初見
「・・・・ん・・・んぁ〜・・ぁああ?」
――ゆっくりと目を開く。
眩しい日差しが差し込み、綺麗な澄み渡った青空が視界に入った。
(・・・・も・・・り・・?)
眼球だけを動かし周りを観察してみると、青々と生い茂ったジャングルの様な場所に仰向けに寝ていた。
(・・・なんだ? なんでこんな所で寝てんだ、俺?)
意識も段々と覚醒し、自身の今置かれた状況を少し考えてみる。
(えーっと、日食見てて、気流が・・・搭乗して・・・そうっ!!)
「――飛行機っ!! ――いっつ〜〜〜〜!!」
状況を思い出し、急に体を動かそうとした時、体全体を激痛が襲う。
首だけを動かし、節々を眺めると所々擦り傷や切り傷はあるものの、大きな傷はない。
少し安堵の息を吐きながら痛む体に鞭を打ち無理やり体を起こす。
「・・・くっそ! いってーな! ・・・どこだよここ!」
痛さのあまり悪態をつきながら、周囲を見回していると、すぐに状況が一変する。
――バッゴォォォオオーーーーーーン!!!
「ま、まさか!!」
痛む左腕を軽くさすりながら、もくもくと立ち上る黒煙を視界に捉え、小走りに目的地を目指した。
十分程で鬱蒼とした森を抜け、目的の場所に到着してみると、そこには形容しがたい光景が広がっていた。
「うっう〜〜〜・・・・」
一つ、人の形をした黒い物体。
「痛い、痛いよ〜」
一つ、右半身と左半身が綺麗に別れた物。
「ママ? ママ? どこぉ〜〜〜?」
一つ、首から上だけが潰れている物。
すべて人だった者が肉塊に変わり果て、そこら中に広がっていた。
「・・・う、そ、だろ? ・・・っ! 救急車!! くそっ! 圏外かよ!!」
あまりの現実感のない光景に現実を感じず、一瞬固まるが、思い出したかの様にスマートフォンを取り出す。
だが、予想外な事に表示は圏外だった。
この狭い日本国内において、電波が入らない場所はそんなに多くは無い。
しかもここは海辺であり、山岳地帯ならまだ分かるが、海辺で電波が届かない国内となるとそれこそさらに少ない。
(くそ・・・何をどうすれば・・・何か・・・何か無いか・・あ・・・搭乗医療品!!)
何とか息がある人の為に何か出来る事は無いかと、必死に考えた結果、飛行機内に配備されている搭乗医療品の事を思い出した。
搭乗医療品とは飛行機内において、乗客が急に病気や怪我などを負った時に備え、医療関係者が処置を適切に行えるようにと様々な医療品や医療用具が入っている。
しかし、思い出したは良いものの哲哉は一介の会社員であり、専門的な医療知識など持ち合わせてなどいない。
だが、冷静さを失っている今の状態ではそんな事を気づくはずも無い。
飛行機は現在も継続して黒煙を上げているが、火の手は上がっていない為、胴から真っ二つに割れた箇所から侵入した。
――強烈な焦げ臭い匂いが鼻を刺激する。
機外でも少しは臭ったが、風が吹いていたため、現実感のない光景とは違い、臭いはそこまで感じていなかった。
だが、機内に入った瞬間は違っていた。
腐乱臭やアンモニア臭、タンパク質の焦げた臭いなどが混じった何とも言えない異臭に、吐き気を催すが、ぐっと堪え、中に進んでいく。
(・・・・はは・・右見ても左見ても死体ばっかり・・俺って結構冷血なのかね・・・)
進んでいく過程で目にする死体と死体。
死に方は違えど、一度見ればどう考えても死んでいると判断できる状況にも関わらず、恐怖を感じていない自分に違和感を覚えていたが、そんな事よりと、勤しんで医療品を探し、更に奥へと進んでいたその時――。
「〜〜〜〜〜ぎゃあああああああああ!!!」
「た、助けてくれ〜〜〜〜〜〜!!」
「い、嫌だ死にたくなああああああああああ」
突如、機外から大勢の悲鳴が上がった。
(な、なんだ!!!)
急いで近くの窓に近づき外に視線を向けると、多くの怪我人が何かに襲われていた。
「おいおい、嘘だろ!!」
その怪我人を襲っていた犯人の正体に驚愕する。
遠目からでもはっきりと分かる。
人型で黒緑色の肌、小学校低学年並の身長で頭髪が無く、頭部の形も尖っており、服装は腰に布を巻きつけている程度で手には棍棒やら錆びた短剣、石斧を武器に携えている。
「―――小鬼かよ!!」
そう、ファンタジー系でお馴染み定番中の定番の化物である小鬼。
その醜い外見と残虐な本能で、人間を襲い、喰らい、犯す、あの小鬼がそこには居た。
ちょっと全体的に変更しました。
だいたいこれぐらいの行数が書きやすいかも。