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第三十一話:ケモ娘は本が好きなようです。

キングボア亭や探求者ギルドのある商業区の真ん中より少し貴族区よりの場所に本屋はあった。

小さなこじんまりとした店だった。


「あまり大きくはないけど、本は結構あるのよ。」


アニーが少し誇らしげにそう言った。


「本の匂いがするのっ!」


ワクワクと言う擬音が聞こえてきそうなアコの手を取り、我が物顔で店に入るアニーについて行く。


「本がいっぱいなのっ!」


アコが興奮気味に叫ぶ。


「すごいでしょう?私もいつかこんな本に囲まれた部屋で暮らしたいものだわ。」


この世界で高級品な本がこれだけあるのはなかなかすごいことなのだろう。

あまり広くない店内に3列ほどの天井まで届く本棚が奥まで続いており、一番奥にカウンターがある。

正直、このくらいならあまり驚かないな。なんて言うのはやはり野暮なんだろう。


「いらっしゃいアニーちゃん、お友達かい?」


奥のカウンターに座っていた老婆が店番をしていた。

あの位置なら動かなくても店内が全て見回せるな。


「ええ、今日は彼がメルリア大陸の地図を欲しがってたから紹介しにきたのよ。」


軽く会釈をする。


「地図かい?そりゃぁありがたいねぇ。ちょっと待ってな。」


老婆は笑って店の中に入り、丸められた紙束が入った箱を持ってきた。


「今ある地図はこれくらいさね。少し高いけど新しいこれなんかオススメだよ。」


箱の中から1つ取り出し見せてくれる。

メルリア大陸がかなり細かく書かれている。

小さな町や道なども書かれていてわかりやすい。


「これはいくらですか?」


「銀貨65枚だよ。」


少し高い気もする。


「もうちょいやすいのはどんな感じです?」


「それならこれさね。これで銀貨45枚だよ。」


箱の中からもう一枚地図を出す。

先ほどの地図より大きさも少し小さく、見比べると小さな町や道など書かれてない場所もあるな。

これなら少し高くても先ほどの方が良さそうだ。


「銀貨65枚のやつを頼む。」


「あいよ。」


そばにアコとアニーがいなくなっていたので軽く探していたら2人で本を見て何やら盛り上がっていた。

どうやら恋愛譚を書いた本を手にとって見ているらしい。

アニーが、これは読んだこれは読んだことない、あれはラストが良かった、主人公がダメだったと語っている。

アコもふむふむと興味ありげに頷いている。


「この本…」


アコが一冊の本を見つけ、アニーに見せている。

アニーも読んだことないものらしい。


「それが気になるのか?」


声をかけると、本を渡してくる。

なるほど、冒険者の人間と獣人が冒険を通して恋に落ちる話らしい。


「じゃあ、これも買うか。」


「い、いいのっ!?」


アコの顔が笑顔になるが、すぐに少し暗くなる。


「心配するなって、本くらい買ってもどうってことないよ。」


現在の所持金は金貨30枚は超えている。ほとんどアコのダンジョンに置いてるが。


「いいわねぇ、アコちゃんは。私もドーンっと本を買ってくれる殿方を見つけたいものだわ。」


横からアニーが羨ましそうにアコを見る。


「アニーも一冊なら選んでいいぞ。アコに文字を読み書きできるように教えてもらったお礼だ。」


元から何かプレゼントをあげるつもりだった。本をあげるのは決定していたけどどんな本を読んでいるか読んでないかわからないから選びかねていたんだよね。


「ほんとにっ!?ありがとっ!!」


アニーが抱きついてくる。


「なっ、ちょっ!」


「すぐ選んでくる!」


アニーがすぐに離れあれでもないこれでもないと本を選んでいる。


「マスター…」


後ろを向くとアコが少し怒ったようにこちらを見ていた。


「こ、これは不可抗力だっ」


むーっと頬を膨らませるアコだが、


「しょうがないからこれで許してあげるのっ」


前からむぎゅうっと抱きついてきた。なんだこれお持ち帰りで3セットほどください。ポテトもつけて。


