僕はバイトを探していた
思いつきの書き殴りなので毎話クオリティにムラがあるかと思いますが、気にしないでください。
『僕は転校することになった。』
「う~ん」
日記の語り出しとしては少々おかしい気もする。普段エッセイなんかは読まないから、この違和感の正体はよく分からない。
正体の分からないものはないものとして考えた方が人生はきっと上手くいく。であれば、僕は違和感を無視してこのまま書き続けることとしよう。
僕は転校することになった。理由は複雑である。
とある事件があって前の高校に居られなくなってしまったんだ。
いや、僕が何か悪いことをしたとかそういうことではないので安心して欲しい。僕は決して不良ではない。
しかし、予想通りというか何というか、僕の両親は偏屈なことで評判であり、僕の転校にも頑なに反対をし続けたのだ。
周囲の説得や僕の直談判の末にようやく隣県への転校が認められたんだけれど、その条件は「生活費は自分で稼ぐ」というもの。
「1人暮らしをさせてあげるんだから当然でしょ?」とのありがたいお言葉と共に頂いた餞別は15万円ぽっち。これだけでは数ヶ月もすればそこいらの雑草を引っこ抜いて食う生活になってしまう。
というわけで、僕はバイトを探しているのだ。
「でも今どき高校生で雇い入れてくれるところ……無いよなぁ」
バイト雑誌を開いてみるとどこもかしこも「・高校生不可」の文字ばかり。お金の足りない未成年には世知辛い世の中になったものである。
「散歩でもするか」
この町へと引っ越してきてまだ2日。やったことといえば役所に転入届けを出しに行くとかスーパーで弁当買うとかその程度だ。
マネーにリミットがあるとはいえ、猶予がないこともない。バイトのことは一旦忘れて町を眺めてみるのも良いだろう。
――てなわけで、僕は真夏の午後という地獄の時間にこの町を色々と探検してみた。
夕方6時には閉まる激安スーパーに始まり、老人がゲートボールに勤しむ公園や、わんちゃんズの散歩コースとなっている堤防、あとは、あとは……この町こうして列挙してみると何もないな。
この日、僕が最後に訪れたのは大変寂れた駅前商店街。
通勤客がそこそこいるらしい駅、それ自体は賑わっているのだが、夕方に彼らが帰路の途中で寄り道するのは駅直結のショッピングモール。その先のアーケードには人気が全くない。
人の居ないアーケード街というのは昭和レトロというのだろうか、そういったエモさがある反面、夕暮れ時の薄暗い時間帯だったからなのか、怪談噺の舞台に放り込まれたかのような薄気味の悪さがある。
人情の薄い両親に少しでも情緒が戻ればいいな――と、このエモい風景をいくらかスマホに収めていたんだが、そんな時に妙に真新しい広告が僕の視界に入ってきたんだ。
『超能力者募集中 僕たちと働いてみませんか 年齢性別など一切を問いません アットホームな雰囲気の職場です (有)汗町のなんでもや』
「なんだこれ」
なんだこれ。それ以外に反応しようがない。
こんな堂々と超能力者を募集するシャッター広告があるか。あってたまるか。
怪しすぎる。僕の求めていたバイトはこんな猜疑的でオカルティックなものでは――
「年齢性別を問わない……」
なんとまあ魅力的な条件だろうか。
労働力不足の寂れた田舎町ですらいっちょ前に高校生バイトを禁じる事業者が多いこの昨今、年齢制限がないというだけで僕にとってはとても希少なアドなのだ。
「ねえ、あんた邪魔」
「あ、すみません」
シャッター広告を眺めながら葛藤する僕に後ろから声が掛かった。
凛としているけどトーンは高い少女のような声だ。
僕が振り返ると、そこには――
「え?」
ゴスロリがいた。
「えぇ……」
寂れた昭和レトロなアーケード商店街。そこに全く似つかわしくないゴスロリ少女が夕日に照らされて立っていたんだ。
カタカナのシキ→汗 五十音表で「さか」の下が「しき」ということで「さかした」です。




