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フェンルートの城から帰ってきてしばらく経ったころ、アステルはサフィアにあの庭園のガゼボに呼び出された。
アステルが向かうと人払いがされており、サフィアと2人きりだった。
サフィアはガゼボのベンチには座らず、近くの庭園に立って遠くを見つめていた。
初めて出会ったあの日のようだ。
「サフィア」
アステルが声をかけるとサフィアは振り向いて微笑んだ。
そして2人は立ったまま向き合う。
「……」
サフィアが笑顔を浮かべたままアステルを見つめる。
そしてゆっくりと口を開いた。
「お兄様が病気のため療養することになったの」
「……療養?」
アステルは驚いて青ざめた。
昔から王位継承などで王族が揉めた時にひっそりと暗殺されたりする時にも使われる言葉だ。
王太子様を暗殺した?
それとも本当に療養?
アステルの背中に冷たいものが走る。
だって前に〝お兄様は病弱という設定なので〟とサフィアから聞いたことがある。
だから王太子様は元気なはずだ。
それが療養……
「王都より南にある王族用の療養地で暮らしてもらうことになったの」
サフィアが目を細めてニッコリと笑う。
「これで正式に私が王位継承者。……アステルが国王よ」
サフィアがそう言いながらアステルに優雅なカテーシーをした。
そしてゆっくりと体を起こし背筋をまっすぐさせて凛と立った。
「アステルが私と結婚していきなり国王になるのは荷が重すぎると思っていたから第二王女で留まっていたけど、アステルが王になるのを望んでくれて良かった。これでますます他国にも強く出れる」
サフィアが優雅に笑う。
「もっと早くにこうすれば良かった」
そして目を伏せ視線を斜め下に向けながらますます笑みを深めた。
あれ? 話しが違う……
レーリー!!
アステルはフワフワ頭の赤い目の青年を思い出していた。
動揺しているアステルに向かってサフィアは続けて喋りかける。
「アステルが望んだとおり、貴方がこの国の上に立てるよ」
サフィアがしっかりアステルと目線を合わせた。
〝アステルの望みなら何だって叶えるよ〟とでもいうような堂々とした笑みをたたえている。
……
そうだった。
この闇の深さがサフィアだった。
俺に執着する余りに周りを顧みない……
アステルは王太子が暗殺されたかもしれない恐怖と重すぎる愛に冷や汗をかきながらも、そんなサフィアからの愛情がたまらなく愛しいと思っている自分に気付いた。
もう俺はおかしいのかもしれない。
こんなに狂おしく愛されている状況にゾクゾクしている。
心地がいいと感じている。
サフィアが一緒なら、2人でこの国の上に立とう。
俺がサフィアを支える。
サフィアを守る。
アステルはサフィアに歩み寄り、その細い四肢を優しく包み込むように抱きしめる。
「サフィア、愛してる」
アステルがサフィアの耳元でそっと囁く。
サフィアもゆるゆるとアステルの背中に腕を回す。
「私も……愛してる」
サフィアがアステルの胸に自身の顔を埋めた。
しばらく熱く抱き合ったあと、そっと体を少し離し、お互いを見つめ合った。
そしてゆっくり顔を近付けて唇を重ねた。
深く深く……どこかに堕ちていくような感覚がした。
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それからアステルとサフィアの結婚式がつつがなく行われた。
そしてその5年後に戴冠式が行われる。
アステル21歳、サフィア27歳の時だった。
年下の王配という立場のアステル王だったが、妻であるサフィア女王を愛する姿や国民を大事にする姿勢が好まれ、国民たちから支持されていた。
2人の鬼神の力と巷で呼ばれていた力はいつまでもとても強力で、周辺諸国から戦争をしかけられることなく王国は平和な時を過ごした。
サフィア女王とアステル王が率いる第一騎士団も強靭で有名になり、国の平和に貢献していた。
アステル王がその騎士団に囲まれて騒いでいる場面をよく目撃されたりもしていた。
ルカは無事に首相になり、サフィア女王とアステル王と共に国を支えた。
そして王国はますます繁栄した。
2人の間には3人の子供ができ、みんな立派な王族として成長した。
残念ながら鬼神の力は子供たちに宿らなかったが、フィジカルに全振りした夫妻の遺伝は着実に子供たちにも受け継がれていた。
首相のルカが悲鳴をあげていたらしい。
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数十年たち、アステル王たちは息子に王の座を譲り、穏やかに隠居生活をしていた。
そんな2人は大きくて美しいあの湖畔に立っていた。
優しい風が周りの木々を揺らし、サワサワと音を鳴らしている。
湖面もまるで水が踊っているような揺らぎを描き出しており、キラキラと太陽に反射して輝く。
アステルとサフィアは横並びに湖に向かって立ち、お互いの腰に手を回し抱き合っていた。
仲睦まじく寄り添う様子は若いころと何も変わっていない。
そしてお互い顔を見合わせ見つめあう。
アステルがサフィアの瞼にキスを落とした。
そしてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「深い海を泳ぎ、あなたを必ず見つけます。
星空を切り裂いてあなたを必ず守ります。
いつまでも一緒にいよう」
子守唄のような優しい愛の言葉が湖畔を吹き抜ける風にのって舞っていった。
最後まで読んで下さり、誠にありがとうございました。
この物語を補完する別枠扱いの物語『【光】のような貴方と永遠に』も無事に完結まて投稿致しました。
実はその作品を読むことによって
こちら『【闇】が深い王女の愛が重すぎてゾクゾクするんですけど!』に対する見方が変わるように物語を執筆しました。
『【闇】が深い王女の愛が重すぎてゾクゾクするんですけど!』を読む
↓↓
『【光】のような貴方と永遠に』を読む
↓↓
もう一度『【闇】が〜』を読む
と、1回目と2回目では違う感想をいだくようになると思います。
もし、お時間をいただけるようなら是非【光】を読んでからもう一度こちらの【闇】を読んでみてください。




