14~王都までの道 その2~
主人公は朝起きられない。
起きたら真夜中だった。
もちろん、その日の。と言いたいところだけど、どうやら、馬車は出発しているので、翌日のだと思う。
どうしても起きられないのだけど、ジューノさんたちは気にしていなさそうだからいいか。
野営地だ。
もう、平地だった。
「お嬢さま、こちらを」
「ありがと」
顔を洗って、一度外に出る。
この前自己紹介してくれた冒険者の・・・なんだっけ?さんが、こちらに気が付いたようだ。
「お嬢さん、おきたんか」
「おきられなくてすみません。遅くまで見張りですか」
「気にすんな。・・・見張りはしないと落ち着かないからな。長い旅に油断でもしていたら、あっという間に魔獣と盗賊の餌食だ」
それもそうか。
平和ボケしていた日本で考えられない場所だなぁ。
「お嬢さんたちは平気そうだな。従魔は化け物ぞろいだし、あの二人も相当強いだろ。・・・お嬢さんも、見た目ほど弱いわけじゃないだろう」
「んー・・・まぁ・・・、強いかどうかはわかりませんが・・・」
「プレイヤー国は、弱いとやっていけないんだろう?」
「そんなことありませんよ。新人さんは確かに二けたレベルくらいかもしれませんが、シツジローくんやメイちゃんだって、そんなに高くないんですよ?」
「いやいやいや・・・、お嬢さんは冒険者の常識も持ったほうがいいだろ」
冒険者の常識?
なにそれ。
私は常識人だよ。
「Bランクの俺だって、今やっと、50を超えたとこだぞ」
は?
国境の森で、魔獣にやられるレベルなの?
「御冗談を」
「ほんとだって。ほら」
身分証を見せてくる。
ランドル
Lv.52
ランク B
ほんとだった。
それじゃ、Aランクとかは高くても100くらい?
「今回は大したケガしなかったけど、やはり大勢でやってこられるときついもんだぜ」
盗賊たちを見る。
反省しているかどうかは知らないけど、昼間の疾走のせいで、夜はぐったりしている。
静かでいいんだけどね。
「だからさ、礼と言っては何だけど、王都に着いたらうまい飯屋に連れていくよ。あんたのとこのあのメイドさんよりはいまいちかもしれないけどな」
「ありがとう、その時はお願いね」
「冒険者ギルドに伝言しててくれれば、いつでも案内するからさ」
冒険者ギルド!
そういえばゲームの中にはあったけど、プレイヤーは、こちらでは冒険者としてはどうなんだろう。今までの冒険者カードも使えるのかな?
運営さんに呼び掛けたけど、反応ないなぁ。
わからないや。
私も冒険者としてやっていきたいけど、この世界でのプレイヤーの扱いが化け物じゃなぁ。
難しいのかもしれない。
しばらく話して、また馬車に入る。
考えてみれば、王都には、おいしい調味料を求めていくのだし、冒険者家業はあとでいいのかな。
そのうち考えないとなぁ。
クッションに寝転がると、また眠気が襲ってくる。
あとどれほどでつくのかな。
明日の朝起きるんだ。
朝だ…
うん、朝っていうか、お昼頃だよね。
起きたよ。
真夜中に起きちゃったんだから、この時間まで寝てても仕方ないよね。
そしてここは、野営地。
昨夜とは違う場所だ。
ウーマを休ませるという名目で、シツジローくんが停まったらしい。
メイちゃんは、かいがいしく昼食準備をしながらも、私の世話をしている。
優秀だわ。
顔を洗って、外に出る。
ああ・・・太陽が目に染みる。
「おはようございます」
「おはようございます、アイリーン殿。昨夜も夜遅くに起きてこられたとか。体調は大丈夫ですかな」
「大丈夫です。よく眠りましたから」
まだ、ジューノさんたちは私が体調不良で寝ていると思っているようだ。
単に特性で寝ているだけなんだけど。
「もう王都も目の前ですな」
「そうなのですか?まだ先かと思いました」
思った以上にウーマは早いらしい。
寝ているとわからない。
「素晴らしい馬ですな」
「ありがとうございます。ウーマは走るのが大好きですから」
お茶を飲みながら世間話。
起きたばかりでご飯なんて食べられないよ…
「ところでアイリーン殿、実はお願いがございましてね」
「あんですか」
お菓子を食べながら聞く。
「この近くに、小さな町があるのですが、そこによっていただけませんかな。私はそこの町の出身でして、行きも帰りも実家に顔を出すのが通例ですので」
「わかりました。そこでおわかれでもいいですよ」
「・・・すみません。わがままばかりで」
「お気になさらずに。実家は大事ですよ」
私に家族なんていないような斧だったけどさ。
一般人の考えは理解しないといけないよね。
「その街へはどれほどでつきますか」
「アイリーン殿の馬車なら、夕方になる前にはついてしまうかと思います」
つまりそんな遠くないと。
それならさっさと行ってもいいような気がするなぁ。
ご飯食べたら出発だな。
シツジローくんをよんで、行き先を教える。
そうでなければ、そのまま王都に行っちゃうもんね。
詳しい場所はジューノさんが説明している。
私はお茶とお菓子で、まったりしたら、また眠くなってきた。
大あくびだ。
ふらりと馬車に戻って、クッションで寝る。
どうせ、そのまま出て、ジューノさんたちを置いていく街の前まで止まらないだろうし、起きるかわからないけど、お別れは言わなくてもいいよね。
王都に行ったらお店行くんだし。
お昼寝お昼寝。
ほんと眠いなぁ。
おやすみなさい。
短いです




