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ワールド・ガイア  作者: 水野青色
29/281

29~もうすぐ中央部だけど、その前がこんな場所だなんて~

更新しました。

寝坊助女主人公は寝てません。

新しい集落に来てます。

ここしばらくの食生活。

そう。

肉ばかりだ。

猪と熊と牛の肉がいっぱい。

野菜があまりない。

拠点であるおうちの野菜も、水不足が原因で枯れかかってた。

仕方ないので、錬金術でスプリンクラーを作り、水のスライム核石を突っ込んでおいた。

常に水が出るようになってる。

プラント母さんがその前を陣取っていたようだけど、頼むから庭の野菜にまいてほしい。


とうとう、王都中央部近くにも、乾季がやってきた。

肌がピリピリしてくる。

水が足りない。


見えている景色も、心なしか枯れている。

このまま雨が夏に入ってすぐにでも降らなければ、この乾季のせいで、日照り状態だろうな。


「暑いわね」

「夏が近いからな。天候だけは、どうにかしようとはできないな」

「神様なのに?」

「そういう仕組みを組み込んで作った星だからな。自然の流れというものだ」


神様でもなんともできないようにしたのか。

ファンタジーな世界って、精霊が天候を決めるのだと思ってた。


「仕組みが決めている。各々星を作るときにした会議で決めたのだ。ほかのところもそうだぞ」

「つながっているワールドはみんなそうだったの?」

「そうだ」


神様同士で星づくりの会議なんてしているのか…

それじゃ、ほかのところも乾季のところがあるんだろうな。


「水魔法が使えるって、とても貴重なのはこのせいなのよね?」

「そうだな。だが本来なら、ここまで乾きもしないし、乾季にも雨が降るはずだったぞ」

「それじゃなんで?」

「水魔法使いが少ないからだな」


運営さんが言うには、魔法が使える資質というものがあるそうだ。

その資質のある者、人間でも獣人でも、魔獣でも、それらの存在のバランスが、星の天候のバランスをとっているのだという。

しかし、人間だろうが、獣人だろうが、魔獣だろうが、水魔法の使い手が少なくなってしまい、乾季に雨が一滴も降ることがなくなり、こうして肌がかさつくほどに乾ききっているのだという。

しかも、これはこの中央に続く王都ではなく、郊外のほうがひどいのだ。

水魔法が使えるものが、王都のほうが仕事があると、郊外から姿を消すからだそうだ。

魔獣なら森などにいるが、水魔法が使える資質を持つ魔獣は、水のそばにしかいないため、水場から離れている場所ほど枯れかかるのだそうだ。


「結構深刻だよね。そういえば、あの子も水魔法が使えるから、中央に行きたいって言ってたんだっけ」

「あの宿屋の娘か。あの程度なら中央にたくさん集まっているだろうから、あそこにいたほうが仕事がある気がするがな」

「そうだよね。貴重な水魔法の使い手なんだしね」


私がそんなこと思ってても、あの子はあの子の生きる道があるのだから、何とも言えない。


「しかし、肌が痛いなぁ。加湿器ほしい」

「かしつきとはなんだ?」

「蒸気が出て、少し部屋をしっとりさせる機械かな。あまり乾燥していると、病気になるわよ」

「そんなものはこの世界にはないな」

「病気はあるのにね。作ったところで、古代の魔道具扱いになりそうね」


魔石と言われるものがあっても、そんな安くないんだったな、この世界。

そうしたら、加湿器はぜいたく品だよなぁ。

私が使うだけならいいけど、少しはこの世界に何かしてみたいのもあるし。

スライム核石がもう少し普及していればいいのになぁ。


<それも古代技術となってしまったからな>


そうか。

古代魔術と同じなんだ。

どれだけ古いの、私たちプレイヤーの魔法。

でも魔法陣とか略されてなさそうだしなぁ。


「このせかいのまほうってどうなっているの?」

「どうとは?

