↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『王子に裏切られて死刑にされた悪役令嬢、異世界転生してブラック企業の会計になる。』  作者: 黎明の星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/6

第1話『処刑台への階段』

第1話『処刑台への階段』


「進め」


 背後の兵士に促され、アルティナ・ユナ・イスタークは処刑台の階段に足をかけた。

 一段上るたびに、足元が遠くなるような気がした。

 胸の奥では心臓が激しく脈打ち、喉はからからに乾いている。

 死ぬのが怖くないわけではない。

 まだ生きたいと思うことも、悔しくて涙がこみ上げることもあった。

 それでも、彼女は俯かなかった。

 他国と通じ、バリシア王国の軍事情報を漏らした国家反逆の罪。

 そう告げられたときから、アルティナは一度も罪を認めていない。

 知らないことを知っているとは言えず、していないことをしたとも言えなかった。

 そして何より、その罪を訴えたのは、かつて結婚を約束したダルニア王子だった。

 どうして、こんなことになったのか。

 階段に置いた足を見つめた瞬間、アルティナの脳裏に、あの日の光景が浮かんだ。


◇


 ダルニア王子が軍を率いて出陣すると聞いたのは、王宮でのことだった。


「殿下が、今回の戦いをご自分で指揮なさるのです」


 そう告げたのは、王子に仕える配下の一人だった。

 周囲に人がいないことを確かめてから、男は声を落とした。


「敵は少数で勝利は容易だと仰せですが、まだ確かめきれていない報告もございます」

「それを殿下にはお伝えしましたの?」


 男は答えず、視線を伏せた。

 その沈黙だけで、事情は十分に伝わった。

 ダルニアは自分に逆らう者を遠ざけてきたため、今では異論を口にする配下がほとんどいない。


「承知しました。私からお話ししますわ」

「ですが、私の名は……」

「お名前は出しませんわ。あなたが罰せられては、誰も本当のことを話せなくなりますもの」


 男が深く頭を下げるのを見届け、アルティナは王子のもとへ向かった。

 ダルニアは彼女を迎えたとき、機嫌がよさそうだった。


「聞いたか、アルティナ。今度の戦で私が軍を率いることになった」

「ええ、その件でお話がございます」


 王子の表情がたちまち険しくなった。


「……また余計な戯言を聞かせるつもりか。お前の忠告など求めておらん」

「ですが殿下、敵の戦力は十分に確認なさいましたの?」


 ダルニアは不快そうに眉を寄せた。


「聞こえなかったのか? お前の忠告は必要ないと言ったはずだ」

「必要かどうかは、話をお聞きになってからご判断くださいませ」

「私に指図するつもりか?」

「いいえ。ただ、確かめられていない情報があるなら、慎重に判断すべきではありませんか」

「敵は少数だ。私が勝てると判断した。それで十分だ」


 ダルニアは腕を組み、アルティナを睨んだ。


「そもそも、軍議にも出ていないお前が、誰からそんな話を聞いた?」

「お名前は申し上げられません」

「私の配下をかばうつもりか」

「誰から聞いたかではなく、作戦についてお伺いしておりますわ」

「お前はいつもそうだ。私の判断にいちいち口を挟む」

「間違っていると決めつけているのではありません。根拠を確かめたいだけですわ」

「もういい。お前に戦の何が分かる!」


 王子は椅子から立ち上がり、話は終わりだと言わんばかりに背を向けた。

 アルティナは唇を結んだが、もう一度だけ声をかけた。


「殿下。勝利を望むなら、都合の悪い報告にも耳を傾けてくださいませ」


 返事はなかった。

 ただ、部屋を出る直前に聞こえた「出陣の準備を進めろ」という命令だけが、妙にはっきりと耳に残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。