第10話 極限の山岳セクションと覚醒の瞬間
人工的に設置されたこのレースコースは、スタートから中盤にかけて立体交差や高速直線を織り交ぜたテクニカルセクションだった。
しかし、その先に待ち受けるのは、大会屈指の難関と呼ばれる「山岳セクション」だった。
(これが……ヒマラヤ山脈ステージ……!)
まるで実際の山々をミニチュア化したように、雪化粧を施された険しいコースが視界に広がる。
コースは急激に勾配を増し、凍結した坂道を猛スピードで登らなければならない。
ほのかはスロットルを全開にしながら、慎重に機体を制御した。
機体の滑りを抑えるための細かなスティック操作も、今や完全に自分のものになってきている。
ふと、背後のモニターを見ると、残る機体はわずか4機。
消滅ラインは依然として迫り、少しでも速度を落とせば飲み込まれる状況だった。
『現在、走行中の機体残り4機。消滅ライン接近。最大警戒状態』
「信じられない!この山岳セクションを突破できるのは誰なのか!?」
MCの叫びが場内に響く。
そのとき、またしても背後からビームの嵐。
しかし、守護霊の父が必死に機体の周囲にシールドを張り、辛うじて攻撃を防いでくれていた。
「くっ、限界が近いぞ……!」
父の声は苦しげだった。
それを聞いた母の守護霊も、必死に回復の術を施すが、守護霊たちの力も確実に消耗していた。
(もう……誰も守ってなんてくれないかもしれない)
だが、不思議と恐怖はなかった。
ただひたすらに、前方のコースだけを見つめ、ほのかは機体を駆る。
(自分の腕でここまで来た……なら、最後までやる!)
雪の斜面を登り切ると、今度は複雑に入り組んだ超難関ターンゾーン。
元プロレーサーだった父ですら「このコースを最高速で曲がれるのは、今のところ世界に誰もいない」と言った場所。
(できる。今の私なら、できる!)
消滅ラインはすでに山の麓まで迫っていた。
躊躇う暇はない。ほのかは、フルスロットルのまま、その超難関ターンに突っ込んだ。
「ライラック・ゼロ、行けぇぇぇ!」
瞬間、機体は信じられないほど滑らかにコーナーへ侵入。
従来なら減速が必要な急カーブを、機体の傾きと微妙なスロットル調整、そして最短ライン取りで突き抜ける。
観客席からは悲鳴と歓声が入り混じった叫び声が上がる。
「信じられない!ナンバー16番、湊ほのか選手!最高速のまま超難関ターンを突破!」
MCの声が震えていた。
消滅ラインはすでに残る機体の後方まで迫っていたが、他の機体はすでに超難関ターンを曲がりきれず、次々とラインに呑まれていく。
『走行中の機体、残り1機』
ほのかだけがコース上に残され、消滅ラインと二人三脚のように駆け抜けていた。
「よし、もうすぐ……!」
この先には、かつてほのかが宇宙ステージで何度も見た、光の渦に似たトンネル状の空間があった。
そこが最後の区間。ここを抜ければゴールラインが待っている。
(絶対にゴールして、生きて帰る!)
ほのかは再びスロットルを限界まで押し込み、超高速でラストセクションへと突入するのだった。