「魔法陣が縮小されたとか、魔法が無詠唱でできるとか」

「そんなものはプレイヤーの管轄だ。大体、プレイヤーの魔法が高度技術すぎて、古代魔法術と呼ばれているだけで、まだそんなに進んでいないんだ」


知らなかった。


「魔道具も、プレイヤーがこちらに来て残したものが多い」

「そうなんだ?じゃ、私が勝手に作っておいていってもいいの?」

「ん?別にいいぞ。何か作りたいのか」

「まだ考えておく」


スライム核石をもう少し浸透させたいのがあるなぁ。

何でなくなったのかな。

あんな便利なもの。


「錬金術の技術がないからだ」

「そうだった・・・」


錬成のための魔法陣とかそんなに出回ってないようだし。

仕方ないのかな。


「そろそろ次の集落ですよ。その次が中央に行きます」


声がかかる。

もう夕方だし、今日はその集落どまりかな。


集落の入り口には、やはり守衛さんがいる。


「・・・ここに入るには・・・わかっているな?」


明らかに袖の下要求ですね。

そういえば、中央に行くほど、お金を取られるって誰か言ってたな。

最低な役人だー。

でも問題を起こしたくないから、金貨を一枚握らせた。


「いい日を過ごせよ」


身分証とかも見ないで通す木っ端役人だ。

腐ってるわね。

ま、こちらとしてはどうでもいいわ。

朝にはさっさと出ましょう。


集落の雰囲気はよくない。

馬車からのぞくと、あちらこちらにぼろ布をまとった人が寝ている。


「なにここ・・・」

「中央に近いところでこれではな・・・」


どこもお店が閉まっている。

夕方だから?

でもおかしいわよね。


宿は、見かけが豪華だ。

どこも同じようだから、とりあえず入る。

一泊の値段が、びっくりするような設定だった。

一人分が一泊銀貨50枚。

どういうことなの。


「払えないなら出てっておくれ」


カウンターの女性が、ちらりとこちらを見て言う。


「どこもこんななの?」

「うちは安いほうさ」

「これで?」

「泊まれないやつらは、広場にでも行って馬車で寝泊まりさ」


そうなんだ?

