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土御門ラヴァーズ  作者: 猫又
第三章
57/107

別荘へはまだまだ着きそうもありません

 どすどすどすと賢が廊下を歩いている。

 車から飛び出て来たと思ったら、早歩きで広い屋敷の中を歩いている。

 屋敷の中は走らない、それは土御門本家の決まりである。

 賢が自分の部屋に飛び込んでごそごそとしているので、仁が部屋を覗いた。 

「どうしたの? 賢兄。どっか行くの?」

 少し大きめのバッグを引っ張り出している賢を見て、仁が聞いた。

「スキーに行くんだ」

 と賢が言った。

「スキー? あ~いいね。誰と?」

「和泉と。明日から三日も休みなんだってよ」

「へえ、スキーか、いいなぁ。北の別荘?」

「ああ」

「え~いいなぁ。俺もついて行こうかなぁ。陸~~~~~」

 と仁が大きな声で応援を呼ぼうとしたその肩を賢がつかんだ。

「痛っ。痛いって、賢兄ぃ! いてててて」

「……仁君はお兄ちゃんを怒らせたいのかなー? お兄ちゃん、とっても急いでるんだよねー」 

「分かった、分かった、分かりました! 邪魔はしません!」

 肩を押さえつつ去って行く仁を見送ってから、賢は大急ぎで荷物をまとめた。



「う~ん。着替えと、洗面道具、靴下、タオル、ジーパン、ちょっと分厚い防寒のジャケット、それくらい? う~ん」

 和泉もボストンバッグを出して準備していたが、女の子は何かと荷物が増えるものである。たかだか二泊の準備に一番大きいボストンバッグがすでにぱんぱんだ。

「おやつは途中で買えばいいか。ドライヤー? くらいあるか。ばんそーこーと、車酔いの薬と、風邪薬と」

 際限がない。

 和泉の部屋にいる式神はソファ代わりになる、と決まっている。

 ちょうどいい大きさの赤狼がコタツの横に長く寝そべっている。

 和泉は赤狼の背中にもたれ込んで、

「あ~~ついに、やっぱ、そういう日が、くるとは。あの、賢ちゃんと、ねえ?」

 と言った。

 赤狼は(そ、そんな打ち明け話をされても困るんですが……)という風に目をそらした。

「でも、もう眠いんだけど…」

 と自分が運転するわけでもない和泉が更に文句を言っている。

 赤狼の耳がぴくっとなり、赤狼が身を起こした。

 もたれていた和泉はひっくり返る。

 赤狼が和泉のバッグを咥えて、玄関の方へ持って行った。

「え、もう来たの?」

 赤狼がうんうんと頭を下げる。

「よっしゃ、気合い入れて行くか!」と和泉が言った。



 駄目だ、眠い。和泉が必死で睡魔と戦っている。

「寝てもいいぞ」

 と賢が言った。

「だ、だめよ。人に運転させといて自分だけ寝るなんて!」

 とは言ったものの、眠い。実際、はっと目が覚める時があるので、うつらうつらとしてしまっているのだろう。

「あ、そうだ。誰か出してよ! 話し相手に! どうせみんな一緒に来てるんでしょ? 銀猫さんとか!」

「銀猫は年寄りだから寝てる」

 と賢が言った。

「え~、じゃあ他には?」

「茶蜘蛛のチャッキーなら」

「嫌よ! ってかチャッキーって何? 名前?」

「陸がつけた」

「名前は可愛いけど、蜘蛛は嫌!」

「後は出払ってる」

「嘘、若様がのんきに別荘に遊びに行こうって時にみんな働いてるわけないでしょ」

「まあな。でも出さない」

「どうして?」

「……せっかく二人でいるから」

 と、賢が言った。

(ちょ、何それ、そんな事言われたら、あたしが雰囲気壊す悪者じゃない)

 と和泉は思ったのだが、いや、ここで乙女っぽい事を言っておかないとなんか負ける!と思い直して、

「そうね。こういうの初めてだもんね。この間ゆっくり出来なかったから楽しみ」

 と言ってみた。

「約束もまだ果たされてないし」

と賢が言った。

「約束?」

「悪霊やっつけたらチュウしてくれるって言ったのに」

「あ、そんな約束したっけ」

 賢はふっと笑ってから和泉の手を取り、ちゅっと指先にキスをした。

(な、なんか負けたような気がする……くやしい)


ちょっと行き詰まってしまって、くだらない道中を書いてしまいました。


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