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第四十話:ケモ娘はお昼ご飯のようです。

馬車を買ったあと、一度月夜の光亭に行った。


「女将さん、こんにちわ。」


「あら、カケルくんじゃない。昨日待ってたのに帰ってこないならそう言って欲しかったわ。」


「すみません、いろいろありまして。」


店の中を掃き掃除していた女将さんに声をかける。

女将さんは後ろにいるアニーを少しみた後に、


「こんな小さな子が尽くしてくれてるのにさらに手を出すなんて、いつか刺されるわよ?」


「そんなんじゃないですって。」


さすがにハーレムルートを目指してバッドエンドなどイヤだ。

最終回、ボードしか映らなくなるぞ。


「部屋、あと2日でしたっけ?」


「ええ、そうよ。」


「では、あと1週間分お願いできますか?それと朝食と夕食はこちらで用意することにするのでなしでいいですか?」


「それなら、銀貨21枚ね。」


皮袋から銀貨21枚を渡す。

10枚づつ入るケースを買ってから銀貨の扱いがぐっと楽になったよなぁ。


「あの部屋でいいの?3人だとベットが狭いんじゃないかしら。」


銀貨を受け取りながら女将さんがそう言う。


「だから、そんなんじゃないですって。」


「それならいいのだけれど」


カラカラと笑いながら女将さんは奥へと入っていった。


部屋に入り、ダンジョンに戻るとミルがまだポーションを作っていた。

ミルの背中にはずらっとかなりの数のポーションがある。


「すごいなこれ…。 お前ずっとポーション作ってたのか?」


「たくさんあるの…。」


「全てを導く漆黒の王の我が手にかかれば造作もないこと。」


無い胸を張りドヤ顔で自慢する。


「たぶん300本くらいあるわよ。」


「我が鍛錬にもなり、世を廻す力も得れる。 それに我はこういったものが好きなのだ。」


最初は堂々と言っていたが、最後にボソッと呟く。

地味な物作りが好きって王の器どこいったよ。


鍋に完成したポーションが光り輝きこれから瓶に移す作業のようだ。

心なしか俺が作るよりも光っている気がする。


「でも、助かるよ。 お前のためにもなったなら教えた甲斐があるよ。」


「それにしてもよかったの? ポーションって一子相伝とかじゃないの?」


「この作り方な。 ダンジョンの魔法で出したんだよ。」


「そんなこともできるの!?」


「ああ、紙にポーションの作り方が書かれ…あっ。」


紙が出せることをアニーに知られてしまった。


「もしかしてそれ本も出せたりしないのっ!?」


やっぱりだ。

妙に子供っぽいところがあるのに、こういうところは目敏いんだよな。


「お願いっ! たまにでいいから本を出してくれない!? おねがいぃ!」


両手を合わせ頭を下げてくる。

そこまでするか…。


「お前、ツリーハウスの4階層まで追加して図書館作ったばかりじゃないか。」


そう、引越し途中に本の場所を決めるときに頼まれたのだ。

もし部屋を増やせるのならどうしても欲しいと。


「そ、それは…それというか…。」


目を泳がせるアニー。


「とりあえず後でな。 魔力が溜まってからだ。」


「わかったわ! 楽しみにしてるわねっ!」


軽くメニューで本を見てみたが、いろんな種類の本がある。

安いのは10ポイントから、高いと500ポイントなどもある。

500ポイントの本の題名とか呪われそうなタイトルだった。これ手にすると意識乗っ取られるヤツだ。


「カケルよ、我は腹が減ったぞ。」


完成したポーションを瓶に詰める作業を途中から参加したアコと一緒に終わらせたミルがそう声をかける。


「あれ、お昼はお前が作るんじゃなかったのか?」


「その前に我が腹を鎮める供物を捧げよ。」


軽く腹に入るものが欲しいのか?


「しょうがないなぁ。」


みんなの分の飲み物やビスケットなどのお菓子を出す。

ビスケット、一袋3ポイントと少し高い。


「ぱさぱさ…あんまり甘くない。」


真っ先にビスケットに飛びついたミルがそう呟く。

日本のものと比べるなよ…。


「文句言うなら作ればいいだろ?」


「砂糖は高く、茶色く泥に塗れた曲者よ。ああ、愛しの禁断の白き粉。 平民には叶わぬ儚き夢よ。」


なぜか演技掛ってそういう。


「白き粉言うな。 危ない香りしかしないぞそれ。」


「ここなら安いわよ。」


「そういえばダンジョンで取れるんだっけ?」


「そうよ。 この国は魔石以外にも国外にいろいろ輸出しているのよ。」


「それは誠か?」


ミルの目の色が変わった気がする。


「ええ、砂糖なら一袋銀貨1枚とかで買えるわよ。」


「それに俺が出すことだってできるしな。」


あまり無駄遣いはしたくないが、それでお菓子になるのなら、現物を出すよりは節約できるだろう。


「我は魅惑の術具を所望すっ!」


「料理道具が欲しいってことか?」


「然り。」


大仰に頷くミル。


「よくわかるわね、その言葉。」


「アコ、さっぱりなの。 マスターの国の言葉の表現、難しいの。」


アコとアニーが2人でそんなことを言っている。


「こいつがおかしいだけだ。 他はみんないたって普通だ。」


地球へのあらぬ偏見の根を1つ潰した。


「このあとポーションを売りに行ったり他にも用事があるから商会に行く予定だけど、一緒に行くか? そこなら料理道具もあるんじゃないかな?」


「同行しようではないか。」


ワクワクと行った感じで応えるミル。


「それよりも、早くお昼ご飯にしないか? そろそろおなか空いてきたぞ。」


「アコもお腹空いたの。」


お昼時もそろそろ過ぎる頃だ。

ビスケットを摘んでいるとはいえ、お腹は空いてくる。


「半刻ほど悠久を微睡むがいい。」


そう言ってカッコよくポーズを決めながらくるひとまわりキッチンへと向かうミル。


「か、かっこいいの。」


アコが眼をキラキラさせていた。


「アコはああならないでくれよ…。」


中二病のアコなど…あれ、それはそれで可愛いのでは。

いやいや、ダメだ。


「ダメなの?」


アコが首を傾げ聞いてくる。


「ダメだ。」


「ダメね。」


アニーと2人で頷いた。


その後、テーブルに座りアニーのツリーハウス改造妄想案を聞いてお昼ご飯完成まで待っていた。


「待たせたな。 宴の時間だっ!」


香ばしい匂いのするほくほくと湯気のたった大皿を抱えたミルがキッチンから飛び出してくる。

飛び出した勢いのまま倒れそうになっていてヒヤッとした。

手にしているのは豚の生姜焼きかな?

材料は俺が渡したしなんとなくわかっていたけど。

キングボアの肉を早く消化したいんだよね。


久しぶりに食べた日本食は生姜焼きよりもご飯が強すぎた。

やはり日本人はこれがなくてはな。

これに味噌汁があれば完璧なんだが、出汁がないんだよな。

カツオくんとワカメちゃん、どこにいるの?


「すごくおいしいのっ!」


「このお米って不思議な味ね。」


アコとアニーがすごい食欲を発揮しておかわりをしていた。


「我が漆黒の魔力、人を魅了し導く罪なチカラ。」


ミルが満足そうにポーズを決めていた。

ポーズを決めるのはいいけどお箸を置いてからにしなさい。

現金な話だがこれからこれが食べれると思うとミルを仲間にしてよかったなと思う。

そんなお昼ご飯だった。


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