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ワールド・ガイア  作者: 水野青色
19/281

19~馬車のクッションのほうがいい~

主人公起きてます。宿屋に着きました。

王都の宿探し。


王都って言っても、まだ入ったばかりの場所だし、めぼしいものはなさそうだわ。

だけど、宿屋だけはずらりと並んでいる。

門のとこってどこもこんなのかな。


「運営さん、神様でしょ。いい宿知らないの?」

「知るわけないだろう。いい宿とはどんなものだ」


えー・・・

いい宿って言いうと、おいしい料理とか部屋がきれいとかサービスがいいとかいい温とか?

いい宿ってそういえばどんなのだろう。

前世の私にとってのいい宿の条件は、ネット環境があって、スタッフが不干渉ってことだったかな。

料理とか、温泉とか、どうでもよかったような気がする。

ここじゃネット環境なんてないしなぁ。


「誰かに聞いておけばよかったわね」

「戻って守衛長にでも聞くか?」

「忙しいだろうからいやよ。馬車をきちんと管理してくれるようなとこがいいわ」


ウーマが嫌がるとこはだめよね。

普通の馬みたいにぽっくりぽっくり歩いているウーマの気分に任せてみようかなぁ。


<それではずっと歩き続けて街を抜けるのではないか?>


ありえそう。

ここだとはしれないものね。


「シツジローくん、どこかテキトーなとこ行ってくれない?」

「かしこまりました。ランドルさんから聞いていた宿に向かいます」


いつのまに? 

でもおすすめの宿があるならいいわ。

でもランドルさんて誰だったかしらね…


<手前の町まで一緒だった冒険者だ。もう忘れたのか>


そういえばいた気がする。

そうだ。

Bランクだ。

宿が決まったらおいしいもの紹介するって言ってたわ。

自分が進める宿じゃないと見失うわよね。


少し行くと宿に着いた。

見た目は西部劇に出てくる酒場っぽい。

入ってすぐの階は酒場で、上の階が宿屋の受付兼食堂。

その上からが宿泊施設らしい。

下の騒がしさが上まで聞こえてこないことを祈りたいわ。


階段を上って、宿泊受付へ。

恰幅のよさげなおばさんが受付に立っていた。


「ようこそ。何日泊まるんだい?」


気さくなおばさんだ。


「一番広い部屋で、とりあえずこれで泊まれるだけお願いします」


金貨を出す。

一泊2食(朝と夕)付きで銅貨20枚。一部屋単位で借りるらしい。

一番広い部屋は、一泊二食(朝と夕)付きで銅貨50枚か。

金貨なら、200日くらいなのかな。

一か月いらないんだけどなぁ。


「途中での解約はできないよ?」

「べつにいいです。超過してたらいつでも言ってください」


いつまでもここにいるわけじゃないしね。

門番街なんて一週間いるかどうかだわ。

ジューノさんの店での用事すんだらそのまま旅立ちたいくらいよ。


「それでは案内しますよ」


おばさんが誰かを呼びに行く。

若い獣人の女の子が出てきた。

ここの小間使いをしているそうだ。


二つ分の階を上がっていく。

一番広い部屋は最上階らしい。

部屋に入ると、テーブルといすが置いてあり、ちょっとしたクローゼットもある部屋と、その向こうに扉はないけど、壁で仕切られたベッドルームがあった。


「お客さん、私とそんなに変わらないのに、冒険者さんなんだ?」

「そうね。冒険者ではなく、ここでは旅人ね。世界を回っているの」

「いいわね。私もいつかお金をためて違う街に行くのよ」

「そうなの?ここは王都でしょ。中にいたほうがいいんじゃないの?」

「中央に行くにもお金がかかるんだよ」


そうなんだ?

どういう場所なんだ、ここ・・・

しかし、この従業員もフランクだなぁ。


「これ、チップ。私たちにはあまり干渉しないでくれるとありがたいわ。後、おいしいものを売っている店を教えてくれるかしら。台所もつかいたいのだけど」


銀貨一枚を握らせる。多いか少ないかなんて知らないわ。

この宿のこの部屋の二泊分じゃ少ないのかもね。


「こ・・・こんなにいいの!ありがとう!台所は廊下の先に小さいのがあるから自由に使えるよ。長期滞在の方のためにあるから。お風呂とかないけど、お湯は言ってくれれば出すから。私、水魔法持ちなの!」


ん?

だから?

水魔法くらい私でなくても、シツジローくんもメイちゃんも使えるわ。


「その辺りは平気。私も水魔法使えるから」

「お客さんも使えるの!この国ではさ、貴重なのよね、水魔法使い。だから私も早くお金貯めて中央に行きたいの!」


どういうことかな?

水魔法使いが貴重だから中央行きたいって…


<雨季には大雨が降り、乾季には水がなくなるこの星では、水魔法が使える魔法使いは貴重なんだ。どんなものより優遇されたりもする」


つまり、災害の時に必要なのね。

水魔法使いって、少ないの?


