第96話:『奇跡』
『【妖魔の目配せ】と【朽ち褪せない騎士道】か。厄介な組み合わせのスキルだな』
「両方のスキルがCTに入るであります!!エリカ殿!準備はできているでありますか?!」
カロルの猛攻を前線でたった一人で耐え切り、文字通りサンドバックになっていたハロイラは目撃した。
絵理華の正面に見たこともない極彩色の魔方陣が浮かび上がっているところを。
その魔方陣を充填させた魔方陣を構えながら、絵理華が憤怒の表情を浮かべているのを。
「……何でありますか?あの魔法??」
『ワタシも初めて見た……。何なのだあの魔法は?』
敵であるはずのカロルと何故が意気投合してしまった。不思議な面持ちで後方に目線を向ける。
絵理華の周囲には全ての属性の精霊たちが笑うように飛び回り、魔方陣の中央では赤・青・茶・緑・黄・黒が混ざり合わずに蠢いている。
(魔法そのものの正体は見当が付かないが、喰らってはいけない魔法だというのは分かるし、追跡するような魔法ではないのも察しが付く)
『ミサイル』系のような相手に向けて発射する魔法や『ドラゴンズマスティケーション』のような高度な魔法であれば相手を追跡することはあるが、遠方で絵理華が構えている魔法は『モノクローム=アンドゥレーション』のような光線タイプの魔法。真っすぐに射出して終わりならば、それを躱してしまえばいいだけのことである。
(ここは魔法が来た瞬間に『ワープ』を使って移動を――)
魔杖アルーフ=ザ=レストリクションを構えようとしてカロルは気づく。
杖を持った右手の関節が砕かれ、右腕ごと杖が草原の上に投げ出されていることを。
『何故だ』
一瞬の隙を突いて右腕を切り外したのはハロイラではない。
『何故動けるっ?!!』
いつの間にか背後へと回り込んでいたデュラハンだった。
術者であるメイアが死んだにもかかわらず、まるで亡者のように動いて攻撃を加えていた。骸になったことで痛覚がなくなっているカロルの認識が遅れて追い着く。
『『マニピュレイト=スケルトン』は術者が死んだら解除されるはず?!なのに何故動けるのだ?!!』
「奇跡であります」
同じく幻覚でも見るかのように瞳を見開きながらハロイラは呟く。
「カロル殿を斃したいという強い思いが重なって、奇跡が起きたのであります!!」
『認めぬぞ』
カロルは『ギルド』や『スキル』の概念が生まれるよりも遥か昔の時代に生まれ、遥か昔の時代に生命を終える予定だったモノだ。
スキルなど所持していないただの一般人で、その弱さをアルーフ=ザ=レストリクションによって補ってきた。
【マジックマスター】に匹敵する魔法さえ使えればスキルなど必要なく、魔法力と不死身の身体、そして蓄えてきた魔法の知識を駆使すれば勝てる、と。
『認めぬ』
『スキル』という概念が生まれた時カロルは憤怒した。魔法の知識と伝説を頼りに宝珠を搔き集め、一つ一つ使える魔法を増やしていった。その度に魔法に関する知識をアップデートしていった。
なのに、成人さえ迎えていれば(運が絡むと言えども)誰でも無償で簡単にスキルを手に入れることができ、しかもどれだけ低ランクでも初歩的な魔法が使えてしまうというではないか。
『認めぬうっ!!』
自分が重ねてきた苦労は何だったのか。
自分が味わった苦悩は何だったのか。
それを嘲笑うかのように『魔法使い』を名乗るモノが次々と出現し、若いモノたちが先人の苦労を知ることもなく魔法を身に着けて上達していく。
それこそ『奇跡』のような光景だった。
『こんな不条理なことがあってたまるか!!2,000年以上の苦悩と努力が、どうして【マジックマスター】などという奇跡の産物如きに破られねばならぬのだっ?!!』
「【マジックマスター】の力だけじゃないよ?」
腕が切り離されているため魔法は使えない。
逃げる手段も回避する方法もないのだろう。
話している間も亡者の執念の如く攻撃を加え続けるデュラハンに脚の関節を砕かれて片膝を突く。
絵理華たちは直接見ていないが、まるで『サンダー』を受けて最期を迎える直前のメイアのようだった。
「ハロイラの【妖魔の目配せ】と【朽ち褪せない騎士道】による時間稼ぎと、メイアとその使い魔による攻撃があったから、『ニューワールド=イントロダクション』唱えられる時間の余裕があったんだ!!私たちの友情の勝利だよ!!」
『友情……、奇跡…………』
表情筋が消え去り無機質な表情で固定されているはずの骸の顔が歪む。
『そのような不確定で利己的な不条理、絶対認めぬぞおおおぉぉぉぉおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおぉぉおおおおぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおぉぉっっっっっっっっ!!!!!!!!!』
