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お公家の事情 火にも水にもわがあらなくに  作者: 英じゅの
黄色いおにぎりと練りきりの猫
123/164

Sleeping Murder 3

深瀬と、若い原田という刑事に以前と同じ警察署で長い聴取を受けて、愛がアパートに戻って来たのは、ほとんど夜明け前だった。警察は、遺体の状況から、同一犯人、またはグループによる犯行としていて、梶原とジェームズの関係性を調べようとしているらしいが、愛には、二人に共通するところなど思い浮かぶはずがない。ジェームズは大会社の役員らしいが、中身は、いつも誰か太鼓持ちに、ちやほやしてもらわないと気の済まない小物だったし、梶原は、スタイルだけは良かったが、あいつも中身は、松原や栗田への嫉妬をこじらせ労働意欲をなくしてヒモになった小物だった。


「共通点は小物」


取調室で、悩んだ末に、愛がそう言うと、原田はあからさまに、ムッとしていたが、深瀬には何故かウケていた。


「まぁ、それは違う意味では大正解かもしれんが、今回のヤマでは、我々が求めている回答にはならんぞ。それが殺害された理由になるんなら、この国の上層部の半分くらいは次のターゲットになるだろ」


あの刑事は洒落が分かる。愛の言ったことを否定せずに笑ってくれた。ただ、もういい加減にしてほしい。それでなくとも、神出鬼没の麻生がいるというのに、刑事にまで目をつけられたら、寝る時間もなくなる。ユミリーと別れてから、ズキズキと痛んでいた頭が、より一層、ひどくなる気がした。


「確か、頭痛薬がまだ残っていたはず」


ハンドバッグを開けると、あの小銃があった。瞬間、麻生に対峙したときの恐怖が甦り、慌てて、ハンドバッグを閉めて、ベッドに潜り込む。こんなの、普通じゃない。もう嫌だ、何でこんな目に合うんだろう。何が悪かったのか、いつ歯車が狂ったのか、どこで道を間違えたのか分からない。もう嫌だ。全部、何もかも嫌だ。


その日、高村愛は、布団の中で丸まって大泣きした。


翌朝、目が覚めると、脱水状態が加わって頭痛が更に酷くなっていた。ハンドバッグから、銃を目に入れないように頭痛薬の入った箱を取り出すと、小野鷹邑の名刺も一緒に出て来た。


「先輩は何かあったら、いつでも連絡していいって言った」


携帯を見るともう昼過ぎだった。名刺の裏に書かれていた番号に電話をすると、すぐに鷹邑の明るい声が聞こえた。


「先輩、高村愛です」

「ああ、愛ちゃん、電話ありがとう。どうした、気が変わった?」

「先輩、あたし、今の仕事、辞めたいんです。相談に乗ってもらえませんか。ちょっと怖いことになっちゃって」

「怖いこと?大丈夫なの?今日、会おうよ。愛ちゃんの仕事の終わりって何時?」

「店が終わるのが11時半なんで12時には出れます」

「分かった。じゃあ、お店の近くにあった公園で待ってればいいかな」

「はい、お願いします」


電話を切ると、母の葬儀から、刑事に付きまとわれて、麻生にまで目をつけられて、どうにもならないような日々の中で、初めて、心底ほっとして、深呼吸が出来た。


「そうだ、今日は、お洒落なカフェでご飯を食べてから、仕事に行こう」


道が開けたかと思うと、気持ちも前向きになっていく。ウキウキしながら、服を選ぶ愛の後ろで、小さな黒い蜘蛛がカサリと動いた。




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