<市井にはあまりおらぬのだろう。水魔法が使えるということで、貴族などに自分を売り込みに行くものが多いのだ>


そうか。

確かに貴重な魔法が使えるのなら、少しでも売り込みたいよね。

なんでこの子はここで働いているのかしら。


「あなたはここの娘さんじゃないわよね?」

「ああ、うん。私もともと孤児でさ。孤児院で暮らしてたんだけど、そこからこの店の主人に買われたの。水魔法が使えるからって」

「え?孤児って、奴隷じゃないでしょ?買えるの?」


おかしいでしょ。

奴隷商売しているの?孤児院が?


「下の子たちを養うために、ある程度大きくなった孤児は、体を売る場所に売られるか、どこかの下働きに売られるかなんだよ?そのお金で、私も育ってきたんだし」

「つまり売られた分を稼いで、そのあとは自分の夢のために稼いでるっていうことなのね?」

「そうよ。私は水魔法が使えるから、普通より高く買い取られたの。ここの宿はとある貴族所有のものでもあるから、お金あるし。でもこのチップで、やっと私の分のお金はたまるわ。そしたら今度は自分の分をためるの」


体を売らないだけましなのよ。そして、お金を貯めたら出ていけるのよ。


うれしそうなこの子を見ると、私の心が痛む。

まさか、孤児院が奴隷商をやっているなんて。ゲームの世界にはなかった設定だ。これが現実か。


「中央であなたは何をしたいの?」

「もちろん条件のいいとこに自分を売り込むのよ」

「そっか」


ここの人たちはたくましいわ。


「あ、お客さん、おいしいものが欲しいって言ってたわね。ジューノ雑貨店行くといいよ。いろんな国のものがあるから」

「そこは明日ジューノさんに会いに行く予定だから、行くわ。そのほかに食材が欲しいのよ」

「えっ!店主さんのしりあいなの!すごいのね。・・・ほかなら、朝市があるわよ。門の近くに広場があって、朝はそこに野菜売りが来ていたりするわ」


安く売っているそうだ。

彼女自身も朝のお使いで行くという。

朝市か。

起きられたらのぞきたいけど、無理そうだから、メイちゃんとシツジローくんにお使いしてきてもらいましょう。


「そうだ。もうすぐ夕飯だけど、どうする?ここに持ってきてもいいけど」

「そう。それならお願い。持ってくるだけでいいわ。後はこちらでやるから」

「わかったわ。すぐもってくるわ」


扉が閉められ、ほっと息をつく。


「シツジローくん、シリウスやしーちゃん、ベヒーはどうしているの?」

「家のほうに帰しました。ウーマは、近くに馬車馬を預かってくれる放牧場があるそうで、そちらに預けてきてます」

「そこじゃ狭くてウーマは不満では?」

「そこに預けたとたんに走り回っていましたから、大丈夫かとは思いますが、朝一番に見てきますので」

「そうね、お願い。・・・きたようね」


足音がする。

ここは結構聞こえるみたい。

防音魔法かけておくかな。

メイちゃんが夕食を受け取って、扉を閉める。

テーブルを出すとそこに並べ始めた。


「いただきます」


ぱくん。

・・・まずい。

パンは固いし、スープみたいなのはしょっぱいし、肉もあまりよくない。

失礼だが、ご飯がおいしいとこがよかったわ。

サラダだけはまともだけど、サラダドレッシングがないんだ…


「お嬢さま、失礼します」


メイちゃんがさっと皿を下げ、料理をもって、廊下に出ていく。

メイちゃんでもまずいのがわかったのだろう。

しばらくして、先ほどと変わらぬ料理を持って帰ってきた。


「味を調えてみました」


出されたものは先ほどよりもずいぶんましで食べられるものになってた。

この宿の料理番は料理が下手なんだろうな。

それでもこみあっているって、ここの国の食レベルがわかるようだわ。

食べ終わると、メイちゃんが片付けに持っていく。

私は、お風呂入りたいわ。


「目隠ししないとね」


部屋の隅を闇魔法で遮る。全員分だ。

別にここにいる人たちになら裸見られてもいいけど、そこはやはり女性としての慎みというものよ。

大きめの水球を二つ出す。

水球に手を入れ、火炎魔法。

いい温度になったところで抜く。

ほんと手加減できるようになったわ。

調整が難しいけど。

水球の下にタオルを敷いて、体を洗う。

作っておいてよかった。石鹸類。

片方の水球に入って、石鹸を落として、出る。

うん。

さっぱりした。

もう一つのほうに入る。

立ったままなのが嫌だけど、いい湯加減だ。

温まったところでタオルの上に出て、水球を消す。

風魔法で髪の毛を乾かして、服を着替えて、入浴おわりっ!


「今日はやることないし、寝よう」


ベッドに横になる。

かたい!

なにこれ?ベッドってこんなに硬いものだっけ?

マットもシーツもぎっしぎしじゃないのよ。

馬車に乗っているクッションのほうが絶対に寝心地がいいわ。


「メイちゃーん」

「こんなこともあろうかと、持ってきております」


メイちゃんがベッドにクッションを敷く。

ああああ。

これですよ。

この柔らかさです。

かたいベッドでなんて寝られないよ。


大きく息をつく。


「それじゃ、おやすみなさい」

「もう寝るのか、君は」

「いいでしょ。もう夜だし」

「まぁいい。お休み」


明日は、朝市に起きられるかなぁ。












ちょっと長めです。まだまだ続きます。

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