが言っていた「呪詛魔術をノータイムで発動できる剣」の能力が発動したようだ。厳密には別のカラクリがあるらしいが……話が長そうだと斬り捨てたのを少し後悔する。


『気に入らないね! 男のくせに猪口才な——ッ!!』


『隙ありなのですッ!!』


 目に見えて鈍くなった女戦士長とセコウの剣戟の合間に、スイレンの鋭い援護の一撃が加わる。


『〜〜ッ!!!』


 「鈍化の呪詛」をその身に受けて尚、戦士長は2人の猛攻を凌いでいるが、流石にその表情には苦悶が浮かんでいる。

 あと一息で崩せそうだ。ここで僕が加われば……いいや、僕があの戦いについていけるのか? 剣術もマトモに知らない僕では返って邪魔になるだけかもしれない、それで形成が逆転してしまえば意味がない……


 そんな恐れに駆られて足を止めていた一瞬のうちに、状況は動いた。


『しゃらくさいねぇッッッ!!!』


 3者が激しく入り乱れる中、押され気味だった戦士長の咆哮に呼応するように、無空から突如として出現した岩の杭がスイレンとセコウに襲いかかった。


『ッ!!』

『ぎょえッ!?』


 慌てて距離を取る2人、負傷は避けたがせっかくの良い流れを強引に断ち切られた。


『ほらほら避けなぁッ!!』


 続く戦士長の追撃。

 彼女が何かを投げるような動作を見せた直後に、俺達の頭上に巨石が出現する。

 最初に受けた奇襲に似ている攻撃だ。発生が読みにくく、ギリギリで避けるしかない……!


『ッッ!』


『攻撃の仕組みがわかれば、やりようはあるのだがな!』


『……では、2分欲しいのです! そうすれば勝てるのです!!!』


 そう言い切ると、いきなり地面に膝をついて祈りの体勢に入るスイレン。

 同時に、再び頭上に出現した巨石が無防備な彼女を襲う。


『ッ!? らぁッッッ!!!』


 突然祈りの体勢に入ったことに困惑して出遅れたセコウに変わり、爆炎を纏った大剣でその巨石を粉砕する。


 先ほどまで重かった足が、嘘のように軽かった。


 ……そうだ。僕はスイレンの隣に立つんじゃない、スイレンを守るために剣を取ったんだ。

 届かなさ過ぎて忘れていた……でも、今ならそれが出来る。いや、僕の力ではきっと今しか出来ない!


『俺がこいつを止める! スイレンを守ってくれッ!!!』


『あ、ああ! 了解した!!!!!!』


 一歩出遅れていたセコウに背中越しにそう伝え、僕はゆっくりとこちらに向かってくる女戦士長の前に立ち塞がった。


『通りたくば俺を殺すんだな』

  

『ははっ! いいじゃないか! こういうのはわかりやすくて大好きだよッ!!!』


 原理不明の攻撃からスイレンを守る役目は、僕より対応力のあるセコウに任せる。

 単純なことしかできない俺は、本体の方を二分間足止めすることに専念する。

 たとえ死んでも、だ。


『アタシはフィセントマーレの戦士長、《唸る森》のヒュッポリテーだ。生きてたなら抱いてやる』


『アルク……いや、「トンガス」のアルケイデスだ。死ぬ前に覚えておけ』


 視線が絡み、特に示し合わせたわけでもなく互いに名乗る。

 そして武器を構え、僕達は再びぶつかり合うのだった。

 お久しぶりぶりぶり大根ですわ。

 そしてごめんなさい、忙しくて全然更新できてませんでした。これで食っていけりゃあいいんですが、そうもいかないので私も社会の歯車になる準備に勤しんでいたのです。本当に、これで、食っていけたらなと、どれほど思うことか。筆が遅いから無理? ……それは言わねえ約束ですよ旦那ぁ。


 次回更新は明日です。キリのいいところまでは一気に駆け抜けます。

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