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第二十話:ケモ娘は着せ替え人形になったようです。

「じゃあ、私の家に行くわね。」


あのあと、アコと奢ってもらった串焼きを食べてアニーのところへ来ていた。


思ったより探求者ギルドの近くだった。


名がブラウン商会。

商会の娘だったのか…


「おかえりアニーちゃん。そちらが噂の子?」


閉店中の店の扉を開け中に入る。

若い…アニーと同じ赤髪だがこちらは綺麗なストレートだ。

そしてでかい。実っている。

アニーは父親似なのかな。


「ええ、アコちゃんっていうのよ。」


「あ、あの、はじめまして」


「はじめまして、私はアウラ・ブラウンよ」


「俺は橘カケルだ。よろしくな。」


「こちらこそ、アニーちゃんをよろしくね」


「お母さん!」


アニーが慌てている。こういう姿は普段見れないから新鮮だ。


「今日はアコの服を何セットか欲しいんだ。俺は女物の服とか何を買えばいいのかよくわからなくて。ダンジョンとかにも行ける動きやすそうなのだといいんだが…」


「アコちゃんを可愛くすればいいのね」


アウラさんがニッコリと笑う。


「銀貨10枚くらいだそうと思ってるけど、それでどのくらい買えるかな?」


「それだけあれば中古なら3セットは買えるわよ。」


「じゃあ、それでたのむ」


「アコちゃんあっちでお着替えしましょうか。可愛くしてあげるわよ〜。」


アニーとアウラさんがアコを連れて行く。

アコの外套を受け取り入り口近くの椅子に座ってしばらく待つ。


奥から聞こえるアニーとアウラさんのきゃっきゃっした声をBGMにウトウトし始める。


「ま、マスター?」


おっと、寝てしまっていたようだ。

目の前にいるアコを見てびっくりした。


「かわいい…」


俺が買った素っ気ないシャツとは比べものにならなかった。

薄い水色のワンピースに、太もも半分くらいの短パンでおみ足が眩しい。

ニーソックスに挟まれて見える範囲が限定されているのもポイントが高い。

ていうか、ニーソックスあるんだな…

日本にあるようなものよりはすこしごわごわしている気がするけど。


「かわいいでしょ、もうちょっとふわっとしたのも良かったんだけどダンジョン用っていうから動きやすい方にしたの。」


「すごいでしょ、これぇ。尻尾用の穴も空いてるのよ。」


そういってアウラさんがアニーのワンピースをめくってお尻を見せてくる。


「あ、うっ」


恥ずかしがってアコの尻尾が丸まる。恥ずかしくなると丸まるのか…。


「他にも似たようなものをいくらか見繕ったわ。」


そういって何着かの洋服を渡して来た。


「アコちゃん可愛かったし、銀貨8枚でいいわよ。」


「それは助かる。これからも何かあったら利用させてもらうよ。」


「ふふっ、その時はもっと可愛くしてあげるから」


「やっぱりアコちゃんかわいいから着せ替えるの楽しかったわ。」


「ありがとなの」


アコがお礼を言ってくる。かわいいなぁ。


「アコが可愛くなると俺も嬉しいからな。」


「アコちゃんは幸せ者ね、アニーちゃんもはやくお相手を見つけてくれると嬉しいのに」


「お母さんはもう下がっててよ!カケル、もう暗くなるから気をつけて戻るのよ。アコちゃんにもしものことがあったら大変なんだからっ!」


なんかアニーのキャラ、崩れてないか…?