「神が創造せしあらゆるモノを消し去り、新たな世界を創造せよ!ニューワールド=イントロダクション!」
文句を唱え終えると同時に極彩色の光線が空気を切り裂きながら射出。上半身のみを貫いたはずだが光線に巻き込まれた身体は当たった部分を中心に波紋が広がるかのように空洞を作り、やがて空気へと溶けて消えてゆく。
「ふ、FFがなかったら私はどうなっていたでありますか……?」
「巻き込まれて消えていただろうね。跡形もなく」
周囲に何もない平原だったのは幸いだった。
小高い丘を平行に縫うように飛んだ光線はアイスクリームの側面に箸を刺したかのようにトンネル状の穴を開けると、そのまま果てて消えたようだ。トンネルは貫通していないらしく、目を凝らしても先の見えない深淵が口を開ける。
そんなことよりももっと気にしなければいけないことがある。
「…………ダメだあ。回復魔法が一切効かないし、胸の鼓動も聞こえない。手の施しようがないよう」
ルナティの魔法によって黒焦げた少女の身体が緑色の光に包まれるが、それを拒むかのようにすぐに打ち消される。
「メイっち、もう助からないのかな?」
「『リヴァイヴァル』を使おう」
絵理華の言葉に全員が耳を疑う。
「何言ってるんですか絵理華さん?!!それでは私利私欲のためにアラキラさんを生き返らせたカロルさんと同じですよ?!!それでいいんですか?!」
「勇者殿から話は聞いているであります。テルル殿が『リヴァイヴァル』で生き返ったアラキラ殿とカロル殿を駆逐しに来たと。もしエリカ殿が『リヴァイヴァル』を使ったら、天界の神たちかそれに匹敵するモノたちと戦うことになるのでありますよ?!」
「そうです絵理華さん!あなたが生命の理を犯す必要は何処にもないんです!!それに、」
言い難そうに一度だけ口籠ると話を続ける。
「あなたが違反を起こしたら、わたしは絵理華さんと敵対しなくてはならなくなるんですよ?それだけは絶対に嫌です」
「……ゴメン、セレン。メイアが死ぬことの方が耐えられない。喩え修羅神仏を敵に回してでも、私はメイアを生き返らせるっ!!」
『その当たりで止めておけ』
「っ!!」
聞き慣れない声。
もしやカロルか?!
一気に緊張の糸が張られた一同が視線を向けると、そこには首のない騎士が屹立していた。左手には兜に包まれて表情の分からない頭を大切そうに抱えている。
『貴女がそのようなことをする必要など何処にもない。今すぐに中止せよ』
「……悔しくないの?自分の主が目の前で死んだんだよ?」
アンデッドに人間の価値観など吹き込んでも意味がないかと思ったが、言わずにはいられなかった。半ば八つ当たりのように続ける。
「あなただって主が生き返った方が嬉しいでしょ?!だったら私が『リヴァイヴァル』で生き返らせて――」
『だからメイアは死んでいないって言っているのよ。本当に間抜けね。貴女』
え?と思うのも束の間、籠手に包まれているはずの手指をパチンと鳴らすと、デュラハンの輪郭がぐにゃりと歪む。
そこに現れたのは――。
「全く。事前に『ディスティンギッシュ=シャム』くらい使えるようにしておきなさい、ってあれほど言っておいたのに、どうして使わなかったのかしら?」
綺麗な金色の髪の毛が作り出すドリルのような形状をした長いツインテール。
動きやすいようにスリットの入った、黒を基調としたゴシックロリータのようなドレス。
人間のものとは形が違う尖った耳に白い肌。
血を吸ったかのような赤い瞳。
「メイア…………?」
死んだと思っていたはずの少女が出現した。
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毎年クリスマスになると切望しているのですが、今年も銀髪貧乳ミニスカサンタロリが来ませんでした。
ベッドに全長160cmの抱き枕(ブレイブソード×ブレイズソウルのジャガーノート)を寝かせているんですが、「川」の字みたいな感じで藤井と抱き枕の間に突如湧いて欲しいんですよね。
それで、前世の記憶とかが理由で藤井のことを慕っていたり、実は幼馴染とかでラブコメに発展するんですよラブコメ!!
そういえばですが、クリスマスに「ポケモンSV」(スカーレット)やってたら、野生で色違いのデリバードに遭遇・ゲットしましたが、もしかしてデリバードは銀髪貧乳ミニスカサンタロリだった?!!
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