そのあとアニーの本選びが終わるまでアコと2人で本を色々と見ていたりしたが、アニーが本を決め終わるのは1時間後だった。

ちなみに最後の選択は俺がした。アニーを待っていたらさらに時間がかかりそうだったからだ。

それでも新しい本が嬉しいのか店を出た後もしきりに笑っていた。


そのあとは資料室で地図を見ながら旅路を決めることにした。


「いいのか?帰ってすぐにでも本を読みたかったんじゃないか?」


冗談めかしてアニーに問いかける。


「このくらい手伝うわよ。」


少し照れた風にそっけなくそう言うアニー。


「まず、乗合馬車に乗るにしても、自分で馬車を調達するにしてもルートは3つよ。南西にむかって西側の海岸をぐるっと回る街道と、北に向かう街道、そして南東に少しよる街道よ。」


「フランベール魔導団にいくつもりだから、南西のルートはなしだな。となるとこの北の街道か南東になる街道か。」


この北にいく街道と南東にいく街道なぜか結構近い位置にあるんだよな。

どちらも終着点がメルリア大森林手前になる


「この街道はなんで分かれているのに最後は同じ場所で付くんだ?」


「それはこの南東の街道はラーカイル王国の2番目の都市メルデンがあるのよ。昔はそこが主な交易街道だったのだけれど、50年ほど前に山をくり抜き北へまっすぐいける街道ができたのよ。」


「山をくり抜き・・・」


「魔道士や魔道具を使っても5年ほどかかったらしいわ。その街道ができてからはわざわざ迂回してメルデンへいかなくても、メルリア大森林とメルリア山の麓にある城塞都市サートルへいけるようになったの。もし陸路でフランベール魔導団までいくならこの城塞都市を通らないといけないわね。」


「ほかは山で囲まれて通れないのか。」


「ええ、山道もなくはないらしいけれどもメルリア大森林を通るくらい厳しいらしいわよ。そこを通った話が伝記になるくらいだもの。」


「それは遠慮したいな。なら、今のところはこの北の街道を通るのがよさげだな。」


「そうね、北の街道のトンネルを通るには通行料がかかるらしいけれども、ポンと本を買えるあなたには関係ないものね。」


「あとは移動手段だなぁ。」


「私は馬車を取り扱ってる人なんてしらないけど、お母さんにいないか聞いておくわ。」


「助かる。でも、馬車を買ったとしても御者などを雇わないと。アコもできないだろうし。」


「馬車はわからないの。ごめんなさいなの。」


アコがしょぼんとする。耳も少しペタンと垂れている。


「アコが気にすることはないさ。普通はできないから。」


「私はできるわよ。」


アニーがさも当然というような顔をする。


「この国の人はみんなできたりするのか?」


まさか・・・。


「そんなわけないじゃない。た、たまたま習う環境があったから習っていたことがあるだけよ。」


すこし恥ずかしそうにアニーがそういう。

恥ずかしい要素があっただろうか?


「とりあえずそこはおいおい考えておくよ。まだ時間はあるしな。」


そろそろ陽が傾き始める頃だ。


「明日はダンジョンへいくのよね?」


「その予定だ。」


「じゃあ、夕方なんて空いてないかしら?お礼というわけじゃないけど、長旅用の服なんかももってないんでしょ?」


そういえば旅にでるといってもダンジョンの能力でいろいろ出せるので準備がおろそかになっていたな。

アルの店でもなにか便利そうなのとかないか聞いてみるか。


「それは助かる、お願いできるか?」


「お安い御用よ。」


「それじゃあ今日は帰る事にするよ。」


「そうしましょうか。」


三人で席をたち、資料室をあとにする。

探求者ギルド前で別れ際に、


「本、ありがとねっ」


アニーの言葉は街の喧騒に溶け込み、返事をする前にアニーは人ごみに飲まれ見えなくなってしまった。


簡易的な地図を書こうと思ったのですが難しく断念。もし時間が取れるようなら再挑戦してみるつもりです。

こういうときデジタル絵などかけたらなっと強く思います。

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