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第25話 混乱する文研、俺はどうする!?

「おはようさん」


 後ろの扉が開いて、部長が姿をあらわした。


 部長は、「あら」と俺たちを眺めて、


「みんなでぎょうさん集まって、何してはるん?」


 眠たそうなまなこでつぶやいた。


「山科さん。ちょっと、これを見てっ!」


「あらあら。そないにきつく引っ張れへんで」


 先生に腕を引っ張られて、部長がパソコンの前まで来た。


「部長。パソコンがこんなことになってしまいまして」


「こないなことに? あらまあ。画面が真っ赤っ赤ね」


 部長が前屈みになってディスプレイを見やる。


 指でタッチパッドとキーボードを操作して、パソコンの状態を確認する。


 部長がパソコンを操作している姿は、ほとんど見たことがない。


 タイピングは意外と速い。いや、かなり速いぞ。部長って、パソコンに慣れてるんだな。


「部長なら、わかりますか」


「いっこもわからへんね。なんで、こないなことになってしもたん?」


「わからないです。このパソコンは、先生が使ってたんですけど」


「あいりちゃんが使こうてたんか」


 先生は後ろで縮こまっていた。


「あいりちゃん。このパソコンで何しとったん?」


「せ、先生は、その、パソコンで、ちょっと作業をしてただけなんだけど」


「ちょい作業しとっただけで、こないな画面が出てくるんか?」


「ご、ごめんなさいっ」


 先生がさらに縮こまってしまった。


 部長はいつも呑気に寝ているのに、今日はなんだか容赦がない。


「先生を責めても無駄ですって。残り時間がどんどん減っていますから、対策を早くとりましょう」


「そやな。時間がなくなったら、何が起きるんか、わからへんけど」


「でも、どんな対策を取ればいいんですかっ!?」


 柚木さんの言葉に、部長が腕組みして考える。


「こないな問題、うちらでは対処でけへんわ。こらもう、教頭せんせにしゃべるしかないわ」


「教頭先生に言うの!?」


 先生が急に起き上がって、部長の腕をつかんだ。


「それはだめよっ! 教頭先生に言ったら、絶対に怒られるわっ。 文研のパソコンも取り上げられちゃうかも!」


「そないなこと言わはったって、他に方法がないわ。教頭せんせにありのまんまを報告して、対策を考えてもらうしかないわ」


 部長の言っていることは正しい。


 教頭先生から、めちゃくちゃ怒られるだろうけど、このパソコンを放置するよりはましだ。


 しかし、先生の言うことも最もだ。


 こんなことがバレたら、文研のパソコンは間違いなく取り上げられてしまう。


「先輩っ」


 柚木さんが俺の腕をつかむ。


 とても難しい局面だ。四台のパソコンをすべて失う覚悟で報告するか。


 それとも、一台の使用不能になってしまったパソコンを見捨てるか。


 パソコンを見捨てた方が対処は簡単だし、被害も一台だけで済む。


 しかし、問題を隠していることがばれたら、文研は解散させられてしまうかもしれない。


 副部長として、俺はどう判断すればいい。


「わかりました。パソコンをこんな状態にしてしまったのは先生です。ですから、先生が責任を持って教頭先生へ報告します」


 先生が背を正して言った。真っ青な顔で。


 先生は、正道に則った行動をすべきだと判断したんですね。


「でも、ごめんなさい。先生ひとりだと、ちゃんと説明できないかもしれないから、山科さんもついてきて」


「ええよ」


 部長は、いつもの表情の乏しい顔で返事した。俺を見やって、


「ほな、ちょい職員室へ行ってくるさかい、むなくん、みんなをお願いな」


「わかりました」


 先生といっしょに部室を出ていった。


 部室に静寂が訪れる。


 部員たちは所在なげに立ち尽くしていたが、ぽつぽつと持ち場へ戻っていった。


 画面を染める禍々しい赤色は、無知な俺たちに容赦なく警告を発している。


 ダイアログボックスに書かれている説明文は、丁寧な文章で綴られている。


 しかし、要求そのものは身勝手で、ディスプレイの向こうから、俺たちをあざ笑っているように感じられてならない。


 他人のパソコンを勝手に操作して、迷惑をかけた上に、元に戻す代わりに金銭を要求しているんだ。


 こんなにも一方的で酷いやり方が、他にあるだろうか。


「先輩?」


 これはきっとコンピュータウィルスの仕業だ。


 どうやってこのパソコンへ感染させたのか。俺には検討もつかない。


 ウィルスを感染させた相手は、俺たちが脅しに屈するのを虎視眈々と伺っているんだ。


 こんな見え透いた脅しに屈してもいいのか?


「先輩っ!」


 右手の袖を横から引っ張られた。振り返ると柚木さんが目の前に立っていた。


「先輩、何してるんですか。先生たちが戻ってくるまで、わたしたちも待ちましょう」


 俺はノートパソコンへ視線を戻した。


 赤いディスプレイで変化しているのは、タイムリミットの時刻だけだった。


 ウィルスを仕掛けた主は、微動だにしていない。


「先輩!?」


 俺は部室を飛び出した。


「先輩、どこに行くんですかっ。待ってください!」


 柚木さんに右の手首をつかまれた。


「きみは部室で待機してるんだ」


「嫌です! 先輩はどこに行くんですかっ」


「パソコン部に掛け合って、あのパソコンに仕掛けられたウィルスの対処方法を教えてもらうんだっ。パソコン部の人たちだったら、俺たちよりも詳しいし、いい方法を知ってるかもしれないから」


 パソコン部の人たちが、どれほどパソコンに詳しいのか。


 そんなものは知らないし、そもそもパソコン部に知り合いなんていない。


 部室へ押しかけたところで、話すら聞いてもらえないかもしれない。


 だからと言って、このまま何もしないで指をくわえているのは耐え切れないんだっ。


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