「ああ、アコはちゃんと守るよ。」


「あらあら、アニーが気にいるのもわかるわぁ」


「お母さん!」


「これ、銀貨8枚です。またよろしくお願いします。」


アウラさんに代金を渡す。


「うんうん、またいつでも来てね、アニーもきっと喜ぶから。」


「はい、では、また。」


「アコちゃんまた明日ね。」


「またあしたなの!」


ご機嫌なアコの手を取りお店を出る。

どこか遠くから聞こえてくる喧騒の中、アコと2人で夜道を歩く。


「マスター」


「どうした、アコ。」


「アコね、集落にいるころからね、人間は嘘つきで怖い人たちだって教わって来たの。確かにアコをさらったりする怖い人もいるけど、でもね、マスターやアニーたちのようにね、優しい人たちもいるんだよって、集落に教えてあげたい。だから、争わなくてもいいんだよって、教えてあげたいの。」


アコが珍しく喋る。


「うん。きっと、みんな仲良くなれるよ。」


「マスターもそう思う?」


「ああ、これからみんなが仲良く暮らせるようになるといいもんな。」


そのためには、まずこの国を変えなきゃな。

ははっ、異世界に飛ばされて、国を変えるとか。主人公のようだ。

悪くない。

俺の今の夢はアコと幸せに暮らすことだ。

アコのためなら、アコが幸せになるのなら、国の1つや2つ、変えてみてもいいかもな。

空に浮かぶ月を見ながらそんなことを思う。


この世界…月が2つあるのな…。


「アコはみんなが仲良しになったらなにがしたい?」


「ごはんたべたい。美味しいご飯をみんなでたべるの!」


アコらしい答えだ。


「じゃあ、みんなで仲良くなれるように、これから頑張らなきゃ。」


「アコ、頑張るの!」


月明かりに照らされたアコの笑顔はとても綺麗だった。



      *



宿に戻ると女将にサンドイッチをいただいた。スープはもう無くなったらしい。

部屋でアコと一緒にご飯を食べる。

オレンジジュースを渡しながら、


「アコ、明日はダンジョンに行くつもりだけど大丈夫そうか?」


「いけるの!がんばるのっ!」


「ポーション作りは明後日にして、一日置きにダンジョンとポーション作りをしていこう。」


「わかったの。」


そこまで大きなサンドイッチではないのですぐになくなる。


「アコ、先に水浴びして来ていいぞ。」


「あ、ありがとうなの」


出て来た扉を開けてあげて、アコがダンジョンの中へ入って行く。


そういえばどうして俺達が作ったポーションは光り輝いていたのだろう。

たしか、魔力のある場所などや魔力を込めながらやると完成度が上がるとか書かれてた気がするけどやっぱそれかな。

ライルの街の薬師は魔力を込めることができなくて、エルフは魔力を込めることができるから、エルフのポーションは光り輝く、とかだったのだろうか。

魔力のある場所というのはそれだけで意味のあることなのかな?

他にもできることはないだろうか。

ブルーポーションは明日のダンジョンでポイントを稼いだ後に製造書を出すつもりだし。

他にはないだろうか…?

魔力といえばやっぱり魔法か?

そういえば魔法を覚えられるスクロールとかはないのだろうか。

メニューを調べてみる。

ないなぁ…魔法を出せるようになるアイテムならあるが、魔法を覚えるアイテムはない。

まあ、ここら辺は明日アニーに聞いてみよう。


「ただいまなの」


アコが戻ってくる。

今日買った新しい服を着ている。白色の生地にオレンジのリボンがかわいらしい、ネグリジェというのだっけ?あんまり透けてない方だ。


「じゃあ、俺も水浴びしてくるから」


「わかったの」


そういって先にベットに入るアコを背に水浴びに向かう。


水浴びをしながら思うが、この水って魔力水なんだよな。

こうして普通に飲んだらしてるけど問題ないのかな?

まあ、この数日問題がなかったし大丈夫なのか?

魔力を過剰に摂取したら大変なことになるとかないよな?

これも明日アニーに聞いてみるか。


何かを聞ける人がいるってこんなに大事なことだったんだな、こんな世界に飛ばされてしみじみ思うよ。


水浴びを終え、アコの寝ているベットに入る。


「マスター…」


アコがギュッと抱きついてくる。

優しくアコの頭を撫でてあげる。

スリスリとオデコを擦り付けてくる。

なんだこの可愛い生き物は。


頭を撫でられて安心しているのかうつらうつらとしているアコ。

明日はダンジョンだし、色々とギュッと我慢して眠りにつくことにした。

隣で眠るアコの温かさのおかげか、すんなりと眠りにつけた。

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