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土御門ラヴァーズ  作者: 猫又
第一章
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賢ちゃんと和泉とデートの時間2

 さすがの賢も少し驚いたような顔になった。

「実は学生の頃に一度、電話させてもらったんです。土御門神道に弟子入りして陰陽師になりたいと思って」

「ほ、本当に~~?」

「ええ、でも断られました。それで、第二志望の警察官になったんですけどね。ようやく土御門さんと知り合いになれて感動です! 事件の聞き込みに会社に出向いた時に、土御門さんの名前を伺った時はめちゃくちゃ緊張しました!」

「そんでちゃっかりつっちーに目をつけてデートに誘ったわけ? 抜け目ないじゃん」

 と美香子が言った。

「いやぁ」

 若尾刑事は照れくさそうに頭をぽりぽりと掻いて、

「もう一つの夢は土御門の女性と結婚して養子になる事なんです」

 と言った。

「え~~。じゃあ、つっちーと結婚するの?」

 大袈裟に美香子が甲高い声で言った。

「いや、まだそこまでは……でも、いい人と巡り会えたと思ってます」

「つっちー、どうするの?」

 と美香子が興味津々な顔で和泉を見た。賢は無表情でこちらを見ている。

「若尾さんは自分が土御門姓になりたいんですって。だから養子にいきたいのよ」

 と和泉は真相を話した。

「土御門だったら誰でもいいのか? 和泉、だったら美登里を紹介してやれ。俺も助かる」

 冗談とも本気ともとれない風に賢が言った。

 和泉はぶっと吹きだした。最近、賢は静香伯母様に見合いを申し込まれているらしく、逃げ回っていると聞いた。

「あのばばあの孫だ。直系に近い土御門だぞ。中ではばもきく。美登里の婿なら重鎮として迎えられる。何なら陰陽師の手ほどきをしてやってもいい」

「賢ちゃん、何、本気になってんのよ」

「お前、あのばばあに毎日追い込みかけられてみろ。逆に俺は土御門を捨てたいぞ」

 と言ってため息をついた。

「紹介は駄目なんじゃない? 静香伯母様は美登里さんを賢ちゃんに嫁がせて、次の当主を産ませたいんでしょ。次の当主の大おばあさまになりたいわけよ。静香伯母様の野望」

「冗談じゃねえ」

 賢はげんなりとした顔をした。

 そこで注文した料理が運ばれてきたので、この話題は中断された。だが、若尾刑事は美登里さんに興味を持ったらしく、

「後で詳しく教えてください」

 と小声で言った。美登里さんの婿は土御門の重鎮、と言った賢の言葉が気になるようだ。

「そんな事より、あたしの方はどうなったのよ。土御門君、井上君と島田先輩をどうしてくれるのよ?」

 と美香子が話題を自分へもどした。

「どうしてくれると言われてもな。祓うなら請け負うけど、高いよ」

 と賢は言った。

「え? 有料なの?」

「無料だと思ってるほうがびっくりだ」

「知り合いなのにぃ」

 美香子はぷうと頬を膨らませた。ふむ、なかなか可愛らしいふてくされ顔だ。だが、昔から賢にはそういうの効かないのよね。ふんと鼻で笑われるのがおち。 

 賢にはさすがに美香子のお願いも通じなかった。

「祓うにはそれ相応の能力と手間がかかる。無料でやってられるか」

「つっちーに手を出したらただじゃおかないって啖呵きってたじゃん。つっちーの為なら無料なんでしょ?」

 賢は言葉を探すように少しだけ沈黙した。

「デブネズミは昔から霊に憑かれやすくてな。土御門の能力は霊どもには格好の滋養になる。和泉は見鬼だが、祓う力がないからすぐ狙われる。土御門の能力を喰った悪霊はやっかいだからな。和泉を守るのは自衛の為だ」

「そうなんですか! 勉強になります!」

 と若尾刑事はまた感動している。

「ふううん、土御門君て、つっちーの事、好きなのかと思ってた」

「そんなわけないじゃない」

 と和泉が言うのと、

「…あほか」

 と賢ちゃんが言うのが同時だった。

「じゃあさ、体で払う、これどう?」

「ちょ、美香子! 本気?!」

「いいじゃん。お金は払ったら減るけど、体は減らないでしょ? 避妊さえちゃんとしてくれればいいわ」

 美香子は賢にうっふん、とウインクして見せた。若尾刑事は少し顔を赤くして、賢の方を見た。 

「小池さん、好きでもない男とそういう事するの平気なんだ」

 と賢が呆れ声で言った。

「全然平気ってわけでもないけど、土御門君だったらオッケーかな」

 美香子は笑ってそう言った。相手に軽蔑したような顔をされても平気でそう言える美香子の心臓が正直うらやましい。

「そういうプロの店に行けばいくらかかる?」

 と賢が若尾刑事に聞いた。若尾刑事は首をかしげて、

「ソープランドってことですか? 三万円くらいはいるんじゃないですか」

「一回に? 高い!」

 と和泉はびっくりした。三万円払ってまで女の人を抱きたいもんなのかしら?

「三万ね……じゃあ、百回はやんないと完済にならないけど」

 と賢が言ったので、美香子が目を丸くして、若尾刑事は使っていたパスタのフォークを途中で止めた。和泉は赤面するしかない。

「お祓いって三百万もかかるの?」

「かかるね。しかも小池さんは二体も連れてるし。三百万でも安い方。まさか一回で払い終わると思ってたわけ? どんだけ高級なんだ、小池さん」

 美香子は絶句し、若尾刑事はまた、

「勉強になります! 土御門さん!」

 と言った。和泉はお祓いにそれだけかかるなら、賢に作ってもらったこの水晶の念珠は実はいくらなんだろう、と考えた。あれから賢にも聞いたのだが、念珠の金はいらないと言ってくれたのでお言葉に甘えているのだが。

 結局、それだけ金がかかるなら祓わない、と言うことで話は落ち着いた。自分で見えもしない、何の支障もない霊の為に金はもちろん、三百回もは無理と美香子は言う。自分のした事に罪悪感の欠片もない彼女ならこの先何年でもやっていけそうだ。そのうち井上と島田先輩の方があきらめて離れていくような気もする。


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