口調
スーツの新たに加わった機能を色々試したいと哲哉は歩きながらアレやコレや考え込んでいた。
すると、痺れを切らしたのかフィンが徐ろに口を開く。
「テツヤ様、他に見たい物はありませんか? 夕刻の鐘までまだ少し時間がありますが・・・」
「そうなのか? そろそろ晩飯食いたいけど」
そう言いながら、ふと時計に眼をやる。
時刻は17時過ぎ、もうそろそろ宿屋で食事を取りたいと思っていたが、まだ食事の時間はある様だ。
どうしようかと考えているとフィンが思いついた様に提案してくる。
「それなら冒険ギルドに一度顔を出されては如何ですか? 通常であれば冒険者は冒険ギルドでギルドカードを発行しますが、テツヤ様の場合、国士ギルドで発行したので一度受付に話を通しておいた方が今後の活動がスムーズ出来るのではないかと思いますよ」
確かにフィンの言う事も最もだ。
これから先、少なからず世話になるギルドに顔出しをしなくてはいつまで経っても依頼を受ける事もランクを上げる事も出来ない。
むしろ聞きたい事もあるし行くべきだなと哲哉は考え、フィンに道案内をお願いした。
フィンは、はい、承りましたと言って快く引き受けてくれた。
そのまま大通りを真っ直ぐ進んで行くと、二階建ての石造りの建物の前にやって来た。
外側から見える内装は、西部劇などで良く見かける木枠が使われている様で看板には盾と剣がクロスする絵が描かれていた。
いかにも冒険ギルドという感じだ。
早速、両開きの扉を開ける。
中に入ってみると、入口から見て左奥側が酒場の作りになっており、円形のテーブルが適当に配置されていた。最奥にはバーで馴染みのカウンターが設置してある。
夕刻と言う事もあり、席はほぼ満席状態で多くの人が賑わいを見せている。
入口前には市役所などで見かけるカウンターが設置して有り、受付嬢らしき人物が三人座って並んで居た。
三人とも三種三様の美女ばかりだ。
「おぉ〜流石、冒険ギルド期待を裏切らない感じだな」
美形の受付嬢に長蛇の列で並ぶ冒険者、仲間と談笑しながら食事をする酒場の活気、哲哉が本で読んだ光景が正に目の前に広がっていた。
室内の喧噪に眼をやっていると、フィンに早く並んだ方がいいですよと促され、冒険者の列に二人並んだ。
そのまま5分から10分程並んで居ると、漸く哲哉達の番になった。
「こんにちは。今日はどの様なご用件でしょうか?」
対応してくれたのは三大受付嬢の一人、一番スレンダーな美少女だった。
年齢は十代後半だろうか、頭にはウサギの耳が着いており、前の方に頭を垂れている。
タレ目で胸は大きく、十人中十人が美少女だと応える程、整った顔立ちをしていた。
(おぉ〜獣人ってやつか、人種に関係なく綺麗だな。フィンもそうだが、美女ばかりだと普通の感覚が麻痺するぞ、これは)
そんな下らない低俗な事を考えながら哲哉は受付嬢に丁寧に話しかけた。
「初めまして、テツヤ=コタニと言います。国士ギルドで冒険者登録をしたので、冒険者の規約についてこちらで話を聞かせて貰えればと思いま――」
「ぎゃはははは! 何だそのお坊ちゃん言葉は! オメェはそれで一端の冒険者気取りかよ!! そんなお坊ちゃんはお家でママのオッパイでもしゃぶってな!! ぎゃはははは!!」
哲哉が受付嬢に話しかけていると、後ろから大声で罵声を帯びせてくる冒険者が居た。
その声の主に視線を向けると、見た目三十代前半、体躯ニメートル近くは優に有るであろう巨体に、二の腕は丸太の様に太く、腹筋も凸凹に割れている大男が立っていた。
両手で腹を抱え、時折哲哉を指差しながら爆笑していた。
(なるほど、この世界では敬語とか丁寧語は遣わない方が良さそうだな)
そんな馬鹿にされているにも関わらず、哲哉は冷静に今後の話し方を変えようと全く別の事を考えていた。
「・・・何だ? その余裕面は!」
そんな哲哉の余裕が鼻についたのか、大男は哲哉を突き刺す様に睨みつけた。
「いや、確かに俺の発言がちょっと丁寧過ぎたなって、反省してな。有難う先輩」
ニヤリと笑いながら哲哉はペコリとお辞儀をした。
「――てめぇ!」
「やめてください! いきなり何なんですか貴方は!」
哲哉と大男の間を先程まで様子を伺っていたフィンが割って入る。
「お〜すげー美女連れてんじゃねぇか。その女に免じて今回は勘弁してやる。おい女! こっちに来て俺らに酌をしろ!」
そう言って大男はフィンの腕を無理矢理掴もうとした。
――パシンッ!
「おい、何勝手に話し進めてんだ?」
フィンを掴もうとした大男の手を哲哉は払い退けた。
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テツヤ=コタニ 27歳 男
職業:冒険者
階級︰G
適正:銃剣術
技能:演算処理
称号:黒鎧の騎士