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:夏祭り
夏祭りの屋台はやけに魅力的。夏の、夜の、それも非日常の。その枠組みに加えて、涼し気な浴衣姿、下駄の音、焼きそばの暴力的でパンチのきいたソースのにおい、方々から聞こえてくる話し声にこの時期しか耳にできない笛や太鼓の音もまじってくる。さわがしくも心地よい空間。
右手にキミのくちびると同じような色のあんず飴を持って、左手にはお店のおじさんがきちんと拭ってくれたと思われるラムネのビン。けれど、かすかに濡れている。走る雫は、キミの白くて細い腕を伝い、ヒジから地面へと落っこちた。
白地に青い花があしらわれた浴衣姿のキミを見て、その瞬間、大きくふくらんでいた僕の気持ちがみるみるしぼんでいく。両手がふさがっていたんじゃ手をつなげないじゃあないか。
ひとりひそかに憤っていると、
「これ持って」
と、キミがラムネのビンを差し出してくる。言われるまま僕はそれを取り、手を濡らす。
「行こっか」
キミの濡れた手が、空いている僕の手をさっと引いていく。
―ああ、そういうことか
よく冷えたラムネを胸に当て、やけに熱くなった鼓動をしずめる。