・・・それもいいかもなぁ。

この前のとこの集落といい、なんだかとても愛想が悪すぎるし。


「おじゃましました」

「ふん、貧乏人が」


むっかー。

払うお金はあるけど、泊まりたくないだけよ。

見かけだけで、いい宿じゃなさそうだし。


馬車を引いて、広場と言われる場所へ。

ものすごい馬車の数だ。

広場にも守衛さんがいた。


「ここで宿泊か。場所代はこれだ」


紙を出してくる。

読めないわけじゃない。

言語はきちんと理解できるから。


「ほかのところの宿と同じくらいか」


これなら払うか。

後、何かあった時用に、守衛さんにも握らせておく。

もう夕方も遅く、暗くなる。

疲れたわ。


指定された場所に馬車を停め、シツジローくんがウーマの世話。

メイちゃんがご飯の支度を始める。

ああ、そういえば、野菜が足りないわ。

買えなかったなぁ。


外での食事の支度を眺めている。

今日は牛だわ。

ミートカウ。

まだたくさんあるものね。


ちらりとお隣の馬車を見ると、あちらは野菜ばかりだった。

ご家族だろう。

夫婦と子供が二人。

どこに行くのかな。

…それよりも、子供がよだれを出しそうな目で、こちらの料理している姿を見ているわ。


「あー・・・えっと、お隣さん?よければ野菜と肉交換しません?」


奥さんに話しかけてみる。

こちらは野菜がないし、あちらは肉が食べたいだろうし。


「ああ、すみません。そんなつもりじゃないです。うちのコが失礼しました」


あやまるお隣の奥さんに、事情を説明。

こちらは野菜が欲しいのだ。


「すみません。ここに泊まる分だけで、お肉買うお金が無くなってしまいまして」


確かに高いよね。

入るときにお金とるし、宿は見せかけで高級だし、馬車どまりなのにほかのところの宿みたいな値段だし。


「メイちゃん、いっぱい焼いてあげて」

「かしこまりました」


少し減らしたいからちょうどいいわね。

ご主人らしき人も、腰が低い。


できたそばから、子供たちががっつく。

どれだけおなかすいているのよ。

成長期だもんねぇ。


「すこしわけてあげて」

「かしこまりました」


10キロほどの塊肉。

すぐには食べきれないだろうけど、さて、どうやって渡すかな。


「時間経過なしの収納袋とか、持ってませんか?」


マジックバッグくらいあるといいんだけどね。

ちなみに、私はいっぱいある、

作れるから。


「そんなものありませんよ。時間経過なしなんて、それこそ、荷物かご一つ分の収納力だけでも、いくらすると思っているんですか」

「知りません。じゃ、これに入れておきます」


ショルダーバッグ型にしてある、行商馬車一台分の荷物が入る、時間経過なしのマジックバッグだ。

重さも感じないし、いいと思う。


「野菜くれたお礼です。いっぱいあるし」

「いやいやいや。お礼って、そんなに高級なものいただけません」

「気にしないでください。使わないものだし、持ち腐れるより、あげます。・・・お子さんたちも、いつか大きくなったときに、どこか行くとき便利ですよ」


子供たちにもあげる。

こちらは収納力は行商馬車の半分だが、時間経過なしだ。

子供は訳が分かっていないのか、ショルダーバッグに喜んでる。


「メイちゃん、何かお菓子とか入れておいてあげて」

「かしこまりました」


残っていた小麦粉で、揚げドーナツだ。

味付けははちみつだ。

それを、紙に包んで、子供たちのバッグに入れてあげる。

なんてメイちゃんはいい子なんでしょ。


「おねえちゃん、ありがとう」

「いいのよー、どういたしまして」


いい子じゃないか。子供たち。


「・・・すみません。ありがとうございます」


ご夫婦に頭を下げられた。


「どれより、どこに行くのです?ご家族そろって」

「・・・いろいろと厳しくて、中央では暮らしていけそうもないので、どこかほかのところにと・・・」


どうやら、税金などが厳しすぎて、中央近くでは払えなくなってきたらしい。

ここだって高いしね。

財産といっても、この馬車くらいなのだそうだ。

よく見ると、馬も老いている。

老いはどうにもならないけど、こっそりと馬に元気になるようにと、ポーションでも飲ませておこう。


「実はですね、いいところがあるんですよ。まだちょっと遠いのですが、老人しかいなくて、働き手を欲している集落です。そこにいきませんか?」

「仕事があるのでしょうか?」

「農業だけですけどね。そこでよければ、一筆書きます。そこの集落の長さんに、手紙渡せば大丈夫です」

「ほんとですか!」

「行く気があるならですが」

「行きます。こちらでは暮らせないので…」


うらぶれた旦那さんだな。

まぁいいや。


「シツジローくん、お願い」

「はい。お嬢さまの名前で一筆書いておきました」

「ありがとう。あとはこの人たちに、集落の場所を教えてあげて」

「かしこまりました」


食事がすんで、お茶を飲みながら、シツジローくんが旦那さんに説明しているのを見る。

かかわった人で、貸したい人にだけ手を貸そうと、私は決めたから。


「おくさん、ちょっと」


手招きする。

子供はメイちゃんがまだおやつを作っては、袋に入れているのを、嬉しそうにみてる。

小麦のお菓子でいいなんて、安上がりな。


「これ、少しですけど」


金貨を五枚。奥さんの手に握らせる。

微々たるものだが、少しは足しになるだろう。


「こ・・・こんな、いただけません!」

「しーっ!声が大きい。私があなたたちご家族に上げたいのだから、いいのよ。まだ先は長いんだし、食料だって買わないとでしょう」

「でも・・・」

「いいのよ。きっとここを出るときも、お金とられるだろうから、私たちと出ましょうね。後、奥さん、水魔法が使えるでしょう?」


視てしまった。

病気とかないかを確認するために。

だからこそ、馬にだけポーション与えたのだけど。


「なぜそれを!」

「まあ、いろいろあります。旦那さんにも秘密にするように言われているんでしょ。先ほど紹介した場所はね、水魔法の使い手が老人しかいないのよ。あなたはそこで手伝ってあげてほしいな」

「・・・わかりました。ありがとうございます」


奥さんに頭を下げられた。

でもそんなことされてもうれしくない。

なぜかというと、あの場所も過酷ではあるから。

老人しかいない。

滅びゆくだろう集落。

どうなるかわからないから。


私はそろそろ眠い。

寝て起きて、明日は朝から頑張って出発だ。


片付けも終わり、話も終わったようだし。

私は馬車に戻る。


「みんなにかかわることはできないのだぞ」

「私はかかわりたい人にだけ手を貸すの、その時だけね」

「そうか。それでもいい」

「運営さん、ありがとう」


彼はうなずくだけだったけどわかっているようだ。


「おやすみなさい」

「おやすみ」


夜は、盗賊のようなものが来たらしいけど、メイちゃんとシツジローくんが片付けた。

翌日に守衛さん方がいなくなったという騒ぎは、今の私は知らない。
















およみいただきありがとうございます。いつもより少し長めです。まだ続きます。

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