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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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「夢のあと」終演後

後片付けは大変

合同発表会が終わり、出演した生徒たちは撤収までのひとときを見に来てくれた人たちと共に過ごす。

写メを撮ったり、プレゼントや花束をもらったり、楽屋前の廊下はどこも明るい声がこだましている。


真理も舞香と大西大河から花束を贈られ、しばし舞台の余韻を楽しんだ。

しかし、大河はその後康太先生に会いたいだろうし、舞香も長居はできない。

早々に、面会を切り上げて楽屋へと戻った。


後はさっさと後片付けをするだけだ。

そう思いながら、楽屋に入るとそこには一人モニターを見入る晴美がいた。


そこに映し出されている、グランドフィナーレの最後の静止画像。

みんなでポーズをとった集合写真だ。


「きれいね、なんが舞台全体がお花みたいで」

と真理が晴美に声をかけた。


確かに、華やかなで美しいこの写真。

よく見ると、足が内またになっていたり、膝が曲がっていた李、指先が縮こまっていたり、

いろいろと、指摘される部分は多いのだが。


それでも、全体をもるとなんとも優雅にまとまっているではないか。

これは振り付けの手腕によるものだ。


そんな画像を眺めながら、視線は必然と自分の姿を探している真理。

その横で晴美が複雑な顔をしている。


せっかくの集合写真なのに、真理の姿はすっかり「前に立っている人」によって隠されてしまっているからだ。


自分の姿を画像で確認した真理、一瞬その顔がこわばった。

身体のほとんどは、前でポーズをとっている真由子に隠されていて、見えているのは伸ばし切れていない腕、それからチュチュから出ている脚だけだ。


全身が見えず、腕と脚だけの姿は滑稽だ。

決して、「すらりと伸びたカモシカのような脚」と「白鳥の羽のような腕」を持ち合わせてはいない真理。

全体からすると、小さく映っているだけなのだが、自分の脚が、腕が、絵画のようなきれいな光景にまるで泥水でも塗りたくったようではないか。


「きっと、他のショットもあるはずよ、ちゃんと映ってるやつ」

と晴美。


「そうね」

と真理は答えたが、最後のポーズ、真由子はずっと真理を隠していた。

どの写真もこれと似たり寄ったりだろう。


たまたま写真に撮られた時だけではなかった、真由子のこのポーズ。

後ろと重ならないように、身体をかがめるようにと指示があったにもかかわらず、

それを明らかに、無視しているかのようだった。


しかも、本番のあの時だけだ。

あの時の真由子の横顔が何故かほくそ笑んでいるように見えた。

もちろん、それを口に出すことはなく、真理の心の中だけの秘密だったが。


そうこうしているうちに、他の出演者たちも楽屋に引き上げてきた。

あとは時間内に撤収するだけだ。

楽屋はにわかに騒がしくなった。


「わあ、もう画像が」

とモニターの前だ立ち止まったのはしのぶだった。


手にはたくさんの花束を抱えている。

大勢の友人が観に来ていたようだ。


その時にはモニターの画面は他の写真へと切り替わっていた。

この舞台でのダイジェストのような写真が次々と画面に映し出されている。


いずみ先生のバレエクラスの生徒たちの「パキータ」の写真が流れ始めた。

みんな、後片付けの手を止めて画面に見入った。


気恥ずかしさの入り混じった歓声が起こる。

画面と通してみる自分の姿。

それは大抵の場合、自分の思い描いている姿とは異なる。


パキータのアントレー、しのぶと康太先生を中心に、全員が揃ってポーズをしている一枚。

それぞれのバリエーションでのショット。

そしてコーダでの華やかな舞台。


ついさっき踊ったばかりなのに、なんだかもう遠い昔の様だ。

と、真理は思った。


「あっという間だったわね」

と幸子が言った。

周りにいた数名が、深く頷いていた。


「本当に、ありがとうございました。」

と声をあげたのはしのぶだ。


「皆さんのおかげで、無事踊りきることができました」

と続けるしのぶ。


やはり「主役」の重圧はそれなりに重かったようだ。

目が潤んでいる。

周りのみんなが、そんなしのぶに賛辞を贈る。

しのぶのがんばり、それは誰もが認めることだから。


「みなさんも、次こそはセンター目指してがんばってください」

とそう結ぶとしのぶは自分の片づけを始めた。


「はいはい、がんばりますよ」

と誰かの声がする。


悪気はないしのぶの言葉。

それを素直に受け取れないのは自分だけではない、真理はそう思った。


「撤収まであと30分です」

と館内アナウンスが流れた。


まだ、楽屋のモニターの前でまだ余韻に浸っていた出演者たち。

にわかに、帰り支度を始めた。


発表会の行われた公共の施設はあまり遅い時間まで居座ることはできない。

決まられた時間内に、一人残らず引き上げなければならないのだ。


皆の着ていた衣装は、まとめてそのままレンタル会社へと返却する。

髪に付けた赤いバラと一緒に。


メイクを落とし、スッピンが耐えられない大多数は、軽く化粧をする。

そして私物の片づけ。


トゥシューズや稽古着はどれも似通っているので、間違えない様に注意が必要だ。

それから、持参したメイク道具にヘアケア用品。


今回の出演者たちはみな、大人ばかりだ。

片づけはかなり手際よく、あっという間に全員で楽屋を後にした。


大きな荷物を抱えたその日の出演者たちが、会場の裏口に集まっていた。

その中心に、主催者であるのぞみ先生がいた。


全員が揃ったのを見たのぞみ先生、

皆に向かって深々を頭を下げ、全員をねぎらった。

そして、


「それじゃあ、打ち上げに出発!」

といずみ先生。


これから、この合同発表会での労をねぎらう打ち上げを、近くの居酒屋で行うのだ。

嬉々として、居酒屋に向かって歩き出す生徒たち。


いずみ先生のバレエクラスの生徒たちもその一団にいた。

真理も、幸子たちと一緒にいる。


ふと前方をみると、いずみ先生の姿があった。

その隣には、お団子頭の人影がいるのが見える。


親し気に肩を寄せ合いながら談笑している二人、

それが、真由子だ気付くのに、時間はかからなかった。

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